働き方改革実現会議全10回終りました。ここからムーブメントをいかに作るかがスタートです。

「2017年が日本の働き方の転換点だった」と言われるようになるのか?それとも変わらないのか? 皆さんが作るムーブメントが推進する大きな力です。

本日、第10回働き方改革実現会議が終了しました。全10回の会議は「働き方改革実行計画(案)」をとりまとめ、終了となりました。

実行計画は多岐にわたりますが、労働時間の上限に取り組んできたので、労働時間についてのポイントを簡単にご説明します。

Q:働き方改革といったって、結局100時間まで働かせてよくなったんだよね? 前と変わらないよね?

A: NO. 違います。時間外労働の基本は原則月45時間年間360時間です。下記の特例の場合だけが年間720時間(月平均60時間)までの時間外労働が認められます。

特例を結ばずに45時間を超えたら罰則となります。労使で特例を結んだ場合でも、月の時間外労働の上限は100時間未満(単月)で、99時間を超えたら罰則です。

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(時間外労働の上限規制)

週 40 時間を超えて労働可能となる時間外労働の限度を、原則として、月45 時間、かつ、年 360 時間とし、違反には以下の特例の場合を除いて罰則を課す。特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない時間外労働時間を年720 時間(=月平均 60 時間)とする。かつ、年 720 時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限を設ける。

この上限について、1)2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで、80 時間以内を満たさなければならないとする。2)単月では、休日労働を含んで 100 時間未満を満たさなければならないとする。3)加えて、時間外労働の限度の原則は、月 45 時間、かつ、年 360 時間であることに鑑み、これを上回る特例の適用は、年半分を上回らないよう、年 6 回を上限とする。

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Q:でも、今までだって上限はあったでしょう? 守っていない企業も多かったよね?

A:それは上限が厚労大臣告示で法的強制力がなかったからです。今度は法的強制力がある罰則つき上限が法律に書き込まれます。

これが今回の法改正の一番のポイントです。

Q:その100時間未満はもっと短くならないの? 過労死基準を上回っていますが・・・

A: この法律の施行後5年経過した時点で検討し、必要な場合見直します。

Q:勤務間インターバル規制はどうなったの?

A: 入っていますが、努力義務です。努力義務から法律になる例(男女雇用機会均等法)があるので、まずは一歩でしょうか。入らなかったかもしれないインターバルの文字がなんとか残ったというところです。

Q:でも企業が本気で取り組むかな?

A: まずは今までの法的強制力のない大臣告示ではなく、書類送検などの罰則がある法的上限です。経営者には「イヤなこと」ですが、やらなければというプレッシャーになります。また、企業本社の監督指導強化があります。

違法な長時間労働が複数事業場で認められた企業は、企業本社への立ち入り調査があり、複数事業場で月80時間超の時間外労働違反がある場合なども、企業名公表制度が適応されます。

そもそも労使で36協定を結んでいない企業(そもそも残業できないはず)への監督指導の強化もあります。

Q:そもそも実労働時間の把握がないと、取り締まれない。誰が把握する義務があるの?

A: 法律ではありませんがガイドライン(2017年1月)が出されています。それによると「労働時間の適正な把握のために、使用者が講ずべき措置」が明らかになっており、その監督指導も強化されます。

Q:テレワークで逆に働き過ぎにならない?

A: 2017年にテレワークガイドラインとして今までのガイドラインが刷新されます。「深夜労働の制限や深夜・休日のメール送付の抑制等の対策例を推奨する」となっています。

ほかにも「運輸」や「建設」も適応除外にならないなど、いろいろと新しいポイントがあるので、詳しくは実行計画(案)をごらんください。

さて、今後私たちはこの新しい働き方にどう向き合って行くのか?

