空港型市中免税店、ロッテやサムスン進出で韓国勢巻き込む戦いに 体験してわかった"利用に適する人"とは

筆者は空港型市中免税店の利便性を確かめるべく、3月某日の平日の夜、「Japan Duty Free GINZA」を訪れた。

1月27日、沖縄県を除いて日本初となる空港型市中免税店「Japan Duty Free GINZA」が、銀座三越の8階にオープンした。「銀座に自然を見立てて陰陽を中和する」をコンセプトに、広さ約3,300平方メートルの中に、「海」「森」「丘」「市」「集落」の5つのゾーニングがなされており、コスメ、香水、酒、タバコ、時計などを販売するほか、ティファニーやグッチなど9つのブランドはブティックを設けている。

運営するのは、三越伊勢丹ホールディングス、日本空港ビルデング、成田国際空港子会社のNAAリテイリングが設立した、Japan Duty Free Fa-So-La 三越伊勢丹。増加する訪日旅行客の需要を取り込むべく、空港会社2社と大手百貨店がタッグを組んだ。

利用できるのは、羽田空港か成田空港から出国する人のみで、パスポートや航空券など出国が証明できるものが必要。日本人の利用もできる。商品の受け取りは、羽田空港と成田空港の出国手続き後エリアに設置されている、市中免税店引き渡しカウンターで出発時刻の1時間前までに行う。購入期限は出発前日までで、羽田空港を午前0時から午前5時59分までに出発する便を利用する場合のみ、前々日までとなる。営業時間は午前10時30分から午後8時までだ。

利便性には疑問符、空港やインターネットで購入したほうが安い場合も

筆者は取材で成田空港を出発する国際線に搭乗することが決まったため、空港型市中免税店の利便性を確かめるべく、3月某日の平日の夜、「Japan Duty Free GINZA」を訪れた。

地下鉄直結の地下1階からエスカレーターで8階に向かう。途中の階ではちらほらと大きな荷物を持った外国人の声も聞こえたものの、上層階に行くにつれてその姿は激減。「Japan Duty Free GINZA」がある8階には見渡す限り片手で数えられるくらいの人出で少し寂しい状態だ。

ブランド物に興味がない筆者は、リカーコーナーに直行。その中でも比較的安価な、海外向けプレミアム梅酒「CHOYA Extra Years(エキストラ イヤーズ)」を手に取った。インターネットで調べたところ、メーカー希望小売価格は2,625円。一方で「Japan Duty Free GINZA」では2,000円なので、約24%もお得に購入できることになる。

空港型免税店と通常の免税店の違いは、通常の街中にある免税店は免税範囲が消費税のみに限られる一方、空港型免税店は酒税やたばこ税といった消費税以外も免税となる点だ。つまり、酒税やたばこ税、関税がかかる商品の場合、空港型免税店のほうが割安に購入できるということになる。一般的に、消費税免税店は「TAX FREE(タックスフリー)」、空港型免税店は「DUTY FREE(デューティーフリー)」と呼ばれる。

実際のところ、成田空港の「JAPAN DUTY FREE」などではホームページでも同価格で予約販売しているほか、店舗によりJALカードやANAカードの利用でさらに5%、10%引きといったサービスも行っている。必ずしも全ての免税店で実質価格が一緒ではないという点も注意したい。

すでに購入するものが決まっている場合はわざわざ事前に店舗に出向かなくても、インターネットで注文すれば空港で受け取るだけで煩わしくないものの、化粧品のカウンセリングを受けたり、お酒を試飲しながらじっくり悩んだ末に購入したいという方には、空港で時間に追われなくて済むので出向く価値があるといえるだろう。

購入を決め、商品カードを店員に渡すと、「カードを作りましたか?」を聞かれた。まずはレセプションで「ショッピングホルダー」を作る必要があるという。レセプションに案内してもらい、航空券のEチケットとパスポートを提示すると、搭乗便名と出発時刻、空港、ターミナルを確認され、「ショッピングホルダー」が作製される。名前と電話番号を記入すれば終わりだが、たまたま空いている時間帯だったので良かったものの、混雑時には面倒と感じるだろう。

