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恋愛しなくちゃいけないの? アセクシュアルの私が感じる生きづらさ

あなたは、"恋愛をしない人"にどのような印象を持ちますか?

2017年10月26日 16時38分 JST | 更新 2017年10月30日 11時07分 JST

Getty Images/iStockphoto

あなたは、恋愛がテーマの作品を見て胸が"キュン"とすることや、こんな恋がしてみたいと思うことはありますか?

彼氏が欲しい、彼女が欲しいと思うことはありますか?

誰かが好きで好きでたまらない、会いたくてたまらないと思うことはありますか?

私には、そういった「恋愛感情」がありません。

「人を好きになる」って、どういうことなのでしょうか。

こんな私は、人としておかしいのでしょうか?

■私は

私はおそらく「アセクシュアル」(エーセクシュアル)です。

アセクシャルやAセクシャルなど、日本語表記はさまざまですが、意味はどれも「他者に対して恋愛感情を持たない」というもの。NHKでは、「恋愛対象や性的欲求がない人」と説明していました。

あなたは、"恋愛をしない人"にどのような印象を持ちますか?

NHKニュースで報じられるなど、じわじわと認知されつつあるこの言葉ですが、私が「アセクシュアル」に出会ったのもごく最近、2017年の春のことでした。

■「アセクシュアル」に出会うまで

aluxum via Getty Images

生まれてから23年間、私はずっと恋愛の定義がわかりませんでした。

性別を問わず好きな友達はいて、特別仲のいい友達もいる。二人きりでお酒を飲みに行ったり、二人きりで旅行をする友達だっている。それでも、その友達への気持ちが「恋愛感情」だと思ったことは一度もありません。

友情と恋愛感情の違いは? どこを超えたら恋愛になるのか?

大人になっても、私にはそれがわかりませんでした。

恋愛に興味がなくても、学校やバイト先など日常生活のあらゆる場面で「恋愛するのが当然」という空気に晒されるのが心底嫌でした。

久しぶりに会う友達からの「彼氏作らないの?」や、親戚からの「いつ結婚するの?」、月1の美容院での「彼氏いますか?」...とほぼ100%の確率で投げかけられるこの言葉。これらに対して、あやふやな返事や自分を偽った返事をすることにいつも虚しい気持ちを感じていました。

こういった質問に対して正直に「恋愛には興味がない」と言うと「もったいない」だったり「まだいい人に会ってないだけだから、そのうち見つかるから大丈夫だよ」と言われるのも不思議です。

もちろん、ほとんどの場合は嫌味などではなく親切で言ってくれているのだと思いますが、「そのうち見つかるから大丈夫」とは、裏を返すと今の私の状態は"大丈夫じゃない"と思われているのか...?などと考えてしまいます。

元からその感情が「無い」のが自分にとっては普通だったのにただ恋愛の話に共感できないだけで、まるで「普通じゃない」と言われているようでとても複雑でした。

■「レズビアンなのかも?」と思った

おおよそ一般的だとされる男性との恋愛に興味がない私は、ある時期から「もしかしたらレズビアンなのかもしれない」と考えるようになりました。

女性に対して恋愛感情を抱いたことがなかったのは、きっとこれまで"そういう意識"で見ていなかったからだ、と自分に思い込ませ、大学4年生の冬、あるレズビアン専用SNSに登録してみました。合わせて、レズビアン向けのイベント参加を考えて開催情報を調べたりもしてみました。

渾身の自撮り写真のおかげか、SNSの私のアカウントには登録から間も無くユーザーからいくつもいくつもメッセージが送られてきました。

けれど、どうにもしっくり来ませんでした。目の前に広がる「恋愛」と「出会い」の雰囲気に何とも言えない嫌悪感を感じました(そもそも、出会い系SNSなので当然なのですが...)。

嫌になって、SNSは3日で退会しました。自分が何者なのかはわからないままでしたが、少なくともいま私が落ち着く場所はここじゃない、と思いました。

■「アセクシュアル」という概念と出会って

自分が"何"なのかわからない不安に押しつぶされそうになりながら、やみくもに「恋愛感情 ない」や「恋愛 わからない」などの言葉で検索して、たどり着いたのが「アセクシュアル」でした。

(後からわかったことですが、この検索ワードは多くのアセクシュアルが経験する"あるあるネタ"なようです)

アセクシュアルとは、「他者に対して(恒常的に)恋愛感情や性的欲求を持たない」ことを指すようです。異性相手にも同性相手にも恋愛感情が存在しません。

(しかし、認知度が低く、専門研究があまり進んでいないこともあって、海外や日本でも定義は明確に定まっていないようです)

初めて聞く言葉だったけれど、初めて自分の中に漠然と存在していた気持ちに当てはまるものを見つけることができてとても安心したのを覚えています。

私がずっと感じていた気持ちと同じ概念がこの世に存在すること、それには名前があって、同じような人がたくさんいるということ。

そのことがわかって、やっと自分を肯定してもらえたような気がしました。

■当事者と話してみたい

自分に当てはまるセクシュアリティが見つかってひとまず安心したけれど、不安感は残ったままでした。

ネットには「アセクシュアル」という概念が存在している。していた。しかし、現実にはどうなのだろう?

