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ガイドブックから顔をあげよう―本当は誰にも教えたくないナポリ歩きのススメ

2014年05月26日 20時42分 JST | 更新 2014年07月26日 18時12分 JST

こんにちは。イタリア出身のレティです。

ナポリ【Napoli】は、イタリア南西部、ティレニア海に臨む港湾都市です。ナポリの風光明媚を表す言葉に、「ナポリを見てから死ね」という言葉があります。ナポリの風光を見てから死んでも後悔しないほど美しいという意味で、日本でいうところの、日光を見ずに結構と言うな、に当たります。

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Certosa di S.Martinoからの景色

昔はピッツァ、太陽、マンドリンというステレオタイプ、最近でいうとマフィアやゴミ問題といったマイナスイメージが強くなりつつあるナポリです。 長い間ナポリに住んでいた私からすると、ナポリほど地理的にも歴史的にも複雑な町をこのようなイメージだけで単純化しながら訪れるなんて、もったいない!

有名どころも、ナポリの現実も隠すことなく、ガイドブックに載っていないナポリの歩き方を楽しんでいただきたいと思います。

 時間をゆっくり楽しむという義務

さて、ナポリを訪れるなら、まず時間の捉え方を変えてみるのがよいでしょう

南ヨーロッパでは、時間は大変価値が高いものと考えられています。与えられた時間は貴重なものであり、その時間をゆっくり楽しむ義務が私たちにはあるーーーというわけです。

そして、おすすめは、ガイドブックを閉じること。現地のレストランでガイドブックを広げるよりも、思い切って隣りのテーブルの人に話しかけてみませんか?ナポリに限らず、その地をよく知っているのは、ガイドブックではなく、その地に住む人たちなのですから。 ではご一緒に、ナポリを歩いている気分をともに味わいましょう!

コーヒーの"おすそ分け"文化がある町

突然ですが、"Suspended coffee"という言葉をご存知でしょうか?

Suspended coffeeとはコーヒーを注文するとき二2杯分を払い、ひとつは自分が飲み、もうひとつは未決定に残すこと(コーヒーのおすそ分け)を指します。コーヒーを買う余裕を持っていない方がカフェーに入るとき、未決定のコーヒーがあると、ただでそのコーヒーを飲むことができます。

現在世界中のさまざまな国でsuspended coffeeプロジェクトが広まっていますが、元来ナポリで生まれた習慣です。ナポリの人はそれだけコーヒーと密接な関係を持っています。

(suspended coffeeプロジェクトのリンクはこちら

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カフェMexico(Garibaldi広場)

Espressoはイタリアのどこで飲んでもおいしいでしょうが、どこが一番おいしいかは別にして、とにかく場所によって味が違いまし、飲み方も違います。 ナポリでは、まず会計をレジで済ませてからカウンターの上にレシートを載せます。このレシートの上に10~20セントのチップを載せる風習があります。 忘れてはいけないのが、Espressoを飲む前に必ずお水を飲むこと。 なぜならば、Espressoの味を楽しむために口の中から他の味をすべて消さないといけないからです。 ナポリはどこのカフェーでもコップの煮沸消毒が行われているため、コップがやけどするほど熱いです。注意しましょう!

ナポリの一番おいしいコーヒーは決められませんが、Mexicoというカフェーはナポリにしかないのでナポリの本格的なespressoを飲めるといっても過言ではないでしょう。Mexicoはナポリで作られているコーヒー粉Passalacquaしか利用しないカフェーであり、そのコーヒー粉を買うこともできます。種類はいっぱいありますが、100%Arabicaは一番です。(余談ですが、新宿にもPassalacquaというカフェーがオープンしたそうです。本格的なespressoが飲めるのでしょうか?)

Napoli sotterranea 地下の町

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ナポリ地下都市

ナポリは太陽の町だと言われていますが、太陽が届かないナポリも存在します。迷路のような狭い路地、錬金術が創った石造の礼拝堂、洞窟の中に建てられた墓地、そして地下に眠る古代地下都市Napoli sotterranea(ナポリ・ソッテッラネア)。ここは何千年も前に古代ギリシャ人が神殿等を築き、その後、地下水路として19世紀まで活躍、第二次世界大戦中は防空壕として使用されました。地下40mの洞窟を歩きながら地下に埋もれている古代ギリシャ・ロ-マ劇場を見回り、不思議なタイムトラベルを体験してみませんか?

