「私たちの世界を変革する」持続可能な開発目標ってどんなもの?(第三回:目標14.15)

目標14では海そのものや海洋の生物資源を、目標15では森林や陸上の生物資源をそれぞれ守ることが目指されています。

前回は、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals,SDGs)」※の目標16についてご紹介しました。今回は、目標14と目標15について紹介したいと思います。

※「持続可能な開発目標(SDGs)」:2016年から2030年までの15年間に、日本を含む世界の全ての国々が達成すべき目標。貧困・格差、気候変動などの課題について17の目標が定められている。「誰一人取り残さない」がキャッチフレーズになっている。

ⒸHeidi Anicete/Save the Children

目標14と目標15はどちらも環境に関する目標です。目標14では海そのものや海洋の生物資源を、目標15では森林や陸上の生物資源をそれぞれ守ることが目指されています。

SDGsの前身である「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals, MDGs )」において定められた8つの目標の中には、環境に関する目標は1つだけでした。MDGsでは目標7として「環境の持続可能性の確保」が掲げられ、生物多様性や安心・安全な水へのアクセスを確保することがターゲットとなっていました。

SDGsでは、MDGsよりも環境に関してより広範で詳細な目標が定められています。環境に関する目標は目標14,15のほかに目標7,9,11,12,13があり、それぞれエネルギーや地球温暖化など異なる目標とターゲットを定めています。また、それ以外のターゲットでも環境の持続可能性については随所に見られます。

ではなぜ、SDGsでは環境についてMDGsよりも充実した目標が掲げられるようになったのでしょうか。

その理由は、SDGs策定までの背景にあります。途上国の開発と貧困の削減という目的を持つMDGsの継承のための取り組みと、1992年に行われた地球サミットの流れをくむ「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」2つの活動が合流した結果として生まれたのがこのSDGsなのです。

MDGsからの流れだけを見ると、環境分野に関する目標は軽視されがちです。しかし、今ある限られた資源を持続的に活用できるように地球のエコシステムを守り、コントロールしなければ、貧困をなくすための開発を続けることはできません。以前は豊富だった資源も、世界中の様々な国が発展するなかで、それが限りあるものであるということが認識されるようになりました。

特に、現在の先進国を中心とした大量生産・大量消費の経済モデルを続けるには地球1個の資源ではとうてい追い付かないことは、危機感をもって受け入れられています。MDGsが主に貧困削減を掲げ途上国を対象とした目標であったのに対し、SDGsは先進国を含むすべての国々を普遍的に対象としています。この点は、SDGsの最も重要な特徴の一つだといえるでしょう。

SDGs は、経済だけではなく、社会、環境を含めた三つの側面をバランスよく統合した目標なのです。環境を守り持続可能な形で利用することは、SDGsのほかの目標を達成するうえでの前提となっているのです。

では、今回紹介する目標14と目標15は、具体的にどのような内容になっているのでしょうか。

目標14

「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」

目標14は、海や海の命・資源を守るための目標です。海には私たちにとって重要で貴重な資源が豊富に存在しているにも関わらず、私たちの経済活動により汚染され、悪影響が及んでいるところもあります。この目標では、2020年までにあらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減することがターゲットとなっています。

また、海の資源を今の私たちの世代だけでなく、将来にわたって利用できるようにするためには、魚の乱獲や違法な漁業をきちんと取り締まり、資源の保全を行わなければなりません。こういった基準を定めるにあたっては、きちんとした科学的な根拠に基づいて、持続可能な海の資源の利用のための計画を立てる必要があります。

貧しい国や途上国においては、海の資源を管理・保全するための技術やノウハウを持っていないこともあります。そういった国に対して、科学技術を提供したり、研究能力の向上を支援したりすることが先進国には求められています。特に小規模な漁業者について、海の資源やその市場へのアクセスを提供することもターゲットとして重要です。

このように、目標14では持続可能な海・海の資源を管理するターゲットとなっているだけでなく、特にそれを達成することや利用することが難しい状況にある途上国に対して支援を行うことが、各国に求められています。

目標15

「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」

目標15は、森林の喪失や砂漠化といった土地とそこに住む生物の多様性に関する目標です。各地でいま起きてしまっている森林破壊を食い止めることは、地球温暖化の側面からも重要な課題です。森林、湿地、山地、乾燥地などの陸におけるエコシステム、そして陸に存在する湖などの淡水におけるエコシステムを守り、再生し、持続可能な方法で利用することがターゲットになっています。森林減少を阻止し、劣化した森林を再生させるために、世界中の国々が植林を大幅に増加することも目指されています。

また、森林に限らず、様々な土地の生物多様性を守る取り組みを各国が行うことが求められています。植物や動物の種類や数が減らないようにすることを、計画や開発プロセス・貧困削減のための戦略の段階から意識しなければなりません。陸上に住むさまざまな生物を無視した開発は許されないということです。これを実現するためには、先住民や地域コミュニティの人々と協力する必要があります。

そしてこのような取り組みを実際に行動に移すために、様々な資金源から森林経営の資金調達を行うこともターゲットになっています。先進国だけでなく開発途上国も持続可能な森林経営を行うようにするため、十分なインセンティブを与えられるようにしなければなりません。

目標14と目標15を達成することは、私たちが今暮らしているこの環境を、私たちの子どもや孫、さらにずっとその先の世代も享受できるようにするためにとても大切です。

次回は同じく環境分野の目標で、気候変動に関する目標13についてご紹介します。

アドボカシーインターン

北畑祥子

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