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[後編]「恋する旅女、世界をゆく―29歳、会社を辞めて旅に出た」小林希さん - 旅の心得とこれからの計画

2014年11月10日 18時15分 JST | 更新 2015年01月09日 19時12分 JST

旅好きの私が本屋をぶらついていて、たまたま目に留まった一冊。

恋する旅女、世界をゆく―29歳、会社を辞めて旅に出た」(幻冬舎文庫)。

29歳で会社を辞め1年間世界放浪の旅に出た、小林希さんの著書です。まずその1年間の旅のうち、アジアを旅した3ヶ月の模様が描かれています。「旅は人生そのもの」という小林さんの「30歳を前に決意した、ひとりの女性の挑戦記」です。

前編では、小林さんが29歳で旅に出た理由や、1年間の旅の前と後で変わった点、旅の間で考えていた「孤独観」などについてじっくり伺いました。後編では、これまでもこれからも旅を続けていく小林さんによる「旅の心得」「オススメの街」、そして今後の計画について伺います。

「書く」ことは、旅の意味をいっそう深めてくれる大切な作業

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建築家オスカー・ニーマイヤーによるブラジルの劇場/写真提供:小林希さん

― ここからは旅中のお話を聞かせてください。本の中では、旅をしている間の心境の描写がとても細やかですよね。旅にいる間からすでに文章は書き溜めていたのでしょうか。

アジアを回っている間毎日日記を書いていました。バスや列車の移動中にも書いていたんです。本の執筆にはとても役立ちました。それとは別に、1年間の旅が終わる最後にインドに行きたくて、ポンディシェリーという街にこもって旅のまとめを書き上げました。すでに、日記としてではなくて紀行文として。その中には(出版された本に含まれる)アジアを3ヶ月周った以降の話も含まれています。

帰国後に、それを(出版元となった)幻冬舎の方に読んでもらいましたが、結局その原稿をもとに全てを書き直すことになりました。まずは、アジアを旅した3ヶ月だけに絞って書こうと言われて。

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プシュカル(インド)にて物思いにふける"旅女"/写真提供:小林希さん

― 旅の経験を「書く」ことに対しては、どのようにお考えですか。

書きながら過去を再び旅する幸福感がある中で、自分のために旅を消化させていく作業です。消化、というよりは、旅の意味をいっそう深めてくれますね。液体が固体になる、パレット上のいろんな色が絵になって描かれていくというような感覚です。私にとっては書くことでようやく自分の旅ができあがっていくのかもしれません。

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マチュピチュ(ペルー)へ向かう列車のなかで、眠気と戦いながら原稿に向かう/写真提供:小林希さん

ただ、旅の間に日がな頻繁にSNSやブログを更新することはないです。もちろんネット上の情報で役に立つものもたくさんありますが、その土地の人に聞けばある程度のことは分かりますし、現地の人と話すチャンスがあるのにパソコンに向かい続けるのは勿体ない!と思っています。

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カッチ地方(インド)の宿の中でスケッチブックに絵を描いてみる/写真提供:小林希さん

― 旅の経験が豊富ということで、パッキングなどもこだわりはありますか。

とにかく重いのが嫌で、1ミリグラムでも軽くするというのが私の中での戦いなんです。だから、自分がどうしても持っていきたいもの以外は入れないです。洋服も最小限持っていって現地で調達したり、古くなったものを捨てたりあげていました。

― 確かに、本の中でもよく現地で服を買っている印象があります!

旅は苦行ではないので、楽しくないと!と思っています。だから、旅先でお洒落や贅沢も時として必要なんです。例えばヨーロッパで、現地で友達になった日本人同士で「みんなでパーティに行こう!」となった時に、ひとりアジアな格好でいるのも嫌じゃないですか(笑)。そういう時は、現地で全身コーディネートのため浮き立って買い物してしまいます。ハロウィンや、リオのカーニバルの時も現地で揃えました。

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カッチ地方(インド)の村で、民芸衣装に首ったけな"旅女"/写真提供:小林希さん

"旅女"が目にしてきた世界の景色

― これまで行った国や街の中で、印象に残っているところはありますか。

何を見たいかにもよりますが、例えば人間の躍動感とか、人の良い部分も悪い部分も集約したものを街として見るなら、インドだと思います。芸術ならパリだと思っていましたが、プラハやウィーンでの音楽が予想外に素晴らしくてとても印象に残りました。街を歩いているだけで常に音楽に触れることができるということが衝撃で、音から旅の記憶が思い出されるくらい、中東欧はアンテナが震えっぱなしでした。

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プラハ(チェコ)の夕暮れ/写真提供:小林希さん

大自然を感じたり、自然の造形美に触れるなら、砂漠もオススメです。サハラ砂漠だとモロッコが有名ですが、チュニジアの南部の奥地も圧巻の光景です。同じサハラ砂漠でも、モロッコは砂が赤っぽくて、チュニジアは黄色っぽいんですよ。遺跡だったらアジアの三大遺跡、バカン、アンコールワット、ボロブドールは荘厳です。

住んでみたいと思ったのは、アルゼンチン。ブエノスアイレスは南米のパリと言われるぐらい街並みも綺麗で、なによりタンゴが官能的でうっとり。踊りを習ってみたいと妄想したら、住みたくなりました(笑)。治安は悪いですが。アルゼンチンのパタゴニアの大自然(特に青色の氷河)も素晴らしいし、北部に行けばネイティヴの先住民の文化もあって、また違った装いがある面白い国です。

