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[連載]「僕らはまだ、世界を1ミリも知らない」の著者 太田英基さんとのぞく、世界の日常 - 本当の働き者とは -

2014年11月06日 23時44分 JST | 更新 2015年01月05日 19時12分 JST

以前、4つの国の結婚や恋愛について話した、「[連載]「僕らはまだ、世界を1ミリも知らない」著者の太田英基さんとのぞく、世界の日常 - 結婚と恋愛について -」。今回はその後半です。

話は恋愛から家族、そして職業や働き方についてへと展開。ふだん当たり前だと思っていた先入観、イメージとはうらはら。日本に来て生活しているからこそ分かる、日本の実態と彼らの母国はどう映るのでしょうか。(※ロシアのオルガは用事のため途中退出)

家族が何より、第一優先のエルサルバドル

太田:エチオピア、トルコ、それぞれの恋愛事情は民族的な事情もありながら、日本と似ているところも多いようですね。じゃあ女性サイドはどうですか?

ナンシー:エルサルバドルでは、彼氏が彼女の家へ行って「わたしはあなた方の娘を愛している、真剣なんです。付き合うことを認めてください」と、14歳とか15歳くらいの男の子が言うのが習慣です。そして両親が付き合うのを認めるかどうか決めるのです。

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ナンシー:恋人ができたとき、わたしの母は賛成してくれたけど、叔父は「だめだ、ヤツは16歳だから危ない年齢だ、彼はナンシーを妊娠させるに決まっているし、ナンシーをほったらかしてどこかへ行ってしまうにちがいない」と言って反対しました。

ただ、今は田舎の人ですらFacebookを使っているから、外の世界で何が起こっているのかすぐにわかります。田舎育ちの女の子なんかは、昔の風習から抜け出して、ほかの世界へ飛び込むこともできるようになったんです。

太田:ナンシーさんは飛び出したわけですね。

ナンシー:今でもまだ全てが許されているわけではありません。わたしがこうして日本にいることも、決して褒められる事ではないんです。結婚するまでは家にいなければいけません。両親のめんどうをみるのが子供の役目ですから。

日本では、両親に歯向かうと縁を切ったり「自分の子じゃない!」と言って突き放したりしますが、それはエルサルバドルではありません。言葉として、お金は渡さないなどと言ったりしますが縁を切ることはありません。 家族がなによりも大事なものという文化が染みついているんです。

憧れの職業は?

太田:そういった田舎の女性たちは、大きくなっても働きに出たりはしないのですか?

ナンシー:ド田舎でなければ、女性も大学へ行って、経営学やビジネスを学ぶことはあります。ですが昔から多くの女性が夢見る職業としては、学校の先生ですね。誰かに何かを教えて、尊敬されるというのは特別な仕事だからできることです。

エムラ:夏には1ヶ月以上休みがあるし、冬にも長い休みが取れるしね!

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ナンシー:わたしたちの国ではそういうシステムではないですが。笑 

実際、子どもたちにとっては学校に行くことそのものが難しいこともあります。だから女の子は先生になりたいと憧れる子が多いのだと思います。けれど最近は国際弁護士になったり政府機関に入ったりする女性もいます。田舎では、昔と変わらない生活をしている人もいて、働かなくても生きるだけで精一杯の人も多いです。

エムラ:トルコでは、成績が優秀な生徒が選ぶ進路によって、憧れの職業というのは変わります。100人の優秀な学生がエンジニアを志望すれば、トルコの人々にとっての憧れの職業はエンジニアになるんです。

アベノ:都心だと、やはり医者や科学者、パイロットになるのを夢見る人が多いです。「エチオピア航空」は国のひとつの誇りとする会社です。また、何人かはアスリートになりたいと思う人もいます。なぜならエチオピア出身の有名ランナーがいるからで、贅沢な暮らしができると考えられています。伝統色の強いエリアでは、伝統や風俗習慣から抜け出せて、様々な人と出会える上にお金や家ももらえることからアスリートは夢の職業なのです。

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アベノ:世界というのは想像以上に目まぐるしく変わります。都会は特にそうです。田舎でもビジネスのために携帯電話を使う人もいます。テクノロジーが変わると生活も変わって、情報もどんどん入ってくるから職業への憧れも変わっていくのだと思います。

日本語しか話せなくてもコミュニケーションはとれる

太田:アベノさんは大学院卒業後にどうするかは決めていますか?