同性愛者の方とは会ったことがありましたが、そもそも"概念を初めて知った"レベルで、アセクシュアルの当事者というものは本当に存在しているのだろうか...と半ば疑心暗鬼になっていました。

そんな中、検索で見つけたのが「性性堂堂」でした。

「性性堂堂」は、動画を上げたり、オフ会を企画したりする「性トークおしゃべり集団」。レズビアン、アセクシュアル、MtF、Xジェンダーの4人で構成されています。

友達同士のなんでもない雑談をするようにいい意味で軽く、楽しく性について・セクシュアルマイノリティについて語り合う様子は、私にとってとても衝撃的でした。

アセクシュアルの当事者として顔出しで活動している人がいる。この人に会えたら、私にとって大きな転機になるかもしれない。

そんな想いから、性性堂堂の「なかけん」さんを取材させていただくことを決めました。

■性性堂堂の「なかけん」さん

HUFFPOST/Kaori Sasagawa
なかけんさん

さて、アセクシュアルの当事者とは、どんな人なのだろうか?

動画でなかけんさんの顔は見ていたし、歳も(おそらく)近かった。それでも取材当日、私はとても緊張していました。

正直、私は自分がセクシュアルマイノリティだということを意識したことがありませんでした。セクシュアルマイノリティの人々が集まる場に行ったこともない。まさか自分が当事者として誰かと話すことになるなんて、本当につい最近まで考えたこともなかったのです。

そんな私が上手く話せるのか、正直とても不安でした。

...不安だったのですが、そんな心配は余計だったと思えるくらい、当日会ったなかけんさんはまさに動画のまま、性性堂堂の優しそうななかけんさんそのものでした。

そして、「アセクシュアル当事者」以前に(いい意味で)普通の人だったことに、とても安心しました。

■性性堂堂のきっかけ

もともとは積極的に前に出るようなタイプではなかった、という言葉で話し始めてくれたなかけんさん。性性堂堂で活動することになったきっかけと経緯について聞きました。

「元々、にじいろ学校というNPOで1年半の間、役員をやっていたんです。そこはアセクシュアルとかノンセクシュアルについて活発に活動をしている団体で。その中に『知名度を上げたい』という話をしてくれた方が結構いたんです。けど、その割にアセクシュアルって全然世間に出ていない存在だな、と思って」

なかけんさんは、学生の頃に「アセクシュアル」という単語に出会ったことで安心感を得られたといいます。きっと自分のように単語に出会えていないだけの人は他にもいる、なのに、これが認知度が低いというのはもったいないことではないかと感じたそうです。

その後、別のNPO活動の中で出会ったセクシュアルマイノリティの3人と意気投合し、現在の「性性堂堂」としての活動を始めたそうです。

■なかけんさんがアセクシュアルと自認するまで

HUFFPOST/Kaori Sasagawa

なかけんさんは、小学生くらいの時期から「男女の区別なく人として好き」という気持ちが強かったといいます。

"恋愛感情が存在する"ということが信じられなかった、という感覚が近いかもしれないです。周りのみんなは恋愛とか言ってるけど、幻想なんじゃないかな?本当に恋愛感情を抱いてるの?って疑問に感じていた。自分自身に備わってないから信じられないというか...よくわからなかったんです、本当に」

この話を聞いて、私とは違う部分だと感じました。私は、友達の恋の話や漫画やテレビを見て、"恋愛は普通するもの"というイメージを持ってからです。そのため、ずっと「恋愛っていうものがあるのはわかるけど、どうして自分には訪れないんだろう?」という疑問を抱いていました。

小さい頃から今まで一貫して「そもそも世界に存在してもいないのでは」と疑っていたような感覚だったなかけんさんと、恋愛感情の存在は認めているけれど「自分にその感情がないのはなぜか」と思っていた私。

