東京オリンピック・パラリンピックに向けて、僕たちにできること。

東京オリンピック・パラリンピックのレガシーをどうつくっていくべきかが主なテーマです。

前回、僕は「東京オリンピック・パラリンピックを見据え、日本のごみ拾い文化をもっと海外へ!」と題した記事で、海外で賞賛される日本の「ごみ拾い文化」について、また2020年に向けてNPOにはどのようなことができるのかについて書きました。

今回は、僕のもう一つの仕事である東京都港区議会議員として、2020年を見据え、どんなことを考えているのか、仕掛けていこうとしているのか、また皆さんと議論したいことについて書いてみたいと思います。(文末には素敵なイベントの告知もあります!)東京オリンピック・パラリンピックのレガシーをどうつくっていくべきかが主なテーマです。

1964年東京大会・2012年ロンドン大会で生まれた「レガシー」

東京でオリンピック・パラリンピックを開催するメリットは何か、とよく聞かれます。その経済効果については様々に試算されていますが、同じくらい期待されているのが、大会が終わった後もその国や地域に遺る「レガシー」です。

1964年に開催された前回の東京オリンピック・パラリンピックは、戦後の東京を大きく変貌させました。主な競技会場があった神宮地区と駒沢地区を結ぶ青山通りがつくられ、通り沿いには商店街ができました。当時、自動車の交通量は増え続けていたため、首都高速道路の建設も進められました。

東京駅と新大阪駅までの515㎞を約4時間半で結ぶ東海道新幹線もつくられました。テレビが広く普及し、スポーツ中継というTVコンテンツが確立したのもこの時です。

2012年のロンドンオリンピックは、環境保護に十分に配慮するオリンピックとするために、持続可能性を考慮したイベントの国際規格である「ISO2021」を世界で初めてつくったことで知られています。

また、これを機に、ロンドンのバスはほぼ全てが車椅子用のスロープを備え、運転手の手助けなく乗車することが可能になりました。電車は低床車両が導入され、駅員連絡用のインターホンや聴覚障がい者のための磁気ループも設置されました。さらに、「ダイアル・ア・ライド」と言われる公共交通機関を利用できない障がい者向けの無料送迎サービスも開始しました。

ロンドンでは約24万人から選ばれた7万人のボランティアが、輸送や医療、技術・情報関連のサポート、会場案内や通訳など、多岐にわたり活躍したことでも有名です。組織委員会は障がい者やLGBT、女性などに対する雇用目標を設定し、誰でも働きやすい環境づくりに努めました。建設現場やボランティアなどでの彼らの活躍により、その後の企業の意識や採用行動が大きく変化したそうです。

前回の東京大会は主にハード面のまちづくりに、ロンドン大会は環境や多様性を尊重したまちづくりに貢献しました。オリンピック・パラリンピックはそれを一つの契機として、国やまちが持っている課題を解決するのに役立つものだと言えそうです。

2020年の東京の課題とは?

そして、次の東京大会。僕たちは日本の、東京の、さらには港区のどんな課題をどう解決できる可能性があるのでしょうか。

もちろん、インフラの整備、災害対策、バリアフリーへの対応、多言語化、Wi-Fi環境の整備、AIの活用、女性の活躍、障がい者・LGBTなどマイノリティへの対応や彼らの力を活かす仕組みづくり、復興支援、スポーツ環境の整備もとても大切でしょう。でも僕が思う本丸は、老若男女、障害のある人ない人、マイノリティも一緒になった「混じり合いのコミュニティづくり」です。

高齢者の孤独死、災害時の孤立、子どもの孤食、虐待や待機児童問題...少子高齢化に伴って、特に都市部では、「人と人とのつながりがない」ことを一因として様々な社会課題が生じています。

核家族化が進み、高層マンションに住む人たちが増えた結果、地域の人同士のつながりがどんどんなくなって、昔あったような、隣同士でお醤油を貸し借りする関係性が失われてしまいました。それにより、「自分の問題は自分で解決するしかない」人がたくさん生まれました。そんな中、行政も個人個人に十分に対峙できず、課題が課題として残ったままになってしまっています。

一方、インターネットは当初、様々な人をつなげるものだと期待されましたが、現実は必ずしもそうではなく、むしろ「フィルターバブル」と呼ばれる課題も生まれてきています。

FacebookのタイムラインやGoogleの検索結果など、私たちが普段接している情報は、私たち自身の属性やインターネット上でとった行動を考慮して一人一人に最適化されたものです。「友達」はたくさんいるのに、タイムラインに出てくる人はいつも同じ、あるいは、PCで隣の人と同じ検索をしたのに、自分と異なる結果が表示されたなどということは誰もが経験したことがあると思います。

インターネット上の情報空間は、個人にとって「居心地が良い」ように設計されています。しかしそれは、「自分と異なる価値観と出会いにいくい」ことと同義でもあります。極端に摩擦の生まれにくい環境の中で現代社会のコミュニケーションは生まれていて、ネット上には同じ価値観でつながる「スモールコミュニティ」がつくられているのです。

ボランティアを地域の力に

では、そうして細分化されてしまったコミュニティをもう一度つなぎ合わせるためにはどうすればいいのでしょうか?それには、地域で様々な人たちが交流する場所をつくること、そして、これまであまりまちに参加してこなかった人の力をまちづくりに活かすことがヒントになりそうです。

