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ヨーロッパの最西端で最終バスを逃して得た、一期一会

2014年12月19日 18時25分 JST | 更新 2015年02月17日 19時12分 JST

当たり前なことですが、旅をしているうちに新しい人に出会うことはしょっちゅうです。

たまたま同じ船に乗ったり、飛行機や電車で隣席だったり、なんとなく声をかけて盛り上がることもあります。私の場合だと、旅中で何か失敗をすると、新しい人に出会うことがしばしばあります。だから、今までどんな失敗があっても、一度も後悔したことがありません。なぜなら、その失敗のおかげで新しい人に出会えて、新しい物語を聞かせてもらえて、一生忘れない思い出がそこにできたからです。

たとえ、その人ともう二度と会わないとしても、出会った瞬間だけは永遠に存在していると思います。

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Letizia Guarini「ヨーロッパの極西―ポルトガルの境界までの旅

ヨーロッパの最西端、ロカ岬


4年前は友人と一緒にポルトガルを旅しました。なんとなく計画を立てて、ポルトからリスボンまで行こうと決めていました。

ガイドブックのページをめくったら、シントラという、おとぎ話のような場所も見つけて、二人とも盛り上がって行くことにしました。そして、シントラからバスに乗ったら大西洋まで行けることを発見しました。目的地はロカ岬。つまり、ヨーロッパの最西端、ヨーロッパ大陸が終わる場所です。そういうことを考えるだけで、興奮しました。

私は方向音痴で、だれかと一緒に旅していると、ものすごく呑気になってしまって、道やバスの時刻を一切気にしません。でも英語が少し話せるので、道に迷ったりバスがわからなかったりしても誰かに聞けば安心するタイプです。一方、友人は英語が話せませんが、まじめな人で、ガイドブックを見なくてもどこにいるか、何時に電車に乗ればいいかわかるし、ガイドさんみたいに指導するタイプです。

だから、一緒ならきっと問題ないだろうと二人とも考えていました。しかし、ロカ岬では私の英語力も彼女の几帳面さも何の役にも立ちませんでした。

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Letizia Guarini「ヨーロッパの極西―ポルトガルの境界までの旅

シントラの案内所でバスに関する正しい情報を教えてもらって、正しいバス停に行って、正しいバスに乗りました。それまでは、パーフェクトでした。30分ぐらいバスに乗って、車窓から畑を眺めながら大西洋を見るのを楽しみにしていました。同じバスに旅人が乗っていたし、まだ夕方の4時だったので、きっと問題ないと二人とも信じていました。

初めて見る大西洋


ロカ岬に着いたら、帰りのバスをもう一度確認しようと思って、運転手さんに聞いてみようと思いましたが、英語が通じませんでした。ガイドブックに乗っている時刻表を指したり、ジェスチャーを使ったりしていると、運転手のおじさんはニコニコしながら「最後のバスは夜の8時だよ!」と片言の英語で教えてくれました。

「本当ですか? ガイドブックによると6時みたいだけど」

「8時だよ、8時! 心配しない、また迎えにくるよ」と、ニコニコしたままおじさんが言いました。

まあいいか! 感じのいいおじさんだし、きっと詳しいから嘘をついているはずがないと、思っていました。まじめな友人はさすがにバス停に貼ってある時刻表はもう一度確認しましたが、確かに8時と書いてあって納得していました。

そして、なんといっても、目の前で今まで見たことのないほど広大な海が広がっていて、バスの時刻はどうでもよくなってしまったのです。

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Letizia Guarini「ヨーロッパの極西―ポルトガルの境界までの旅」より

地中海しか見たことがなかった私たちにとっては、大西洋は別世界の海のようでした。考えてみると海は海ですし、地中海にせよ大西洋にせよ人間の目に写っているのは同じ海のはずです。しかし、ロカ岬でまた違う自然の力を感じることができるような気がしました。風の力、太陽の力、波の力に圧倒されていました。

そのときは、興奮しすぎて時間が経つのを忘れていました。でもまだ7時前でしたし、周りにはまだ人がいましたし、焦る必要なんてないと思っていたのです。

ヨーロッパの最西端で『ゾンビ』を歌う若者


だんだん周りは暗くなり、私と友人と3人の若者以外に誰もいなくなりました。風がものすごく強くて寒くてたまりません。

帰れるのかな、とだんだん不安になり、煙草に火をつけました。

3人のうち、一人の女性が「煙草をくれないか?」と声をかけてきました。もう一人の男の人は携帯から音楽を流して、隣にいる赤毛の女性も一緒に歌いはじめました。

「あれ、この曲ってわたしも知ってる」と思わず私も友人も歌いだしました。ヨーロッパの最西端の真っ暗の中で寒さに震えながら煙草を吸って、クランベリーズの『ゾンビ』を歌う5人の若者。今考えると結構シュールな風景でした。

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Letizia Guarini「ヨーロッパの極西―ポルトガルの境界までの旅

結局デウス・エクス・マキナが登場して、このシュールな悲劇に幕を閉じました。3人の若者がロシア人で、リスボンで短期留学をしていたという。そのチューターに電話して、助けを求めたら、優しいポルトガル人の女性がリスボンから車で30分以上をかけて迎えにきてくれました。そして、違法にもかかわらず5人を車に乗せて、カスカイスの駅まで連れてくれました。

カスカイスからまた40分電車に乗って、リスボンへ向かいました。ストレスと寒さですごく疲れていましたが、同時に新しい出会いへの興奮を抑えきれず、彼らの建築の勉強のこと、私の日本留学のことや、ロシア、イタリア、ポルトガルについてなど電車の中でずっとしゃべっていました。

ようやくリスボンに到着したら、「もう別れるの?」と悲しくなりました。彼らに知り合ったばかりなのに、ずっと前から知っているような気がしていました。彼らときっと二度と会えないだろうと思いながら、それでも一生彼らを忘れないだろうと思いました。

さいごに


もしその日運転手さんが正確なバスの時間を教えてくれていたら、冷たい海で泳いでから、ゆっくりリスボンに戻って美味しい夕食を食べていたでしょう。もしその日に最後のバスを見逃していなかったら、なんでもかんでもスムーズにいって、息を呑むような絶景だけが残っていたのでしょう。

しかし、最後のバスを逃したおかげで、私にとってロカ岬には一生忘れない瞬間が存在しています。私の心には、友人の心には、そしておそらく世界のどこかにいるその3人の若者の心には、ヨーロッパの最西端の真っ暗の中で寒さに耐えながら煙草を吸って、クランベリーズの『ゾンビ』を歌う5人の風景が今でもきっと、存在しています。


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ライター: Leti

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