アベノ:まだ決めていません。博士課程へいくなら、日本やどこか別の国で勉強できる場所を探します。でも日本に居続けるかもしれません、日本に住むということが、僕にとっては一番の挑戦だから。

太田:といいますと?

アベノ:まずは言語の壁があります。文化の違いも大きいから、毎回葛藤が起こります。

エムラ:でもそれって、東京にいるから感じるストレスのような気もします。東京の人々は歩くのが早いし会話もしない、笑顔もない。でも埼玉へ旅行したとき、道を歩いているだけでいろんな人が話しかけてきました。「何処へ行くの?」とか「どこから来たの?」とか。東京ではそういう交流はなかったから、とても驚きました。

アベノ:でも僕は基本的に感情を隠されてしまうと察することができないんです。ほとんどの日本人は何を考えているか、僕にはわからない。僕自身で、彼らの気持ちを見抜かなければなりません。

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アベノ:そういうところは日本で暮らしているとすごく難解ですが、外国人に対してであろうとなかろうと、誰に対してもサービスの質は素晴らしいと思います。ものもたくさんあるし、安全な環境です。道に迷った海外の人を見つけても、誰も話しかけてきません、言語を喋れるかどうか心配なのでしょう。でも、尋ねればほとんどのひとは助けてくれますよ、とても親切に。駅まで連れて行ってくれて、どの電車に乗って何番目の駅で降りればいい、という細かいことまで教えてくれます。道に置いてきぼりにはしません。ただ、話しかけるまではみんな知らんぷりしていますけどね。

太田:アレルギーみたいなものですね。

ナンシー:うん、人とは違うことをすることに対して、アレルギーと言っていいほど抵抗を感じているようですね。

太田:海外の人々と交流して関係性を築くことに対して、積極的ではないのです。僕もバックパックで旅に出るまでは、海外の友達はいませんでした。出会いすらなかった。そういう人が日本には多いから、自然と緊張してしまうし「わたしは英語が話せません」っていう英語の一文だけなぜかみんな喋れるっていう不思議な現象がおきるんです。

おそらく殆どの日本人は、ほんの少しだけでも英語が聞き取れたり喋れたりするはずです。ただ、関わった経験がないからどう振る舞えばいいか分からないだけだと思います。

エムラ:僕の知り合いの日本人でも、間違えることを恐れて黙り込んでしまう人がいます。何でも良いから発言してくれれば、僕らも推測できるし何か理解できるかもしれない。

アベノ:完璧主義者が多いのではないでしょうか。なるべく正確な英語で話そうとしますが、母国語ではないから間違えて当たり前です。

ナンシー:そうですね。日本にはたくさんの人が海外から訪れます。そのうちの多くの人たちも、英語は母国語ではないんです。だから日本人と状況は一緒です。

日本の田舎に行くと、英語を離せないけれど日本語で話しかけてきますよ。彼らはなんとか日本語で理解してもらおうとします。書いたりボディランゲージを使ったり。それにとてもいい勉強になるんです、彼らが「水」と言いながら飲み物を渡してくれば「ああ、これは日本語で水というのか」と分かります。でも誰かが突然親しげに話しかけてくることなんて東京ではまあありません。これだけ大きい都市になると、人々は孤独を感じるようになるんじゃないかしら。

太田:東京ではお互い知らない人ばかり、隣人すら知らないこともあります。でも田舎に行けば、彼らは地元を知り尽くしていてそこでコミュニティを形成しています。みんながご近所、のような感じです。だから自分たちのコミュニティの外から来た人は分かるんです。海外だけでなくて隣の県から来た日本人に対しても、そうだと思います。

日本人は本当に勤勉?

