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理想の教師になりたい大学生が世界一周の旅に出た理由(前編)

2015年06月21日 23時49分 JST | 更新 2016年06月17日 18時12分 JST

TRiPORTライターの岡昌之です。現在、世界が注目しているグリーンスクールという学校に暮らしています。ここへの関心度は日本でも上がってきているようで、今では毎週のように日本人訪問者がやって来るようになりました。

今回紹介する"ひらしん"こと平岡慎也さんもその一人。理想の教師になりたくて大学を一年間休学し、世界一周の旅の途中にグリーンスクールへ立ち寄った彼に「教育をめぐる旅」について熱く語ってもらいました。

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筆者撮影

彼が旅に出る理由

"ひらしん"は立命館大学情報理工学部3回生(休学中)。卒業後に中学校の数学教師になるため、一年かけての世界一周の旅に出ています。教職を目指す学生、しかも理系男子が一年間休学してまで世界一周の旅に出るというのは、ちょっと珍しいかもしれません。

なぜ旅に出たの?

理想の教育を考えたいからですっ!(きっぱり)

でも僕にはその理想がわからない(笑)。自分が体験した日本の教育しか知らない僕は、それの「何が優れていて、何が足りないのか」がわかりません。そこで理想を考える一つのヒントは、他国の教育と比較することだと考えました。

「それならまずは世界を知らなければ!」と思ったので、世界中の学校へ行って先生と話し、生徒と話し、できれば教壇にも立って、先進的だと言われている教育を身をもって学びたいと思いました。だから世界一周しながら学校をめぐる旅をしています。

なぜ教育にそこまで興味を持ったの?

もともと教育自体には、漠然と興味がありました。その想いが明確になったのは、実は大学2回生になったころ、鬱になったからなんです。バイトでも、所属している団体の運営でも、怒られて、何もかもが上手くいかなくて...。そんなときにある歌の「愛だけがあってもダレヒトリマモレヤシナイ」という言葉に出会いました。無力感に負けていた僕の心にこの言葉が響いたと同時に、ほかの人には僕みたいに落ち込むような人になってほしくないと強く思うようになりました。

「想いも大切だけど、それを実現させるためには力が必要なんだ!」「その力を育み、意味付けていくのは、教育なんだ!」「だから僕は、その力をサポートする先生になろう!」というわけで、最も人と関わり、最も人に影響を与える教育という世界に飛び込んでみたくなったんです。

海外旅行レベル1、所持金80Gのひらしん、冒険の旅に出る

教育への熱い想いを語る"ひらしん"ですが、その最初の一歩には苦労したそうです。そもそも「想い」だけが空回りして、肝心の「力」が不足していたために"ひらしん"は鬱になったのだとか。しかし、引きこもりがちだったときにたまたまフェイスブックで見かけた「タダで世界一周したいやつ挙手!」という投稿に何気なくコメントしたことで、状況は一変します。

"世界一周の旅"って言うのは簡単だけど、結構ハードル高いですよね?

はい、しかもこの世界一周の旅が初めての海外一人旅なんですよ! フェイスブック投稿にコメントしたことで、TABIPPOが企画する「世界一周が実現するコンテスト」というプレゼン大会へ参加することになりました。海外に一人で行ったことすらないのに(笑)。でも『世界中の学校で先生になる旅』という企画書を出してみたら、あれよあれよと審査を通過してしまい、審査の一つの WEB投票でも家族や知人たちが僕のことをTwitterで拡散してくれて、なんと決勝まで進むことができました。2400人の大観衆の前での人生初のプレゼンは忘れもしません。

でも結果は準優勝...。優勝景品である世界一周航空券は手に入りませんでした。でも、やっぱり行きたい。プレゼンの練習も含め1000回以上も「世界一周」と口にしていたら、もう自分自身を止められなくなっていました。ここまで応援してくれた人たちのためにも、困難な状況にも負けない「力」を生徒たちに教えられる先生になるためにも、どうしても行かなければならない。世界をこの目で見なければいけない。そう思ってバイトで貯めた全財産80万円と両親からの助けを元手に、世界の教育をめぐる旅に出ました。

ひらしん、教育先進国フィンランドへ

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Photo credit: Shinya Hiraoka「教育水準世界一!?フィンランドの学校見学

なぜフィンランドを出発点に選んだの?

