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ヒラリー落選をアメリカ最大の女性活躍推進団体はどうみたか
意思決定に影響を及ぼした「アンコンシャス・バイアス」

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日本でも多くの人々にとって衝撃的な結果となった米国の大統領選を、私は、米国に本部を置き、職場のインクルージョンを通じて女性のキャリア推進をグローバルに支援してきた組織、カタリストの一員として、両候補の指名の折から一貫して注目してきた。

ヒラリー・クリントン氏が大統領候選を戦う候補者として指名された際、カタリストでは、その歴史的意義を重く見てステートメントを出した。

日本から見るとダイバーシティ先進国であるように見られる米国で、大統領候補者として女性が主要政党からの指名を勝ち取ったのは、45回目にして初めてであったのだ。米国においても、上院下院の議員において女性が占める割合はいまだ約20%に過ぎない。その米国で初の女性大統領が誕生する可能性が生まれたということで、誇りに満ちたステートメントを出したのだ。

選挙当日、私はキャロライン・ケネディ駐日米国大使公邸で、他の多くの招待客と一緒にニュース速報を見守っていた。ケネディ大使は日本駐在期間中、女性のキャリア推進を支援する様々なイベントに出席するなど、自らロールモデルとしてふるまってきた。そのためもあってか、選挙当日の大使公邸への招待客には、私も含め、日本及び米国で女性のキャリア推進のために活動を行ってきた官民のリーダーともいうべき人々が多くおり、クリントン氏の勝利による米国初の女性大統領の誕生を待つばかりといったような暗黙の雰囲気が漂っていた。

選挙結果に触れた米国の同僚の様子は、茫然自失としか表現のしようがない。その失望感は、初の女性大統領の誕生が見られなかったということに留まらない。最も頂点に近いガラスの天井が破られることはなかったということ、あらゆる差別を克服しフェアな社会の実現を望んできたのに対して、それを否定されるような結果を得たことに、失望したのだ。

私の友人の一人が、大統領選直後に言った言葉がある。「もしクリントン氏が男性だったら、それでも選挙の結果は変わらなかっただろうか。もしトランプ氏が女性だったら、選挙を戦った際の彼の言動は、それでも勝利に結びついただろうか。」私は一瞬身震いがした。

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)-人の意識の支配の及ばないところで働き、個人や集団に対しての「見方」を私たちに植えつけ、そして意思決定に影響を及ぼす。人が本質的に持つリーダーとしての資質とは必ずしも関係なく、見た目や自分が理解できる範囲での人となり、性別や社会的属性などによって、私たちはその人に対する期待の持ち方や評価を決めてしまいがちである。

カタリストの調査によると、リスクの高い未知の仕事を任せようとする際、他の諸条件を同一にしてみても女性より男性の方が信任を得る割合が高いという。また、女性は主に過去の実績に基づいて評価されるのに対し、男性は将来に向けたポテンシャルが評価に含まれやすいという調査結果もある。後者については、例えば、アメリカでMBAを取得した方を対象にした調査で、男性は転職をして約13,000USドル報酬が上がるのに対し、女性は転職した人としない人との間で報酬の伸びに差は見られなかったというデータがあるほどである。
The Myth Of The Ideal Worker: Does Doing All The Right Things Really Get Women Ahead?

アンコンシャス・バイアスは、かくして女性の能力の開花を妨げ、リーダー層へと続く人材パイプライン構築に影響を与えてきた。今回のヒラリー氏の敗北、トランプ氏の勝利に、そうしたアンコンシャス・バイアスがどれほど働いていたのかどうかは知る由もないが、翻って、日本の社会、企業や組織における女性の活躍を推進していく上でも、このバイアス(「アンコンシャス」ではない場合もあるので、あえて「バイアス」と言おうと思う)をどう乗り越えていくのかという点は極めて重要である。

バイアスの存在を敢えて認識しようというトレーニングも最近では多く実施されているが、認識するだけでは全く不十分であり、日々の行動を実際に変えてこそ、バイアスを乗り越えた改革が進む。
Knowledge Center:Be Inclusive Every Day

クリントン氏は敗れたが、いや敗れたが故にか、米国では改めて、ジェンダー・ギャップを始め様々なギャップを克服し、真にフェアで「インクルーシブ」な社会の実現に向け、継続して努力することの重要性が叫ばれ始めている。カタリストのプレジデント兼CEOデボラ・ギリスは、選挙結果を踏まえて力強いステートメントを出した。

次期政権の下でも、米国の政治及びビジネスの様々な場においてこの機運が継続するならば、クリントン氏が大統領選に立ったことの意義が生かされると思う。そして、今回私が抱いた疑問や今後に向けての想いは、恐らく日本でも、大統領選を見た多くの女性が、また様々な組織のリーダーが同様に抱いたのでないかと思う。

そうであるならば、日本の社会、企業や組織において、ジェンダー・ギャップやバイアスを克服するために具体的な行動を取り、より本質に踏み込んで、女性のキャリア推進、更には「ダイバーシティとインクルージョン」のある社会の構築に向けた変革が進められることにつながるだろう。私たちは、そのための具体的で実践可能な行動の例を数多く示していきたいと思う。

【参考】
組織のリーダーとして無意識の偏見に立ち向かうには