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すっかり年を取ってすっかり変わってしまった鳥越さんを眺めながら考えていたこと

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「ペンの力って今、ダメじゃん。だから選挙で訴えた」鳥越俊太郎氏、惨敗の都知事選を振り返る【独占インタビュー】

鳥越氏のインタビューが面白かったので突っ込みどころを挙げてみる: 不倒城
 
とても悲しいインタビューだった。
 
鳥越さんに投票した人が悲しくなるような内容だし、マスコミに詳しいはずのジャーナリストがこのように受け答えして、実質、晒し者になっているのも悲しかった。
 
どう見ても「晩節を汚している」ようにしか見えない。
  
もともと鳥越さんには都知事たる器量が無かったのかもしれない。しかしそうは言っても、20世紀末には大活躍していた人物だ。もし、20世紀末の鳥越さんが同じような状況のもとで都知事選に立候補していたら、これほどみっともない自己弁護は繰り返さなかったに違いないし、インターネットメディアの台頭とその意味にも敏感だっただろう。

ジャーナリストやタレントとして大活躍していた20~30年前の鳥越さんが、タイムマシンかなにかで2016年の自分自身を見たら、非常に落胆するに違いない。
 
鳥越さんに限らず、メディア上でいつまでも活躍しながら年を取っていくのは大変だなぁ、と思う。
 
王貞治さんや長嶋茂雄さんのように、上手にメディアに登場しながら年を取っている人もいるし、瀬戸内寂聴さんのように、94歳になってもキャラクターがブレずに活躍している人すらいる。しかし、皆が皆、上手に年を取りつつメディアに出ているわけではない。

メディアからフェードアウトしていく人はマシな部類で、年を取るにつれて思考力や判断力や羞恥心が衰えて、過去の名声に泥を塗るような醜態を晒している人もいる。鳥越さんよりも若い年齢でも、そういうメディア人士はけして珍しくない。
 
人間は、老いれば心身が弱くなる。もちろん、心身が弱くなっても、いや弱くなっていくからこそ、エイジングに沿った心理/社会的な成長の余地があるとも言えるけれども、ハードウェアとしての脳の機能は、どうしたって弱くなる。

その最たるものが認知症だが、認知症ではない人でも、元来の弱点が露呈しやすくなったり、ストレスに弱くなったりといった変化は案外起こる。時局や世相の変化にも鈍感になりやすい。
 
だからこそ、年を取っても弱点があまり露出せず、晩節を汚さず活躍しているメディア人は本当に凄い。本人自身もさることながら、本人を支える人達も頑張っているのだろう。感服するほかないが、あれが平均的なエイジングの姿だと思ってはいけない。彼らは出来過ぎている。

あなたは、二十年後のネットメディアでも“安全運転”できますか?
 
私には、鳥越さんが残念なことになっていくプロセスが他人事とは思えない。
 
私はブログ愛好家だから、自分が二十年後もインターネットをやりたがるのは容易に想像できる。この文章をお読みになっている人達だって、その頃にはtwitterやFacebookは使っていないかもしれないが、なんらかのネットメディアを利用している可能性は高い。
 
二十年後も心身健康でいられる人は、きっと二十年後も元気にインターネットをやっているだろう。だが、健康の曲がり角を迎えて心身が衰弱した状態に陥っていたら? あるいは認知症と診断される寸前の状態だったとしたら? 思考力や判断力や羞恥心の衰えた言動を、ネットメディア上にばらまいてしまうのではないだろうか。
 
「私は鳥越さんと違って有名じゃないから関係ない」と反論する人もいるかもしれないが、そうとも限らない。ネット炎上で社会的信用を失った無名の人達のことを思い出してみて欲しい。彼らはまったく無名だったのに、ネットメディア上で“やらかして”“一発KO”していたではないか。
 
心身や判断力の衰えとネットメディアの組み合わせは、それ以外の危険もエスカレートさせる。個人情報丸出しの写真や動画を投稿してしまうリスク、フィッシング詐欺や悪質セミナーに引っかかってしまうリスク、家庭の外に出してはいけない話をうっかり喋ってしまうリスクetc……。

若い頃、そういったリスクを悠々と回避できていた人でも、加齢や疾病によって脳の機能が弱っている時にはそうとも限らなくなる。家族や親しい人を喪失し、孤独に直面した時などは、特にそうだろう。心身が弱ってタガが緩んだその瞬間、インターネットの“事故”は起こる。

認知機能に衰えを感じた人が運転免許証を返上するのと同じように、ネットアカウントを返上するような判断が、これからの高齢化社会には必要になってくるのではないだろうか。
 
私自身も、健康にあまり自信が無く、あまり長生きできそうに無いから、インターネットから身を引くタイミング、あるいはせめて、インターネットへのアウトプットを制限するタイミングを考えなければならないと思う。

私はまだ四十代だから、二十年後もどうにかインターネットが出来ていると信じたいが、自分より年上のメディア人士の姿を眺めるに、二十年後の私は今以上に自制を利かせなければ危ないはずである。幾ばくかの心身の疾病が加われば“事故る”確率はかなり高くなるだろう。
 
あと二十年もすれば、インターネットのアクティブユーザーは今よりもずっと高齢化して、その高齢化にふさわしいいろいろな問題が浮上してくるだろう。みんながみんな健康なまま年を取っていれば万々歳だが、そうなるとは思えない。

ネット炎上の年齢層は、若者アカウントから年配アカウントに大きくシフトし、ネットを使った詐欺や悪質商売のターゲットも、若者から年配者へいよいよシフトしていくと思われる。

現在の鳥越さんは決して認めないだろうが、SNSもブログもニコニコ動画も、インターネットを介したひとつのメディアだ。

である以上、このメディアを使いこなすには相応の思考力や判断力が必要だし、無名のネットユーザーでも、心身が衰えてくればリスクが増大することを忘れてはいけないと思う。すっかり年を取ってすっかり変わってしまった鳥越さんの姿をメディア越しに眺めながら、私はそんな事を考えていた。

(2016年8月12日「シロクマの屑籠」より転載)