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映画『フリーダ・カーロの遺品−石内都、織るように』明かされる新たなフリーダの一面

2015年07月19日 14時49分 JST | 更新 2016年07月15日 18時12分 JST

こんにちは。TRiPORTライター、旅と写真でできている赤崎えいかです。

世界的に有名なメキシコの女性現代画家フリーダ・カーロ。日本ではまだ知らない人も多いかもしれませんが、「壮絶」という言葉では足りないほどの人生をおくっています。病気や事故による後遺症、数多くの恋愛など、その美貌からは想像もつかないような彼女の人生がむき出しになった強烈な絵は、一度目にすると脳裏に焼き付いて離れず、見る人の心をえぐり、感情を揺さぶり続けます。

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筆者撮影

今までは彼女の絵画や人生にスポットライトが当てられることが多かったのですが、映画『フリーダ・カーロの遺品−石内都、織るように』では、ドキュメンタリー映画監督の小谷忠典監督と、写真界のノーベル賞と言われているハッセルブラッド国際写真賞を受賞した石内都さんが新たなフリーダ・カーロを映し出してくれています。今回は小谷監督に様々な内容のインタビューをしてみました。

ー小谷監督から見て、フリーダ・カーロという人は一体どのような人でしょうか?

僕は関西出身で、奈良県にある芸術大学で油絵を専攻していたので、フリーダ・カーロの壮絶な人生については一通り授業で学びました。正直、好きなタイプの作家ではないというか、男性としては一番見たくないようなところが剥き出しに描かれていて、近寄りがたい印象がありましたね。

でもメキシコに行って実際にフリーダの遺品や絵画に触れると、イメージがガラッと変わりました。絵を見たとき、描かれているものとは対照的に、筆のタッチがとても丁寧で精密だったんです。そこで彼女はきちんと仕事として絵を描いていた人だと気が付き、画家として尊敬できました。「怖い人かな」と思っていたんですが、すごく温かさと丁寧さを持ってる女性だと思います。

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ー今回、映画『フリーダ・カーロの遺品』を作るきっかけとなったものをおしえてください

きっかけは写真家の石内都さん(以下、石内さん)の「キズアト」という写真集でした。石内さんの写真を見たとき、自分自身にも傷があるんだと気付かされ、その写真の中に自分が見えたんですね。そこから石内さんの表現に惹かれ、影響を受けてきました。ドキュメンタリー映画を作るようになって、いつか石内さんを描いてみたいという想いがあり、オファーしたとき偶然にも2週間後にフリーダを撮りに行くという話しをされたので、一緒に行くことになったのがはじまりでした。

ー撮影の場所はメキシコのフリーダが生まれて、その後死ぬまで夫のディエゴと暮らした「青い家」でしたが、実際に行かれてどうでしたか?

もともとフリーダたちが住んでいた家を美術館に変えたので、家の痕跡は随所に見られました。そのなかでも僕が一番強い印象を受けたのが「青い色」です。今まで日本でも青い色に触れてきて、青は「冷たい」とか「悲しい」といったものを固定概念として持っていたのですが、メキシコでフリーダの青い家を見たときに、とても鮮やかで、温かい青というものを初めて感じたんですね。館長さんに「この青色にはなにか意味があるんですか?」と聞いたら、メキシコでは青色は幸運を招き入れる色とのことでした。確かにそこの青は、神々しいというか、幸福な気持ちにさせてくれる色だなと感じました。もちろん、フリーダが好んであの青色にしていたようです。

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ーフリーダの遺品にはどのような特徴がありましたか?

先ほど「壮絶な人生」という言葉を使いましたが、遺品がフリーダの人生を物語っていると感じました。例えば、薬。モルヒネや鎮痛剤など、パニック障害を抑えるものがたくさんあり、フリーダの痛みが直に伝わってきましたね。遺品の中でも一番印象的だったのがメキシコの民族衣装のテワナドレスです。当時、フリーダはアメリカやヨーロッパなどに行っていたので世界各国のドレスもある中、圧倒的にテワナドレスの数が多く、それだけ彼女が好んでいたことがわかります。石内さんもクローズアップしているところなんですが、そのディテールを見ていくと、多くの修繕の跡があり、アレンジしたものも多く、とても女性的で日常を大事にしていた人なんだとわかります。遺品から今までとは違う彼女の人となりを知ることができました。

ー傷を負っていたフリーダの遺品を、「傷」シリーズを撮られている石内さんが撮り、それをまた別の傷を持っている小谷監督が撮影するという二重、三重のフィルターの中で、フリーダの傷は監督自身にどのように写ったのでしょうか?

難しい質問ですね(苦笑)。まず、傷がない人はいないと思うんですが、フリーダは自分の傷を、痛い、つらい、悲しいと言っているのではなくて、そこをきちんと表現することによって肯定してる人なんです。もっと言うと、描くことでしか自分の傷を受け止められなかったというか、描かなかったら本当に苦しくってやっていけなかった人なんだろうなと思いました。傷は生きているという証ですね。

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ーメキシコ人にとってフリーダという存在はどのようなものなのでしょうか?

フリーダはメキシコの教科書にも載っていて、子供の頃から「こういう偉大なメキシコ人がいたんだ」という教育は受けています。また映画の中でも少し出てくるのですが、幼稚園児が課外授業でフリーダの絵を見に来ていました。「こんな小さな子供があんなに激しい絵を見ていいのかな?」と思ってしまうんですけど、メキシコではひとつの教育として当然のようになっていてびっくりしましたね。

ーメキシコではフリーダの生き方、人生は、どのように捉えられているのでしょうか?

メキシコ人がみんな口を揃えて言うのが、フリーダは強く美しく生きた女性だっていうことです。あの生き方は肯定されていますね。

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ーどんな人に見て欲しいですか?

僕は本当に石内さんが好きなので、もっと石内さんを知ってもらいたいと思ってまいす。フリーダの遺品を石内さんが撮ることで今までのフリーダのイメージが大きくひっくり返されたと思います。今までのフリーダとは全く違う姿を提示したいですし、石内さんの魅力も伝えたいと思いますね。

石内さんは、死で終わらない、死で断ち切らずに次の未来や再生に繋げて行く表現をされている方だと思っています。その石内さんが撮るフリーダ・カーロの遺品への想い、映画として石内さんの眼差しにどれだけ近づけたかというのがひとつの試みだったので、それも見てもらいたいです。

後半のインタビューでは、フリーダの奥に広がっていたメキシコ各地を旅したお話を伺います。

■映画『フリーダ・カーロの遺品--石内都、織るように』公式サイトはこちら

2015年8月8日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

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■写真提供(一枚目を除く):サニー映画宣伝事務所

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*Eika Akasaki「【メキシコシティ】フリーダ・カーロ、愛憎の芸術家のミュージアム

(ライター:赤崎えいか

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