究極のものづくりを通じた、復興支援チャリティープロジェクト

ファッションを通じて何かできることはないか。
Toshio Yamada

今やニュースでほとんど扱われなくなった「東日本大震災」と「平成28年熊本地震」。復興を遂げるにはまだまだ長い道のりが待ち受けていますが、過去の出来事になっている感は否めません。

今の状況下で、ファッションを通じて何かできることはないか。そこで考えたのが、 折に触れて被災地を思い出してもらえるチャリティーアイテムの製作です。何気なく袖を通したときに着心地の良さを感じ、その度に洋服が生まれた背景に想いを馳せる。そんな日々のスタイリングやコーディネートに息づくチャリティーアイテムをつくることが、継続的な支援につながると思いました。

プロジェクトのコンセプトは、「ファッションのプロ×ものづくりのプロ」。第一線で活躍する3名のファッションのプロに、被災地の工場でそれぞれにアイテムをつくっていただくという企画です。お三方が持つセンスと経験に、世界に誇れる工場の技術を掛け合わせた結果、1つのアイテムとして純粋に商品力が高いと自負できる最高の品々が生まれました。

■触れた瞬間から虜になるカシミヤニット

Toshio Yamada

講談社『mi-mollet』編集長・大草直子さん×岩手県北上市のカシミヤ工場『UTO』

「ニットのコーディネートの幅を広げたかった」と語る大草さんが選んだのは、日本では真冬に着るイメージの強いカシミヤ。実は吸湿性や発汗性に優れており、ヨーロッパでは一年を通して着用されています。

今回は、3点のニットアイテムを製作。大判のストール、一枚で素肌に着られるタンクトップ、2つの表情を持つ両面主役のカーディガンなど、どのアイテムにも大草さん独自のアイデアが随所に息づいています。

Toshio Yamada

商品開発にあたり、大草さんと私は岩手県北上市のカシミヤ工場『UTO』に足を運びました。『UTO』は、分業制が一般的なニット業界の中で、編み立てから、縫製、仕上げまでを全て自社内で行っています。

最大の特徴は、ミシンでの縫製ではなく、伸縮性があるニット生地に適したリンキングという方法で全てを編み上げていること。手間はかかるものの、着心地の良さや縫い目の美しさは「うっとりするような素晴らしい仕上がり」と、 大草さんが思わず見惚れるほどです。

■ありそうでなかったカジュアルシャツ

Toshio Yamada

スタイリスト・望月律子さん×熊本県人吉市にあるシ ャツ工場『HITOYOSHI』

近年、ビックシルエットのシャツが人気を集めていますが、アイテムによっては大きく見え過ぎたり、だらしなく映ったりするケースも少なくありません。そこで今回は、「ビックシルエットのシャツは、日本の女性が着て本当に似合うのか?」という、望月さんが以前から抱いていたテーマをとことんまで追求しました。

目指したのは、ゆったりとしたシルエットではあるものの、スマートにも見えるドロップショルダータイプの大人のカジュアルシャツ。堅苦しくなく、なおかつ適度な抜け感をキープできるというギリギリのラインにこだわりました。

Toshio Yamada

完成したのは、オンでもオフでも「こなれ感」のある着こなしを表現できる、ありそうでなかったシャツ。コーディネートによって多面的な顔を見せるため、一枚で様々なシャツスタイルを楽しむことができます。第一ボタンの位置が絶妙で、美しいVラインも魅力的です。

「今までは、シャツのつくりや見え方に不満を感じる部分もありましたが、今回のシャツは私の理想そのもの。HITOYOSHIさんの丁寧な仕事があってこそ具現化できたと思っています」とは、望月さんの言葉。大のシャツ好きである望月さんの思いがギュッと凝縮された一枚です。

■優雅な毎日を演出するフェミニンなワンピース

Toshio Yamada

ファッションエディター・三尋木奈保さん×熊本県球磨郡あさぎり町のスカート専門工場『DEAI』

三尋木さんのテーマは、大人が毎日でも着たくなるフェミニンなワンピース。一枚でもシンプルになりすぎず、組み合わせによっても着こなしを変えられる汎用的なワンピースを目指しました。

スカート専門の工場『DEAI』と打ち合わせを重ねていく中で印象的だったのが、「肌触りが素晴らしい」「腕通りが良い」など、サンプルが上がってくる度に驚いていた三尋木さんの姿。三尋木さんの期待を上回るクオリティーでオーダーに応える工場の技術力に、改めて感服しました。

Toshio Yamada

最終的に完成したのは、従来のファクトリエにはなかったタイプの新しいアイテム。全体はやや丸みを帯びたコクーンシルエットで、袖の根元は大きくゆったりとしつつも、袖先に向かってだんだん細くなるドルマン型を採用しています。

上質な素材で着心地を高め、普遍的なルックスの中にトレンドを取り入れた優雅な大人の一着。ファクトリエの新境地を切り開いてくれたことで、お客様の幅も広がりそうな予感がしています。

■刹那的ではなく、長期的に続くチャリティーを

先日、仮設団地支援を続けるYMCA熊本の中村氏から連絡をいただきました。「9/1は子どもの自殺が多い日です。仮設や被災者の子はいじめの対象になることもあります。だからたくさんの大人が日頃から、大丈夫だよ、私たちが守ってるよ、の無言のメッセージを伝えてます。」と。

このプロジェクトの着想が生まれたのは1年以上前にさかのぼりますが、「震災を風化させてはいけない」という思いが変わることはなく、今回の実施に踏み切りました。私たちが今できることを最大限に注ぎ込んだアイテム。買ったときだけで終わる刹那的なチャリティーではなく、長期的な復興支援につながっていくことを心から願っています。

※売上からコストを除いた全ての金額を、日本赤十字社を通じて、東日本大震災・平成28年熊本地震の義援金として寄付いたします。

【Factelier Charity Project ~私たちがファッションを通じてできること。~】

・スペシャルサイトはこちら

⇒それぞれの商品開発・ものづくりの舞台裏などを掲載中。

【高島屋でイベントを開催】

■新宿店

日時:9月9日(土)時間:14:00~14:30

内容:大草直子さん・望月律子さん・三尋木奈保さん×ファクトリエ・山田

⇒こちらの内容は、近日中にスペシャルサイトにアップします。

■日本橋店

日時:9月16日(土)時間:後日告知いたします。

内容:大草直子さん×ファクトリエ・山田

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