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ブエノスアイレス(アルゼンチン)/写真提供:小林希さん

― 本の中で描かれていたアジアの旅のあとは、どんな旅や生活をされているのですか。

あの旅は2012年1年間の旅の最初の3ヶ月の話でした。そのあとはフランス、チュニジアにそれぞれ3ヶ月ほどいながら、ちょこちょことよその国へ行っていました。帰国後は半年ほど働き、また旅に。その時はバルカン半島(中東欧や旧ユーゴスラビア)を4ヶ月位かけて回って、南米へも3ヶ月。今年の春先に帰ってきてからはしばらく日本にいますね。

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ドイツの建築家ミース・ファン・デル・ローエの代表作 トゥーゲントハット邸(チェコ)/写真提供:小林希さん

― 日本では「島プロジェクト」という活動もなさっていますね。

私、建物が好きなんです。色んな国を旅する中で建物って海外の方が魅力的だな、街並みが綺麗だなと思っていて、街の中で色んな出会いもありました。仲良くなった方の家に泊めてもらったりとか、おいしいご飯を食べさせてもらったりとか、日本では出来ないようなことを海外に求めていました。

ところが、ネコの写真の撮影をきっかけに初めて瀬戸内海に行ったら「なんと見事な家並み」と思ったんです。ちょっとした遺跡のような家々や、自給自足の原風景のようなものがあって、これを知らないのは勿体ないと思いました。

これらの古民家が100年、200年経ってもシロアリがつかないくらい立派なのですが、過疎化で空き家も多いんです。そうして屋根が崩れてきたり、朽ちていく中で自然に溶け込んでいく。わらや土や石、木など家が全て自然のもので出来ているので、空き家になってもその土地から新たに木が生えてきたりする様子は、とても美しいんです。

そういった姿に感動して、でも使える家は使えるように残していきたいと思った時に、讃岐広島という300人くらいの島にある、26人くらいしかいない茂浦という集落に、自分たちの島を心配している方々がいたんですね。ならば古民家を使えるようにみんなで頑張って再生しませんか、人がここに来るようになるかもしれないですよと話をして古民家の再生に関わっています。みんなで一緒に畳を上げたりするのは楽しいですよ。とはいっても、この島プロジェクトは仕事ではありません。現在、ほぼ9割方古民家も使えるようになったので、後は島のみなさんが中心となってどうするか考えていかれると思います。私は必要な時に、できるだけをお手伝いするつもりです。

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30年人の住んでいなかった古民家を皆でお掃除や修理/写真提供:小林希さん

これからも「旅」と、「旅」を軸にした表現は続いてゆく

― お仕事としては、今後どういった計画がありますか。

有り難いことに『恋する旅女、世界をゆく』の第2弾を企画中です。さらに来年1月には人気ブロガー・カータンさんとの台湾本、そして3月〜4月にはネコの本も出版させていただく予定です。

台湾本は、『地球の歩き方』を出しているダイヤモンド・ビッグ社で海外旅行のコミックエッセイを出します。そもそも、自称・台湾親善大使のカータンに「あなた、世界一周していて、台湾に魅力を感じないなんてどういうこと?」と攻められ、カータンに台湾の魅力をあれこれと教えてもらいながら旅をしました。いやあ、久しぶりの女ふたり旅、それもアラサー&アラフィフで和気あいあい......というか、ハチャメチャです(笑)。正直、詳しい情報はガイドブックをご覧いただき、このコミックエッセイでは台湾でこんなに楽しく過ごせる!というシミュレーションをして頂ければと思います。

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台湾本の取材中。台北にてカータンさんと/写真提供:小林希さん

一つは、これまで撮りためた世界の美しい街並みとネコの写真本。別に、これまで撮りためた日本の島ネコの写真本も企画しており、ネコと暮らしながら島で生きる女性方の心強くあたたかい人生の話を取材中です。私の生き方や表現の格には「旅」が必ずあるので、これらのネコの本も「旅とネコ」をテーマにするつもりでいます。

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カッパドキア(トルコ)にて"子猫と旅女"/写真提供:小林希さん

― もちろん、その合間を縫って旅に出る予定もあるんですよね?

行きますよ! 直近でイタリア、年末年始は中米のメキシコ、キューバとジャマイカに1ヶ月ほど行こうと思っています。また素敵で面白い旅人たちと出会えることを楽しみにしているところです!

小林希(こばやし・のぞみ)
1982年生まれ、東京都出身。立教大学卒業後、サイバーエージェントに入社。アメーバブックス新社に出向し、多くの書籍を編集した後、2011年12月27日に退職。その日の夜に、一眼レフカメラとバックパックを背負い世界一人旅に出る。
「人生は旅とともにある」「旅は人生そのもの」が自分の大切な生き方。旅はスタンプラリー的ではなく、ゆっくり、じっくり、猫と戯れながらがモットー。著書『恋する旅女、世界をゆくー29歳で会社を辞めて旅に出た』(幻冬舎)

Web連載「恋する旅女、世界をゆく〜世界中に友達1000人できるかな」(幻冬舎PLUS)

Web連載「にゃんトラベル」(にゃんくらす)

写真ブログ「地球に恋する

個人ブログ「のんトラベル――恋する旅女、世界をゆく

聞き手・構成:市來孝人


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ライター: Takato Ichiki

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