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Traveler's Express 本間勇輝さん ―現地密着型の社会貢献で巡る旅―

2014年09月10日 00時40分 JST | 更新 2014年11月08日 19時12分 JST

旅に出たい、なにか人と違うことをしたい。そんなことをぼんやりと思い描きながら、なかなか実行に移せない人に、本間勇輝さんは「とりあえずインドへ行ってみたら」と提案します。「ソーシャルトラベル 旅ときどき社会貢献。」の著者の本間さんは、御夫婦で世界一周をされました。その方法は、旅先で居候先を探し、現地の社会問題を踏まえたプロジェクトを企画・実行し、課題解決を目指すというもの。

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「ソーシャルトラベル」をおこなった、本間勇輝さん

現地の生活に入り込み、本当に共感したものや好きだと思った人のお手伝いをするスタイルは、帰国後も変わらず、現在東北復興支援活動もされています。今回は、そんな一風変わったスタイルで旅をされた本間さんにお話を伺いました。

東北復興新聞

思いつきが現実に

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本間さんの奥様の美和さん

――本間さんはご夫婦で世界一周をされたそうですが、お二人共もともと旅好きだったんですか。

僕も嫁もそんなにヘビーな旅人ではなかったです。僕は、初のひとり旅は1ヶ月タイに滞在したくらいかな。彼女も僕も留学経験はあり、海外も好きだったけれど自分たちを旅人だと思ったことはなかったですね。

――なぜ二人で世界一周という決断に及んだのでしょうか。

会社を二人共辞める時に、ジャマイカとか行ってみたいねっていう飲み屋トークから、だんだん現実味を帯びて実行しました。

最初に旅そのものへ興味がわいたのは、中学からの仲間のメールです。彼は旅の最中に出会った世界中の友達にメールを送っていて、それが時々僕のところにも届いていたんです。下手くそな英語だけど、「砂漠がピンク色なんだぜ!!」ってビックリマークを100個くらいつけて送ってくるメールを読んでいたら、「旅って何?」と衝撃を受けて。旅行と何が違うんだろうと疑問に思って好奇心が掻き立てられましたね。

――奥様と一緒にずっと旅をすると、すれ違うことなどもあるのではないですか。

喧嘩は全然しなかったですね。むしろ、帰国後に一緒に仕事を始めてから喧嘩が増えました。笑

僕らの場合、旅をしながら社会貢献できるようなプロジェクトを企画・実行するソーシャルトラベルをしていたので、夫婦というより仕事の相方という感じでした。二人共得意分野が違って、彼女はクリエイティブタイプ、僕はロジックを固めて計算式を組み立てることのほうが得意でした。パートナーとして仕事を一緒にやるという感覚だったから、楽しかったですね。

見失いかけた、旅の自由さ

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――旅の途中、お二人は別れていらっしゃいましたが、それはプロジェクトの方向性の違いが生まれたからなのでしょうか。

南米に入ってから、空回りが続いた時期がありました。ソーシャルトラベルをやっていると、知らないうちに「普通の旅人じゃないから、何かやんなきゃ」と鼻息荒くなってしまっていたんです。その時、プロジェクトを進める上で現地へ飛び込むことを大事にしたかったのに、二人で依存し合っていたと気づいて、バラバラになることに決めました。一人になると、旅はもっとピュアに楽しんでいいよなと思い出せたんです。

――目的達成が大事なプロジェクトベースの「ソーシャルトラベル」と、ピュアに旅をするのとではどう違いますか。

どっちがいい悪いというのは無く「こう在らなきゃ」と自分で決めたことが問題だったと思います。旅は本来自由なものだけれど、自分で自分を縛って空回りしたのだと思います。もともと、プロジェクトをこなすことが目的だったわけではありません。例えば、ネパールで出会ったタラという女性とプロジェクトをやったんですが、もともと僕たちが彼女に惚れ込んで「タラのために何かしたいね」という思いが動機だったんです。

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ネパールのタラさん。彼女お店の手作りの雑貨を本間さんたちのブログで販売するプロジェクトをおこなった。

プロジェクトを10個やって、うまくいくのは1個あるかないかくらいです。でも、現地に飛び込んだからこそ得られる体験を大事にしたい。若い人にアドバイスを求められたとき「テーマを持つのはいいけど、それにがんじがらめになるなよ」と伝えています。

「気にしない」心地よさ

僕、ブッダガヤに縁があって、毎年通っているんですが仲の良いインド人がいるんです。彼に「自分にも相手にも期待はするな」と諭されたことがありました。彼の言葉からもそうですが、インドでは「気にしない」ということの大切さに気づかされましたね。

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――「気にしない」というのは?

