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災害FM局の中学生DJに会いに行く

2013年05月11日 18時38分 JST | 更新 2013年07月11日 18時12分 JST

2013年4月10日 金山 勉

4月は桜の開花とともに、新たな気持ちでいろいろなことに取り組む季節。春風を感じながら歩いていると、何か次のステップに向けて飛躍できそうな期待感を持たせてくれる。それに先立つ3月、東日本大震災2周年を迎えた陸前高田に行った。その際、陸前高田市の災害FM局で番組DJをつとめる美南さん(15歳)を訪問し、収録風景をみせてもらった。番組名は「みなみの福興ラジオ(通称・福ラジ)」。美南さんにとっては母親くらいの年代となる災害FMパーソナリティ阿部裕美さんを相方に、快活な雰囲気の中で番組が進んでゆく。陸前高田の災害FM局に実際に足を運ぶ前までは、「中学生がラジオDJを担当して本当に大丈夫なのか」と思ったが、会ってみるとその考えはあっという間に払拭された。「元気がある。素朴さがある。物怖じせず、自分の思ったことを口にできる。人へのやさしさがある。何かに一途になれる強い気持ちがある。これと思ったら行動できる。」

描写すればきりがないが、どれも人間を前向きにしてくれる要因であることに気付かされた。美南さんと接することがあれば、誰もが元気をもらえるだろう。直接会えなくとも、地域の人々が彼女と触れ合う機会を陸前高田の災害FM局が与えてくれている。「福ラジ」は、単に中学生がわいわいやっている番組ではない。復興期にある地域の人たちが、日々疑問に思っていることを、彼女なりの鋭い視点と表現で代弁したり、沈んだ気持ちになっている時に元気を取り戻せる栄養剤の役割も果たしたりしているのだ。

美南さんの行動力はすごい。自分が暮らす陸前高田の復興・将来のことが気になれば、市役所に直接コンタクトをとる。するとこれに応えて副市長が番組出演し、美南さんからの直接の質問に答えてくれたという。私が思うに、子どもは大人以上に社会のいろいろなことに気付いている。大人がむき出しにする自分勝手な振る舞いや人の心を大切にしない言動の数々に触れる時、子どもながらに心を痛めてもいる。子どもたちは、震災復興の最中にある社会の中で、自分たちの家族や自分たちが生活するコミュニティのことについて一生懸命に考え、自分なりの意見を持っているし、私たちも彼らの意見を尊重しなければいけないと思う。また、大人が見落としている大事な気付きを子どもたちは与えてくれる。

陸前高田市の災害FMが美南さんをDJに起用した慧眼に感服したと同時に、コミュニティの中で、多様な意見を紹介できる「場」があることの大切さを実感した。美南さんの福興ラジオを楽しみにしているリスナーも増えてきていると聞くが、本人はこの春、中学校での学びを終えて、高校に進学した。高校進学にあたっても、美南さんは、志望校を自分で決めて、入試にチャレンジし見事に合格。家族から離れて陸前高田市外の高校に進学するため「福ラジ」のDJ担当も終了した。子どもは地域の宝と言うが、これは大人からの一方的な見方で、子どもは大人にとっての教師だとも言えるだろう。パートナーDJで大人代表の阿部さんは、「福ラジ」最終収録のエンディングで何度も声を詰まらせた。親子のように語り合いながら、地域に元気を届け続けた「福ラジ」で美南さんから多くの気付きと元気をもらったと話す。これを聴いた陸前高田の人々もそうだろう。私は、陸前高田を離れ次の成長のステージに向かう美南さんに幸多かれと願うと同時に、小さいながらもコミュニティメディアが地域の会話・対話の場づくりの要となれる現実を目の当たりにして、その潜在的な力を再認識した。(かなやま つとむ)