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「私たちの世界を変革する」持続可能な開発目標ってどんなもの?(第六回:目標11)

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前回は、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」※の目標12についてご紹介しました。今回は、目標11について紹介したいと思います。

※「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」:2016年から2030年までの15年間に、日本を含む世界のすべての国々が達成すべき目標。貧困・格差、気候変動などの課題について17の目標が定められている。「誰一人取り残さない」がキャッチフレーズになっている。

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目標11
「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」

この目標は、都市についての防災や住環境改善などの取り組みをまとめたものであり、都市の割合が高く災害も多い日本には、身近で取り組みやすい目標の一つです。ところが、この目標は防災だけをやるためにあるのではありません。では何が含まれているのか、少し例を踏まえて見ていきましょう。

歩くのに杖が必要なおじいさんと10代の女の子の生活を考えてみましょう。

  • おじいさんは、病院に行きたがりません。
  • 女の子は公園に遊びに行きたがりません。

なんででしょうか?

おじいさんにとって、バス停は遠く、バスには段差があり、非常に乗りにくいのです。病院に行くまでに乗り換えもしなければならず、体力のあまりないおじいさんには大変でした。加えてバス停までの道のりは凸凹で、歩道がなく、車と接触する危険性もありました。

女の子にとって、近くの公園は自転車を使わないといけないところにあったにもかかわらず、自転車道が整備されておらず、車や歩行者とぶつかる恐れがあるのです。

大きな公園に行くときには、電車に乗るのですが、そこではたまに痴漢の被害に会ってしまうこともありました。そして電車の料金が非常に高いこともあり、めったに大きな公園には行けませんでした。

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上述のような問題に取り組むことを、目標11のターゲット2と7には掲げられています。(全目標の169ターゲットをご覧になりたい方は、こちら

(ターゲット11.2)2030 年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズ に特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべて の人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセ スを提供する
(ターゲット11.7)2030 年までに、女性、子ども、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ 利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する

一見、日本はすでに克服した問題かのように見えますが、何よりも環境にやさしい乗り物である自転車のための道の整備や、痴漢やセクハラを受けない公共空間の創出という意味では問題は山積です。特に痴漢の認知件数や性犯罪の発生件数は増加傾向にあり、この問題は喫緊の課題であるといえます。

最低限度の生活水準ですら危うい?


世界には多くのスラムがあります。そこでは程度に差はあれ、水や電気、ガスなどの当たり前の公共サービスにアクセスすることができません。

そして屋根があるならまだしも、特にリーマンショック後、世界的にホームレスの数は非常に増えています。(日本は統計的には減っていることにはなっていますが、その測定方法には多くのNGOが問題視しており、例えばネットカフェや24時間営業のお店で過ごす人、夜に仕事をする人はカウントされない、などの指摘しています。)

住所が定まらないことは、仕事を得たり、地域で関係を築くことを困難にし、さらに生活環境を厳しくします。アメリカ合衆国では、ホームレスの平均寿命は42歳~52歳と、一般の人が78歳であることと比べると非常に短くなっています。

さらに家があるだけでは不十分です。一部の国で発生したように、例えば水道の民営化により一気に水の料金が値上がりしてしまうなんてことが起こっては、一般市民は生活することはできません。これは電気、ガス、道路へのアクセスその他にも同様に当てはまります。

そのため、目標11は一番初めのターゲットとして「2030 年までに、すべての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへ のアクセスを確保し、スラムを改善する。」ということを掲げています。住宅、そして付随する基本的なサービスは人間が人間らしく生きるための第一歩だからです。

しかしその家が弱く、災害で簡単に壊されてしまうものであればどうでしょう?

一生懸命働いてためたお金で建てた家が、建築規制が正しく機能していないため、情報的に弱者である労働者は、災害に対して非常に弱く、手抜き工事の家に住むことになってしまうかもしれません。何かの際には簡単にまたホームレスに戻ってしまうことが想定されます。

そのためにも、ターゲット11.bでしっかりと設定されています。

2020 年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レ ジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の 件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組 2015-2030 に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。

人々の人間らしい生活とは、量ではなく質でこそ図られる=家の数だけではなく、その質も大事だということが含意されています。

以上みてきたように、私たちの生活は、あらゆることがお互いに支えあうことでできています。どれか一つが欠けると生活は苦しいのに、一つずつ直してもよくすることは難しいというものです。

だからこそ、ある意味で他の目標間の溝となりそうな、「私たちの生活全般の改善」という曖昧だが大事なものをこの目標によって取り組むことができるのだと思います。

Japan Youth platform for sustainability
コーディネーター
小池宏隆