インドって雑多でごちゃごちゃしていて、インド人の英語も何言ってるかわかんないじゃないですか。僕もそんなにペラペラじゃないけれど、お互い構わず喋るのがすごく気持ちいいと感じたんです。日本であれば目が合うと「通じてるかな?」って気になるじゃないですか。その感覚から逃れられたというか。

――帰国後も、変わらず「気にしない」状態を保ち続けていらっしゃいますか。

そうですね。自分で(NPO法人を)やっているということもあり、気にしていられないし気にしないでやっていく方が、大概うまくいきます。この感覚をわかってる人もいるし、全員には分かってもらえなくてもいいっていう気持ちもあります。

何者でもない自分に気づくことこそ旅の価値

――旅を通して、今までは気になっていたことも良い意味で流せるようになったんですね。

そうですね。

旅って異質のものを見に行く側面が殆どだと思うんですが、半年くらい旅を続けていると、麻痺してきて異なるものを見る旅に飽きてくるんです。逆に、自分に似たものに目が行くようになる。自分の知っているものと周囲が同質化することがおもしろくなっていくんですが、その過程で日本では色々なものをまとっていたと気づきました。

同質のものを知るということは、肌の色とか外見ではなくて、芯に近いところを探る作業だと思いますが、いろんな肩書きから開放されて、誰も自分のことを知らない社会と隔絶された環境に身を置くと、自分自身のコアな部分と向き合う会話しかできなくなって。旅の価値は、良いインプットをもらったということより、何者でもない自分になれたというところにあると思います。

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でも、社会のしがらみを脱ぎ捨てると、同時にまとっていたものの価値にも気づくんです。そしてだんだん何者でもない自分が気持ち悪くなってくる。僕が属する社会のために、何か価値を提供したいと感じるようになりました。

――旅の最中は、どこにも属する社会がないっていうのはすごく分かります。会う人会う人にとって、わたしは何者でもないけれど、どこの国にいっても必ず社会はある。そしてわたしたちは、その一員にはなれなくて親しくなるほどもどかしい気持ちにもなります。

そうそう。あくまで客としては参加できるんだけど、そこは超えられない。あんなにウザったかった社会が愛おしくなってくるんですよ。現地の人の家に泊めてもらったり、一緒に仕事をする環境だったから、尚更そう感じたのかもしれないです。

一期一会の日常にこそ驚きと感動がつまっている

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――実際に一緒に日々を過ごしてみて、日本では絶対ないなあという生活様式はありましたか?

そうだなあ......。イラン人ってピクニック大好きなんです。市内の公園や、いたるところに噴水があるんですが、夜になるとその周辺でピクニックしているんです。家の中でもします、床にシート敷いて。

あと、アルゼンチンだと牛肉の「パリージャ」っていう焼肉が有名なんですけど、肉を切り分けてくれる人をアサドールと呼ぶんです。アサドールが肉を切り分けてくれたあと、乾杯の代わりに挨拶があって、作法が決まっているんです。

それから、コロンビアでは、夏の夜に住宅街の中を歩いていたら、現地の人たちがラジカセを出してサルサダンスを踊っていたこともありました。生活に入って居候させてもらうから見えてくる景色というのは面白かったです。

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――そういう日常が一番印象に残りますね。世界遺産や雄大な景色もいいんですが、行けば誰でも見られるじゃないですか。でも日常の生活風景は、見られるかわからない。

そういう点で、僕らは恵まれていました。まったくアテがない南米では、スペイン語圏でプロジェクトもできないし、今まで倦厭していたツアーに参加することにしたんです。マチュピチュを見に行くツアーで、そこで出会った人に片っ端から話しかけて居候先を何人か確保したりしました。

――日本では自由な旅のスタイルに憧れる一方で、実行できない人も多いです。行ける人と行けない人との違いは何だと思いますか?

若い子の話も聞きながら思うのは、「まず行ってみなさい」って背中を押してくれる人がいないのだと思います。最初はみんな若いし何も持っていないし、やりたいことなんて分かるはずない。だから僕はそういう子に、半分冗談半分本気で「いいから今週末インド行け」って言いますね。インドに行けば「なんて細かいことを気にしていたんだろう」って気づけるから。

社会のしがらみから飛び出して旅に出るのは、実際ドロップアウトですし、遊んでると思われることもある。だけど、価値がきちんと可視化できれば、もうすこし旅をしようと思える人も増えるのではないかと思います。

※写真はブログ「ひげとボイン」よりお借りしました。

[本間勇輝:1978年12月生まれ。東京都出身。2009年12月から2011年10月まで奥様の美和さんと世界一周。帰国後、NPO法人HUG創業、東北復興関係者のための業界紙「東北復興新聞」の発行等行う]

とりあえず今週末インドへ行こう、と思った方はこちら

■Yu Makino「最高に、ちょうどいい、インド(二人旅編)

■Shino Ichimiya「ラダック - 乾いた大地と蒼い空とシャンティ

■Toyo Serizawa「神秘の国インド16人旅 ~グラマラスな超大作編:*:・( ̄∀ ̄)・:*:♡笑~ 仲間と作り上げた思い出17日間

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ライター:立花実咲

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