太田:田舎と比較したときに東京が特にそうかと思いますが、日本人は時々、働きすぎで余暇がなく勤勉だけど疲れているように感じられるとも言われます。そういう日本人は、みなさんから見て、幸せそうに見えますか。

エムラ:僕が働いていた時は、職場の人たちは優しくてあたたかかったです。どうやって仕事を進めればいいか教えてくれたし、アドバイスもくれました。でも彼らの仕事の様子を見ていると、生産性がとても低いように感じます。全部言われたことはやっているけれど、おそらくその作業時間はもっと短くできるだろうと感じることが多かったです。

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僕がいたその職場では、先輩たちが外出したり休憩したり、おしゃべりしたり、パソコンをいじって時々YouTubeを開いたりFacebookでチャットしていたり、一日パソコンを眺めているだけで何も生み出していない日もありました。効率化できるのに退屈なのか、オフィスにいる満足感のためか、仕事の時間を短くしようとしない。衝撃的でしたね。

ナンシー:いつも朝早く出勤するのに無駄な仕事を多くやっているように思います。メールをチェックしたり、レポートを書いたり、話したり......週次や曜日ごとでミーティングもあって働いているけど集中できない状態が続いて、夕方くらいになってようやく本格的に仕事に集中できるようになるんです。それで10時や11時とか夜遅くまで働いているから結局毎日くたくたのままで。それより朝早くから集中して余計な仕事はカットして、夕方に帰ったほうがいい。

エムラ:しかも会議は毎回時間を取りすぎることが多いですね。ミーティングのためのミーティングまであるし。

ナンシー:ハンコとかも本当に必要か疑問ですね。85%の日本の会社では未だに大量の紙を使いますよね。印刷するのにも読むのにも時間がかかりませんか。「ほうれんそう」って聞いたことある?

エムラ:いや、ないですね。

ナンシー:日本で働く上でのメインルールですよね。小さな進捗もいちいち確認して、そのたびに問題が発生して解消して、というのを繰り返すから進むのがとても遅いんです。事実を報告することだけにとても時間をかけています。

エムラ:日本に来る前に働いていたところだと、期間を設定してその日までに全力で製品をつくります。完璧な状態でなくても、とりあえず世の中に出してみて、そのあと修正を加えていきます。けれど日本だと完璧な状態になるまで期間を延ばすことが結構あるんです。

ナンシー:誰が見ても良くない部分をそのままにして出すのは、もちろんダメですが、細かい部分なら特に気にならないと思います。

アベノ:でも日本のいいところは几帳面で細かいところですね。西欧の人々から見れば、日本人の細かさは目をみはるものがあると思います。完璧主義なところも、いいところとして活きることもあります。でも、どうしてデジタルで情報管理をしないのだろうと感じることはありますね。大使館に行ったときも書類を何枚も用意しなければならなかったし、書類を申請するための書類が必要だったりしました。僕らの国でもオンライン上で手続きできるようなことだし、日本は先進国なのに、どうしてこんなに管理の仕方が違うのだろうと。でもいずれオンライン上ですべて管理して進行できるようにする必要があると思います。

太田:なるほど。皆さんの意見は、日本に住む人たちにとって良い刺激になったと思います。無駄を削減していく勇気と、相手を受け入れる柔軟性を、僕たちは持たなければなりませんね。本日はありがとうとございました!

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School With

僕らはまだ、世界を1ミリも知らない

[太田英基:1985年生まれ。フィリピンでの英語留学3ヶ月間を経験した後、約2年間、50ヶ国を旅しながら、現地のビジネスマンを中心とした様々な人たち1,000人以上と交流をする。その様子を宣伝会議、ビジネスメディア誠、東洋経済、AERA、マイナビなどに寄稿。2011年7月には旅中に東洋経済新報社から、『フィリピン「超」格安英語留学』を出版。近年人気急上昇中のフィリピン留学の仕掛け人と呼ばれる。帰国した2012年7月以降、各方面から講演依頼・執筆依頼をうける。2013年、School Withを立ち上げ、代表取締役に就任。]


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