まずは法改正がしっかりとなされるまで、油断はできません。政策には飴と鞭があって、飴は予算がついて「事業」となります。例えば女性活躍などの「支援金」など。プランができ、予算がとれたらすぐに動き出す。

しかしこちらは「鞭」政策。法律にならなければ「絵に描いた餅」であり、実行計画ができたことは「五合目」ぐらいです。法律にならなければ計画はただの紙切れです。ぜひみなさん、今後も注目してください。

そしてもう一つ、この「働き方改革のムーブメント」を盛り上げて行きましょう。

年720時間ではなく、原則45時間、年360時間が「原則」になるムーブメントです。

「結局100時間OKなんだ」と誤解している経営者もたくさんいます。今度は罰則がある法的上限になることを伝えてください。罰則とはなにかと問われたら「電通の例を見てもわかりますよね?」と言ってください。

「日本人は働くことが好きだし、仕事も多いし、無理!」と思いますか?

働き方を変え、生産性をあげるのも経営者の役割です。

今経営者は労働時間に関してはかなり過敏になっています。右を見て左を見て、そわそわしているでしょう。政府がどこまで本気なのか?またほかの会社はどこまでやるのか?

横並び意識の強い日本人は実現レベルが上がってくると、一斉にそちらにいきます。

この例を「禁煙」や「酔っぱらい運転」に例えるとわかりやすいでしょう。

かつては「当たり前のように破っていた法律」をみんなが遵守するようになった「酔っぱらい運転」。

オフィスで隣の人が普通に煙草を吸っていた時代があるなんて、今の若い人には信じられないでしょう。

長時間労働も同じです。

「昔は何時に仕事が終るかわからなくて、平日に約束もできなかった」

「昔は毎日家族と食卓を囲めないほど遅くまで働いていた」

というのが昔話になる日がくるかどうかは、まさにここからがスタートです。

「働き方改革なんて・・・」と他人事のように批判するのは簡単。

しかし、これをきっかけにムーブメントを作って行きませんか?

行動計画は一歩にすぎません。

「2017年が日本の働き方の転換点だった」と言われるようになるのか?それとも変わらないのか?

皆さんが作るムーブメントが推進する大きな力です。

本日の提出した資料です。

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「実行計画とりまとめまでの事務局の皆様の労をねぎらうとともに、この改革に一体となってご尽力いただいた、労使の皆様、経団連榊原会長、日本商工会議所三村会頭、全国中小企業団体中央会大村会長、連合神津会長、に敬意を表します。

なぜなら働き方改革は「個人が工夫して生産性をあげればいい」というだけの問題ではありません。働き方改革先駆企業の経営者にインタビューすると、「経営戦略としての働き方改革」に取り組んでいると言う。つまり「経営戦略の改革」という大きな命題であり、それだけの覚悟で取り組んでいただくことだからです。

また女性の労働環境、シングルマザーへの配慮など、私の提案を含めてくださったことをうれしく思っております。

より実効性を高めるため、今後の2018 年度の女性活躍推進法の情 報公表制度の強化策の議論や、労政審等での議論の際にご検討いただきたく、下記の提案をさせていただきます。

● 「女性活躍推進法の情報公開制度の中に「特例で労使が結んだ繁忙期の労働時間の上限」を開示する項目もつくること」もご検討いただければと思います。人材獲得競争の時代、公表は公正な競争をもたらし、改革の加速を促します。

● シングルマザー、単身女性だけでなく、「独身無業女性」への配慮もお願いしたい。日本はパラサイトシングル率が高いので「家事手伝い」という名目で見過ごされている「独身無業女性」も多い。彼女たちが将来の貧困リスクを回避できるような支援が必要だ。

また世論で最も言われるのが労働時間についてです。「実効性が担保されるのか?」「サービス残業が多くなるだけでは?」という声があります。今後の労政審などでご検討ください。

● サービス残業に対する、指導、取り締まりの強い姿勢を示してほしい。

● 労働時間に対する「相談機能」「通報機能」を強化してほしい。労使ともに裁判になる前に相談できる場所があることが有益である。

● 実労働時間の把握のために「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月)について、適切に実行されるように周知徹底、取り締まりを強化してほしい。

● 教師の長時間労働についてもどこかで触れてほしい。公務員の改革を議論する際に、教師もご検討いただきたい。

以上」

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