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写真家ハービー・山口に聞く「世界一の笑顔を引き出すコツ」

2015年04月23日 23時58分 JST | 更新 2015年06月22日 18時12分 JST

旅先で様々な風景の写真と共に、現地の人たちの笑顔を撮れると、それだけで旅の思い出が増えますよね。後から見返してみると、人と人との繋がりがあってこそ、旅の思い出がより色鮮やかになると感じます。

前回の写真家ハービー・山口さんのインタビューでは、旅先での予想外の出会いから世界的な写真家になった経緯について話していただきましたが、第二回では旅先で人を撮る時に世界一の笑顔を引き出すコツについて語っていただきました。

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HERBIE YAMAGUCHI OFFICIAL SITEより

ー写真を撮る時に海外と日本でどのような違いがありますか?

海外のほうが楽ですね。ツーリストとして何でも許されてしまうところがあると思うんです。日本の場合、肖像権だとか迷惑防止条例だとか...。街をスナップすることひとつでも大変で、すぐに「盗撮してるんじゃないの?」とか思われてしまうのですが、海外の場合だと、「写真撮りたいの? どうぞ、どうぞ。」という、アーティスティックライセンスを日本よりも理解してくれている人が多いです。

スナップ写真が得意じゃなくても、まだ観光客がいない田舎に行って、ご飯を食べているおばあちゃんとか、道端にいる子どもを撮るだけでも情感ある写真が撮れてしまうのも海外のよいところではあります。みんな撮られることにも慣れていないし、面白がってくれたりしますよね。しかし、その経験をしたカメラマンが日本に帰ってきてから、日本人を撮るとなると、反対に緊張して上手く撮れないことが多いように見えます。

ーハービーさんの写真を見ると、人の表情をとてもキレイに撮影されていると感じますが、どのようなコミュニケーションをとっているのでしょう?

いつでも何よりも「人の温かいところ」や、「希望」というものを撮りたいと思っています。そう思う理由は、昔、僕は病気でずっとコルセットを付けていて、初めて体育の授業に参加をしたのは高校生の時だったんですよ。幼稚園も体が弱くて行けなかったから、僕はずっといじめられっ子でした。なるべくクラスの隅っこで人の陰に隠れて、目立たないようにして、すごくみじめでした。

それもあって写真を始めたとき「人間の心がもっと優しくなったら、自分よりハンディを持っている人を含めて暮らしやすくなるんじゃないか?」と思い、見た人の心が優しくなれるような写真を撮っていくことをテーマに決めました。その気持ちを今でもずっと持ちながら撮り続けています。

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撮る時にはやはりコミュニケーションが必要で、最近のマイブームで言うと、女性を撮る時は「愛のラブレター」。男性を撮る時は「憧れのファンレター」、子どもを撮る時は「その国の未来予想図」、老人の写真は「その国の歴史」。その人たちを僕の人間讃歌、人間を褒める写真ストーリーの中の出演者としてお迎するイメージで、日々ポジティブな瞬間の写真を撮らせてもらっています。シャッターを切るたびに、その人の幸せをそっと祈ってシャッターを切ること。それが大切。そうすると、その人の本当の美しさが写ったソフトな優しい写真が撮れると感じています。

ーその「幸せを祈る」気持ちを相手に伝えるのでしょうか?

直接伝えるとキザになるから、その場では言わないですね。だけど尊重していることは示します。そうすると、その気持ちはちゃんと伝わって「こいつに撮らせてもいいか」って思ってくれるのが伝わってきます。一枚一枚、幸せを願って「いい表情ですね」って言いながら写真を撮ると、どんどん良い表情を出してきてくれるんです。

僕が写真を撮るとみんなビッグになっていくんですよ(笑)。沢山のアーティストを撮らせて頂きましたが、一部では「運気が上がると」言われたことがあります。きっと写真を撮られることでポジティブな気持ちになれるんだと思うんですよ。成功の秘訣は、当然僕の写真だけではないですが(笑)。そういえば、これは偶然なんだけど「病気で最後かもしれないから写真を撮ってくれ」って言われて撮ったらその人の手術が成功して病気も治った。僕にそんな魔法のような治癒能力はないけど、あの人が撮ると「運気が上がる」、「いい方向にいく」ということを言われるのはとても嬉しいです。

−海外でも同じスタンスで写真を撮られているんですか?