例えば、ボランティア。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は現在、来年の夏をめどに8万人のボランティアを募集するとしています。これ以外にも、ロンドンオリンピックの時のように「都市ボランティア」と呼ばれる、都などが独自に募集する枠もあり、合わせて9万人程度を想定しているとのことです。でも、「オリンピック・パラリンピックに何かしらの形で携わりたい」という市民側のニーズを鑑みると、これはもっと広げられるような気がしています。

組織委員会は、ボランティアに求める要件として、コミュニケーション能力がある、外国語が話せる、1日8時間、10日間以上できる、採用面接や3段階の研修を受けられる、2020年4月1日時点で18歳以上である、競技の知識があるか観戦経験があるなどとする素案を公表しました。

しかし、オリンピック・パラリンピックの過去の事例を見ると、医療、輸送、報道支援、警備、清掃など、必ずしも言語を必要としないものも含まれています。2020年に向けては専門性の高いものから、競技大会には直接関わらないまちの清掃や車椅子のサポートなどの誰でも参加できるものに至るまで、語学能力の有無にかかわらず、もっと幅広い分野でのボランティアを募れるのではないかと考えています。

その際、例えば、都や区のレベルで「ボランティアデータベース」をつくり、競技大会や行政周りのサービス、また商店街などで想定されるさまざまな種類のボランティアなどをあらかじめ想定し、提示し、外国人を含め、企業・個人を問わずより多くの方に登録していただき、マッチングする仕組みを取り入れれば良いかと思います。

オンラインでも、オフラインにおいても、ボランティア同士が交流できる機能等も付加すれば、ここで出来た「ラージコミュニティ」がオリンピック後も、地域の中で課題解決のために活躍できるレガシーとなります。

子ども・若者をまちの新たな担い手に

オリンピック・パラリンピックは次世代にレガシーを遺していくものですが、子どもや若者自身にまちの新たな担い手として活躍してもらい、彼らを中心にまちのつながりをつくり直すという方法もあります。まちに課題があふれた時、その打開策として子どもの力を借りようとする取り組みは、すでにあちこちで始まっています。

例えば、ドイツのベルリン市パンコウ区では、子どものまちづくりへの参画を推進しており、同区の条例では、公園などの都市開発を行う際、子どもの参画が義務づけられています。当初はマンションを建設する予定となっていた場所が、子どもたちの意見で公園として生まれ変わったケースもあるそうです。

同様に、日本でも大阪市西成区では、子どもたちが主役となってまちづくりを行うためのプログラム「まちづくり子ども大学」が行われました。小学生から高校生までが10日間にわたってフィールドワークやワークショップを行い、子どもの視点から行政に提言するというものです。提言はまちづくり委員会に提出され、実際の行政計画に生かされています。

岐阜県美濃加茂市が設置した「若者委員会」という取り組みもあります。これは美濃加茂市とNPO法人僕らの一歩が日本を変える。が共同して設置した組織です。市から任命を受けた25歳以下の若者のみで構成されており、委員は任期中、美濃加茂市の行政に関わる活動を行います。任期は1年。定期的な市長とのミーティングや調査、それを踏まえた政策提言、さらに提言の実行までを担います。

実際に政策を実行する際は行政の予算がつき、アドバイザーとして登録されているアーティストやデザイナー、経営者のサポートにより政策が実行に移されるということです。プロジェクトの途中で若者は多様な大人と出会い、接点ができるところがポイントです。

オリンピック・パラリンピックの開催を契機に、このように、各地で次の時代を担う子どもや若者とともに今後のまちのあるべき姿を考えてもらう「オリンピック・パラリンピック教育」を行い、プロジェクトを起こしていくことで、きっとこれまで解決されなかったまちの課題が良い方向に向かうでしょう。

その他、「人と人とをつなぎ直す」ことを念頭に置き、これまでまちに活かされていなかった資源を活かすことを考えれば、いろいろなアイディアが思いつくかと思います。みんなの知恵を持ち寄って真剣に考えたら、きっとスゴいアイディアがたくさん生まれるでしょう!

2020年東京大会でできることを、みんなで考えよう!

そんなことを考えつつ、この度、9/9(土)に、「みなとーく〜2020年、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、みんなでできることを考えよう!」というイベントを虎ノ門ヒルズカフェで開催することになりました。

みなとーくとは、様々な分野で活躍する方をゲストスピーカーにお招きし、港区をより良い街にするために何ができるか、そしてそのプロセスに港区に住む人、働く人、学ぶ人をどうしたら巻き込めるかを探るトークセッションです。その分野だけでは解決できない課題を、参加者の皆さんの知恵で解決していくことを目指しています。

当日は、聴覚障害・視覚障害をそれぞれ持ちながら、パラリンピックへの出場を目指して、プロスポーツ選手として第一線で活躍されている高田裕士さんと高田千明さん、発達障害に関するポータルサイト「LITALICO発達障害ナビ」の編集長をされている鈴木悠平さん、それに虎ノ門ヒルズの開発に関わり都市をアップデートすることをミッションに日々活動している森ビルの中裕樹さんを招き2020年、東京オリンピック・パラリンピックを見据えたまちづくりやボランティアの可能性について探ります。

オリンピック・パラリンピックに、僕たちはどう関わっていけるのか、またオリンピック・パラリンピックレガシーをどのようにまちづくりに活かしていけるか、皆さんと一緒に探っていけたら幸いです。ここで、新たなプロジェクトなり政策なりが生み出されることを期待しています。

イベント詳細は、以下のfacebookページをご覧ください!先着での申し込みですので、早めにお申し込みいただければ幸いです。

それでは、当日お会いできることを楽しみに。

注目記事