世界で最先端の教育を見たかったからです! OECDが加盟国の15歳を対象に行う学習到達度テストPISAで、常にフィンランドは上位にランクインしています。その理由をどうしてもこの目で確かめたくて選びました。先生体験をしたのはヘルシンキの西にある古都トゥルクの公立校です。6年生の地理の時間で僕の出身地である京都のことを教えたりしました。生徒たちは、伏見稲荷に一番興味をもっていましたね。

実際のフィンランドの教育はどうだった?

はい、やはり素晴らしいところがたくさんありました! 森と湖の国と言われるだけあって野外での授業も多く、生活と学びが一体化していました。何にでも挑戦させますし、何でも自分たちで作ります。そして子供たちの英語力がビックリするくらい高い!

ICT教育(コンピュータやインターネットに関連する情報通信技術を取り入れた教育)も盛んで、生徒たちはiPadを当たり前のように操ります。クラスは十数名の少人数で、僕が参加したクラスでは机を四角に並べていました。クラス全員の顔が見えるほうがいいと生徒が提案したからだそうです。

あちらの先生はどう?

とても魅力的な人たちばかりです! 朝8時から学校が始まり、午後3時くらいには帰宅し始めます。週末はハイキングに出かけ、サウナの後は凍った湖に飛び込みます(笑)。丸々2ヵ月もらえる夏休みは、みんな海外旅行をするそうです。そこでいろんな人と出会い、いろんなことを体験してクラスに帰ってきます。授業や時間割もフレキシブルで、生徒にとって最高のタイミングであるかを重要視していました。

すべてが期待通り?

うーん...。「はい」というか「いいえ」というか...(笑)。というのも、日本にいる時はフィンランド教育を理想とする話ばかりを耳にしていました。でも実際に現地の学校に入ってみて、そうでない事実もたくさん知ることができたんです。宿題は日本の学校以上の量だし、もちろん「いじめ」もあります。でも、ある意味それに安心しました。「世の中、うまい話ばかりじゃないな」って。

そうそう、日本でフィンランドの教育を語る人は、ちょっと都合のいいところだけを切り取りすぎているよね。フィンランドの教育って「合理性」と「非合理性」が表裏一体になっていて、日本人が好きな先進的な学校教育だけでなく、危険なことやバカバカしいこと、クレイジーなことをどんどん子供たちにやらせる文化もあったりする。いや、大人自身がやりたいからかな(笑)。例えばフィンランドの子供たちに絶大な人気を誇るTHE DUDESONS(※)とか・・・

そうデュードソンズ! なんで知ってるんですか! 実は最初に小学校へ行って「フィンランドに興味があって来ました」と言ったら、「じゃあ、デュードソンズ知ってんの?」と生徒に突っ込まれました(笑)。確かに先進的な英語教育やICT教育、創造性を伸ばす「個」を重視した教育の背景には、そういう「非合理性」を貴ぶ文化があるんだと感じました。すっごいハイテク教育なのに「俺たち全裸で無人島でも暮らせるよ」みたいな。そういうのをひっくるめて、魅力的な教育になっているんだと思います。

THE DUDESONS:フィンランドが誇る4人組の国民的スター。危険とバカバカしさをとことん追求する彼らの生き様は、フィンランド魂の神髄ともいえる。国の「いじめ撲滅キャンペーン」の顔として全国の学校を訪問。エクストリーム系教育事業も展開中。

[平岡慎也 通称ひらしん

1993年生6月15日京都市伏見区生まれ、立命館大学情報理工学部3回生(休学中)。高校卒業時に「愛し合おう、旅に出よう」(高橋歩:著)を読み感銘を受ける。

2014年wizTABIPPO「世界一周コンテスト」に出場し、450人のエントリーの中から準優勝。同年10月より「世界中の学校で先生になる旅」というテーマで、世界一周をスタート。趣味、オカリナ。

『世界中の学校で先生になる旅』ひらしんブログはこちら]

日本とアメリカの教育の違いから社会に与える影響を考える

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*Shinya Hiraoka「教育水準世界一!?フィンランドの学校見学

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