一方で、韓国に6店舗を持ち、3月31日に銀座・数寄屋橋交差点の東急プラザに空港型市中免税店をオープンしたばかりのロッテ免税店は、レジでパスポートと航空券のEチケットを提示するだけで購入できる。

出国当日、成田空港から出発する筆者は、第1ターミナルの南ウイングから出国し、免税品を受け取りに向かう。搭乗するフライトは51番ゲートで、出国審査後は左に数分進んだところにある。一方で引き渡しカウンターは反対の右側に進んだ、北ウイングと南ウイングの間にある中央ビルになるため、ゲートとは反対に歩かなければいけない。思いのほか遠く、出国審査後、ゲートまでの間にある免税店で購入すれば...と後悔した。

引き渡しカウンターには誰一人として受け取る人がおらず、大きなお世話だが、店舗の来客数も考えると先行き不安になる。係員は、「春節期間は利用者も多かった。最近は日本人の利用も増えてきた。成田空港だと、化粧品や酒、タバコ、ブランド物を各店舗で購入する必要あるものの、銀座(「Japan Duty Free GINZA」)では一店舗で購入できるので利便性が高い。今は閑散としているが、桜のシーズンになれば利用が増えるのでは」と期待する。

受け取り後は出国審査場まで戻り、さらに奥にあるラウンジまで歩いたため、コートを着たままの筆者は汗だく状態だった。

ターミナル自体がコンパクトな第3ターミナルでは出国手続きからゲートの間にあるほか、第2ターミナルも比較的歩かなくて済む、本館バスゲートがある70番ゲート前に受け渡し場所がある。羽田空港では出国手続き後、ゲートと反対側であれば数百メートル歩くことになる。少なくとも、出国審査場のすぐそばやサテライトごとに受け取り場所を置くようにしてほしいところだ。

利用価値が高いのは、免税店が充実している成田空港第1ターミナルや第2ターミナルよりも、羽田空港や成田空港第3ターミナルなど、比較的免税店舗が少ないターミナルを利用する場合だろう。フライトの出発時間帯が重なった際には会計に行列ができていることも多いため、受け取りだけで済むのは心理的に楽だ。空港にギリギリに着く場合には、じっくり選べるメリットもある。

海外の空港で帰国時に購入すればいいのではと思うが、化粧品では日本で販売しているものと海外で販売しているものでは成分が異なることがあるため、日本人は日本の空港で購入したほうが肌に合わないということは少ない(免税店販売員)という。

韓国勢も進出、期待も高く

空港会社や百貨店の空港型市中免税店に対する期待度は高い。高島屋、全日空商事、サムスングループのホテル新羅の3社は、共同で空港型市中免税店事業を展開するための合弁会社を設立すると3月に発表したばかり。来春にも高島屋新宿店の11階に広さ約2,800平方メートルの空港型市中免税店を展開する。初年度売上目標は150億円で、現在の高島屋新宿店での免税売上が96億円であることを考えると、現実的な数字といえる。

高島屋新宿店がある新宿駅南口エリアには、3月25日に商業施設「NEWoMan(ニュウマン)」、4月4日にバスターミナル「バスタ新宿」がオープンし、118社のバス会社が乗り入れるなど、注目が集まっている。一等地の老舗百貨店と、韓国を中心に空港型免税店を展開するホテル新羅、日本国内での商品調達力が高い全日空商事の3社が協力することで、比較的短い準備期間でオープンできるとみており、大阪への2号店の展開も視野に入れる。

3月31日に東京・銀座の東急プラザ銀座に空港型市中免税店をオープンしたロッテ免税店銀座は、唯一の単独での日本進出だ。2014年7月にロッテ免税店JAPANを設立し、同年9月には関西国際空港にも免税店を開設するなど、着実に日本での足場を固める。

8階と9階の2フロアに約4,400平方メートルの広さと空港型免税店で最大の広さで、「利便性と商品力で勝ち抜く」(関係者)と意気込む。オープン当日は、K-POPスターも出席した大規模な記者会見も行い、大規模なPRを展開する。(文:後藤卓也(Traicy編集長)/写真は全てTraicyによる)

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