流暢な英語でなくても「ビューティフル!」「グレート!」「グッド!」「サンキュー」くらいでもいいと思います。そういう気持ちはちゃんと伝わります。ロンドンに住んでいた頃、パンクのミュージシャンのジョー・スロラマーさんが、たまたま地下鉄で向かいに乗っていたことがありました。「写真撮りたいな。でもプライベートなところを撮ったら嫌がられるよな。止めといたほうがいいよな」って思ったからカメラを一旦はバッグにしまいまったのですが、でも考えてみたら、「あと10年ロンドンに住んでいても、こんなプライベートな場面で会えるチャンスは二度とないかもしれない。それなら聞くだけ聞いてみればいいんじゃないかな?」って思って聞いてみたら、意外にニコッと笑ってくれた。それで4、5枚撮らせてもらえました。彼が降り際に「君、撮りたいものは全部撮れ。それがパンクだぞ」って言ってくれた。それが本当に響きました。

迷惑さえかけなければ遠慮しなくたっていいんですよ。撮りたいもをシンプルに妥協せずに撮る。ちょっとの一歩、声をかける勇気を持つことが大事です。

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HERBIE YAMAGUCHI OFFICIAL SITEより

ー我々が会社として心の国境を失くすことを目指しているなかで、ハービーさんの「人が人を好きになる写真」を見て近いものを感じているのですが、人と人の国境を超えていくことに必要なものは何だと思いますか?

謙虚さと自分の意見を持つこと、そしてユーモアのセンスがあることが大切だと思っています。 自分の立場を振りかざして人を見下すんじゃなくて、謙虚さを忘れないこと。僕は本当に心から人が好きなんですよ。僕には孤独と絶望感しかなかった幼少時代があったから、人との出会いを求めているんじゃないかなと思います。友達なんていなかったし、修学旅行で誰も班に入れてくれない、なんてことが何年もあったんです。

そういった時代に欲しかったものは、甘いお菓子や、よくできた飛行機の模型なんかではなく、僕に向けられる笑顔だったり、知らない人とでも友達になれるチャンスが欲しかったんです。それが大人になった今でもトラウマになっているのかもと思うことがあります。街中でも、僕がその人たちの幸せを祈って、その人たちが笑顔で写真に写ってくれると、そこに僕の居場所があるんじゃないかと感じています。だから基本的には笑顔が好きだし、人が好き。謙虚さや分別を忘れないようにしたいです。

ー言葉とか手先のテクニックじゃなくて、心で伝わるものを持っていないといけないですね。

旅での予想外の出会いや、自分に向けられた言葉たちは教科書には載っていないし、その感覚は学校では学ぶことができないことです。そういった言葉や出会いを、旅先で吸収することができたなら、ただの観光とは全く違う人生の旅ができる。そして、それが自分を確立していくものだということが、旅に出れば実際にわかると思います。

就活失敗から旅に出た世界的写真家ハービー・山口の人生とは

ハービー・山口 オフィシャルサイト

*現在行われているハービーさんの写真展

London Chasing The Dream」(2015年4月1日~2015年5月10日 PRETTY GREEN 青山本店)

[ハービー・山口:1950年、東京都出身。中学2年生で写真部に入る。大学卒業後の1973年にロンドンに渡り10年間を過ごす。パンクロックやニューウエーブのムーブメントに遭遇し、デビュー前のボーイ・ジョージとルームシェアをするなど、ロンドンの最もエキサイティングだった時代を体験する。そうした中で撮影された、生きたロンドンの写真が高く評価された。

帰国後も福山雅治など、国内アーティストとのコラボレーションをしながら、常に市井の人々にカメラを向け続けている。]

(インタビュアー:堀江健太郎 撮影:赤崎えいか)

Photo by: HERBIE YAMAGUCHI OFFICIAL SITE


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