古代都市と切り離せないのが、その時代を生きた人々の弔いの地。

Cimitero delle Fontanelle (フォンタネッレ墓地)は、Trip Advisorの記念墓地のトップ10に入るほど、人々の興味を惹き付けています。 気味の悪い場所だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、この墓地はナポリの歴史と密接に関わっている場所である上に、長い間ナポリの人にとって特別な意味を持っていました。

ナポリは古代ギリシャの植民地として建設された町であり、ギリシャ人、そして古代ローマ人はナポリの丘から凝灰岩を採掘していました。元来、フォンタネッレ墓地はその採掘場の遺跡でしたが、17世紀にペストや地震などの天災による死者を葬るために使われていました。また、19世紀のコレラ疫病によって亡くなった方もここに葬られていました。

イタリア人の多くはカトリック教徒であり、国の歴史と宗教との密接な関係は古くから続いています。そして宗教と同様に迷信も古くから広まっていきました。特にナポリの人は迷信深いと言われおり、黒猫、塩、階段、ほうきなどに関わる迷信がナポリ文化では数え切れないほど存在しています。

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Fontanelle墓地

そして1960年代からナポリの人はフォンタネッレ墓地に葬られていた死者と迷信に基づく、一種の願掛けのような行動を始めました。 それは、人々は各々好みの(?!)頭蓋骨に名前を与え、奇跡が起こるようにその頭蓋骨が宿っていた魂に向かって祈りを捧げる、ということでした。そして願いが叶ったときは、それは頭蓋骨のおかげだと考えられ、その頭蓋骨を祭るように整えられた枕の上、あるいは大理石の小さな箱に置いたりしていました。

このような迷信を排除するために50年間墓地が一旦閉鎖されましたが、 2009年に再び開かれ、今日のようにたくさんの人々の興味を惹くこととなったのです。

ナポリ語の授業へ―食を通して文化を知る

ナポリピッツァは、ヨーロッパ共同体(※1)が認めるSTG(Specialita' Tradizionale Garantita)を受けており、世界で食べられる伝統のナポリピッツァの製法や味についての基準的なものを確立するまでになりました。

しかし、ナポリの食文化はピッツァに留まりません! 日本の人が毎日寿司を食べないことと同じように、ナポリの人は毎日ピッツァを食べるわけではありません。

ナポリの家庭料理を味わいたい方は、ナポリの人の家におじゃまするか、trattoria(居酒屋のようなお店)に入るようおすすめします

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Trattoria Nennella

ここで、一押しのレストランをご紹介。ナポリの大人気のtrattoria、ネンネッラ(Nennella)です。

この店ではウェイターたちがとにかく常に何か叫んだり、お客さんをからかったりしています。 なぜか突然お客さんもスタッフが立って踊り始める場面がしばしばみられますし、とにかくワインがどんどんテーブルに登場します

この店でイタリア語は一応通じますが、公用語はナポリ語です

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Nennellaのジャガイモのパスタ

ここで、ナポリ語についてご紹介しましょう。

この店もそうですが、ナポリで話されるのは、ナポリ弁ではなくて、ナポリ語です。 2014年1月にナポリ語は世界文化遺産となって、方言ではなく、国語として認められました

南イタリアには13世紀から19世紀にかけてナポリ王国が存在して、ナポリは長い間その首都でした。15世紀からスペインの支配下になったナポリ王国ではナポリ語は公用語であり、政治や文学の言語のみならず、庶民の言語でもあったわけです。

イタリア統一と共に公用語がいわゆる「イタリア語」に取って代わりましたが、ナポリ語は今日まで人々によって守り続けられた言語なのです

ちなみに、偶然に過ぎませんが、NennellaはQuartieri Spagnoli(スペイン人地区)に位置しています。おいしいものを食べながらナポリの歴史・ナポリ語も勉強できるなんて、素敵だと思いませんか?

ぜひ、一度ご賞味あれ!A presto!

ガイドブックから顔をあげよう―本当は誰にも教えたくない、ナポリ歩きのススメ

緩慢に生きるナポリへの旅

(※1)ヨーロッパにおける三つの超国家的な地域統合機構であるヨーロッパ経済共同体(EEC),ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC),およびユーラトム(ヨーロッパ原子力共同体EURATOM)の総称。

ライター:Letizia Guarini

http://blog.compathy.net/

▲編集元:TRiPORT

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