有給休暇を30日完全に取れる国ドイツ

「ドイツ人は、なぜあんなに労働時間が短いのに、経済がきちんと機能しているのだろう?」これは、ドイツに派遣される日本の企業マンならば、一度は抱く感想である。

「ドイツ人は、なぜあんなに労働時間が短いのに、経済がきちんと機能しているのだろう?」ドイツに長年駐在していたある日本人ビジネスマンが、私に言った。これは、ドイツに派遣される日本の企業マンならば、一度は抱く感想である。

ドイツ企業のほとんどの社員は、毎年約30日間の有給休暇をほぼ100%消化する。1日10時間を超える労働は、法律で禁じられている。日曜日と祭日の労働は、原則として禁じられている。土曜日に働くサラリーマンは、めったにいない。

育児休暇を取る父親は、日本よりもはるかに多い。女性が育児休暇で職場を離れている間、企業はその社員が帰ってくるまで、ポストを開けておかなくてはならない。

市民がきちんと休むにもかかわらず、ドイツ経済は、絶好調である。失業率は低下し、企業は高い収益を上げ、ユーロ圏の牽引役として重要な役割を果たしている。

ミュンヘンなどバイエルン南部の失業率は、約2・5%。EU域内で最低だ。(筆者撮影)

短い労働時間にもかかわらず、ドイツ人一人あたりの国内総生産(GDP)、そして1時間あたりの労働生産性は、日本を上回っている。

一体、なぜこのようなことが可能なのだろうか。私はNHKで8年間記者として働いた後、1990年にドイツにやってきた。25年間にわたって、この国と欧州の経済、政治、文化について定点観測を行い、日本のメディアに毎日記事を送り、15冊の本を発表した。私は、欧州に4~5年しか滞在しない日本の新聞社やテレビ局の特派員とは全く違った視点で、この地域について分析を行っている。

日本での労働条件は、私が日本で働いていた頃に比べて大きく改善されたとは思えない。相変わらず、過労死や過労による鬱病、毎年2万人を超える自殺者についての報道が後を絶たない。それどころか政府は、年収が比較的高い市民については、労働時間に関する規制を緩めることすら検討している。

我々日本人は、「ワーク・ライフ・バランスを大幅に改善して、自分や家族のための自由時間を増やすことは不可能だ」とあきらめてはいないだろうか。私はドイツの例を見て、日本でもワーク・ライフ・バランスを抜本的に改善することは、不可能ではないと信じている。

市民の憩いの場・ミュンヘンのニュンフェンブルク宮殿(筆者撮影)

だが、そのためには日本の政治や社会を大きく変えることが必要だ。労働時間や休日に関する日独間の違いには、価値観や人生に対する考え方の違いも反映している。

我々の人生は短く、しかも1回きりしかない。1人でも多くの日本人が、自分のための時間を増やせることを願って、青春出版社から「ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか」という本を出した。ドイツへ来てから16冊目の本になる。

詳細はこのリンクをご覧ください。http://www.seishun.co.jp/book/16298/

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