当然ですが、同じアセクシュアルとはいえ人によって様々なパターンが存在するのだと身をもって実感した瞬間でした。

■アセクシュアルだけど、アセクシュアルと名乗れない

私がなかけんさんに会って一番聞きたかったこと。それは、「恋愛感情が本当にない、という確信が持てない状態でアセクシュアルを名乗っていいのか?」でした。

そこで私は、なかけんさんに思いきって聞いてみました。

「私は自分のことをアセクシュアルだと思っています。けれど、これから先の人生で絶対恋愛をしない、という確信が持てずにいました。もしかしたら10年後、3年後、いや1ヶ月後の可能性もある。今後いつかは恋愛をするかもしれない、という気持ちが微かにでも残った状態で、果たしてアセクシュアルを名乗っていいのだろうか、と不安です」

いわば「にわか」のような状態で私がアセクシュアルを名乗ることで、「本当のアセクシュアル」の人は嫌な思いをするのではないか...と思うと、アセクシュアルと名乗っていいのわからなかったからです。

このことを打ち明けると、なかけんさんははっきりと「確信は持たなくていいと思います」と答えてくれました。

「「こうじゃなきゃダメ」という考え方があったら、人って一生それに縛られてしまうと思うんです。なので、アセクシュアルの確証を得る必要はないと思うんです。それがある限り、「アセクシュアルでなければいけない」と自分を縛りつけることになるので」

なかけんさんが行っているオフ会には、「私は絶対アセクシュアル」という状態で来る人もいれば、私と同じように確証が得られず悩んでしまう人もいるといいます。

HUFFPOST/Kaori Sasagawa

なかけんさんも、自身がアセクシュアルだと気付いたあとも本当に完全なアセクシュアルなのか、今後絶対に恋愛をしないと言い切れるのか悩んでいたそうです。

そんな時、あるアセクシュアルの知人に『アセクシュアルって死ぬまで証明できないよね』と言われ、それまでと考え方が変わったといいます。

最期、死ぬ時までに恋愛をしていたかどうかでしか、その人がアセクシュアルかどうかなんて判断できない。なら、一生自分は自認できないじゃんって」

なかけんさんは、アセクシュアルはあくまで「一歩」として捉えてほしいと考えているそうです。

アセクシュアルが一番近い概念な気はしていたけれど、確証を持って自認することができず、地に足がつかないような状態になっていた。そんな私にとって、この言葉は一層深く響きました。

■アセクシュアルはセクシュアルマイノリティの中でもマイノリティ?

なかけんさんとの会話の中で、アセクシュアルでいることで一番ショックだと思うことが二人の間で一致していることがわかりました。

それは、アセクシュアルは世間一般の中でマイノリティとされているセクシュアルマイノリティの中でも更にマイノリティの存在だということ。

徐々に世間で受け入れられ始めているセクシュアルマイノリティの中に入ってみても疎外感を感じてしまう、やり場のない寂しさ。

東京都では毎年、東京レインボープライドというLGBTのイベントが開催されています。華やかで、オープンで、素晴らしいイベントだと思っています。

(東京レインボープライドは、「性的指向や性自認のいかんに関わらず、差別や偏見にさらされることなく、より自分らしく、各個人が幸せを追求していくことができる社会の実現を目指すイベント」。(公式サイトより抜粋))

しかし、そのレインボープライドでは「LOVE」のメッセージが強く感じられて、アセクシュアルの私は、興味はあれど参加するには至っていませんでした。

なかけんさんは、参加していたNPOの活動で東京レインボープライドにアセクシャルやXジェンダーをテーマにしたフロートを開いた経験があり、その際に一番心が傷んだ出来事があったといいます。

アセクシュアルっていうんだね。恋愛しないって可哀想だよね

東京レインボープライドのパレードで、あるレズビアンの方にそう言われたそうです。

「別に、どっちも悪くないじゃないですか。恋愛することも全然悪くないし、恋愛しないことも悪くない。確かにいろんなセクシュアリティをまとめるのは無理があるなとも感じるんですが、お互い理解をし合って、あのレズビアンの方が放ってしまったような一言は絶対に出ないような環境にしたいです」

HUFFPOST/Kaori Sasagawa

■迷っているあなたへ

「恋愛をする気がない人」にとって、今の社会はとても生きづらいと思います。

「恋愛する気になれないからダメ人間」、「人としておかしい」...「20歳までに誰とも付き合ったことがない人は、人格に問題があると思われてもおかしくない」と言われたこともあります。そんな言葉を他者から押し付けられるのが普通になっていることは本当におかしいと思います。

もし、今このブログを読んで「自分はアセクシュアル"かもしれない"」と思ったら気が楽になるという人がいたら、どうかその「一歩目」の気持ちを肯定してあげてください。

「アセクシュアル」という概念に出会うまで自分がわからず悩んでいた私と同じような悩みを抱えている人に、この文章が届いてほしいと心から思います。