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「私たちはユーラシア人」ー渡辺真也がユーラシア大陸を横断して見えてきたもの

2015年08月07日 16時03分 JST | 更新 2016年08月03日 18時12分 JST

こんにちは。TRiPORTライターの赤崎えいかです。

「自分はユーラシア人」。そう感じたことはあるでしょうか?人類の起源をたどっていけば一つだと、頭ではわかっていても、常にそれを感じている人はほとんどいないと思います。現在ベルリンの大学で教鞭を取る渡辺真也さんは、ベルリンから静岡まで陸路で旅をすることで自分がユーラシア人であることを確信したそうです。どのような体験からそう感じたのか、お話を伺いました。

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筆者撮影

自分がアジア人だと気付かされた時の衝撃


ー渡辺さんには自分の国籍や人種を意識するきっかけがあったそうですが、どんなことだったのですか?

私は静岡の魚問屋で生まれ、三島由紀夫の小説が大好きな父の下で育ちました。しかし中高生くらいの年になると、日本にプライドを持ちつつもアメリカに憧れ、アジアを蔑視しがちな父の姿に疑問を感じる様になり、「ここには居たくない」という漠然とした気持ちが次第に募って行きました。

20歳の頃、バックパック旅行でアジアを陸路で周りました。一対一で人と会い、話をして友達になっていく。それを繰り返していくと、日本を中心にした狭い考え方がどんどん外れて行き、自分が世界の一部であるのを肌で感じ、次第に世界を国家的な枠組みで捉えるのは不可能だと考える様になりました。

その後アメリカのイリノイへと2000年から留学したのですが、そこでアジア人として人種差別を受けたのは衝撃でした。フラタニティという、兄弟愛を歌った学生たちの集うバーでは、飲んでるだけでビールをかけられたり、ケンカを売られたりしました。アメリカ人のグループでサッカーをしていても、白人はアジア人にパスを出さなかったりとか、黒人の女の子の手助けをすれば「お前はニガー(黒人を指す差別用語)が好きなのか」と言われて、からかわれたりしました。

それまで私は自分のことを、ただの人間、もしくは日本人だと考えていましたが、アメリカの田舎ではアジア人という人種のカテゴリーに分別されてしまい、一段下に見られていました。人間に種類があるんだ、ということを強烈に認識させられ、とてもショックでした。アメリカでアートの仕事をしていたときも、アジア人である私がヨーロッパのアートの話をすると嫌がられる、ということがありましたね。

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ポーランドのCD屋さんにて 渡辺真也さん撮影

ーアジアとユーラシアは別のものではないのでしょうか?

日本人が中国やタイに旅行する時、「アジアに行く」という言い方をしますよね。イギリス人もヨーロッパの大陸側に旅行する時に、「ヨーロッパに行く」って言うんですよ。しかし日本人から見たら「イギリス人もヨーロッパ人でしょ?」と思いますし、ヨーロッパ人から見たら「日本人もアジア人でしょ?」と思います。

歴史を紐解くと、古代ではヨーロッパとアジアは今以上に密接に繋がっていました。20歳のとき、インドでヒンズー語を少し覚えたんですが、ヒンズー語、英語、ドイツ語、そして日本語に共通点がたくさんあるのに気付いたことからも確信したんです。私が今ベルリンで研究しているドイツ人アーティストのヨーゼフ・ボイスや、韓国人アーティストのナムジュン・パイクは、ヨーロッパ(Europe)とアジア(Asia)は一つの大陸文化ユーラシア(EUR=ASIA)であると宣言して、生涯に渡る美術のコラボレーション活動を行いました。国家や人種の枠組みで苦労していた私は、ヨーロッパとアジアが一つで大陸文化であるという彼らの考えに、大変救われました。そして彼らの考えを証明すべく、ユーラシア大陸横断のリサーチ旅行を終えた今、私は日本人やアジア人というよりユーラシア人だ、と本当に感じる様になりました。

食べていたのはラーメンだった


ー渡辺さんは、実際に今住んでいるベルリンから静岡まで陸路で旅をされたそうですが、どんなことを感じましたか?

多くの経験をし、語りたいことは数え切れないほどありますが、身近な食事でもユーラシアを体感しました。クリミア・タタール料理でラグマンという、スパイシーなうどんがあるんですが、これはロシア人も知っていて、中央アジア全体で「ラグマン下さい」と言えば、どこでも食べれるものなんですね。

クリミア半島やウズベキスタンでラグマンを食べて、キルギスに入った時お店でラグマンを頼んだら、出てきたのが手打ちの中華麺だったんです。「おお!ラグマンが中華麺になった!」と震えましましたね。ラグマンというのは中国語の拉麺(ラーミエン)をトルコ風に発音したものだったんです。日本語にすればラーメン。つまり自分がずっと食べていたラグマンはラーメンだったことに気づきました。ウクライナで知り合ったウクライナ人とロシア人の夫婦が自宅に招いてくれて、ウクライナ人の奥さんがボルシチを作ってくれたのですが、そこで初めてボルシチがロシア料理ではなくウクライナ料理だと知りました。陸路で旅をしているとユーラシア食文化の流れをダイレクトに感じることができます。

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キルギスで出会った中華麺風のラグマン 渡辺真也さん撮影

ユーラシアには言語や食だけではなく、文化、宗教、神話、伝説など多くの共通点があります。それを少しでも知って欲しくて、今回のユーラシア横断旅行を映画にしようと考えました。ヨーロッパとアジアを繋げるという視点から、映画『スター・ウォーズ』でも取り入れられている神話学者ジョーゼフ・キャンベルの「英雄の旅」12章と、アジアの輪廻転生の概念である仏教の「十二縁起」を重ねた脚本を書き上げました。

現在、映画『Soul Odyssey - ユーラシアを探して』はポストプロダクションの状態にあり、不足している資金を集めています。できるだけ一般の人からの協力を得て、この映画を完成させたいと思っています。旅が好きな人はもちろん、芸術を信じる人に見て欲しいですね。人間は国や人種で分けたがりますが、境界線は人間の心の中にしか存在していないということを一緒に感じてもらえたら嬉しいです。

渡辺真也さんのサイトはこちら

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映画『Soul Odyssey - ユーラシアを探して』予告編はこちら

[渡辺真也:1980年静岡県生まれ。ニューヨーク大学大学院修士課程修了後、アートキュレーターとして国民国家に焦点を当てた国際美術展をアメリカ、スイス、ドイツ、日本などで開催。現在ベルリン工科経済大学で教鞭を取りながら、ベルリン芸術大学博士課程にて「ヨーゼフ・ボイスとナムジュン・パイクのユーラシア」をテーマに研究中。]

(聞き手・構成:赤崎えいか)

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