転機に立つハイチ

民主主義国として世界有数の長い歴史をもつハイチは、この移行へ向けて機が熟しており、私たちの全面的な支援を受けるに値するのです。
A man holds a Haitian flag as he takes part in a protest demanding that Haitian President Michel Martelly step down in Port-au-Prince on January 13, 2014. The protesters walked from one sector of the center of the capital to the parliament, where Martelly was to deliver a speech on the country's political and economic situation. AFP PHOTO/Hector RETAMAL (Photo credit should read HECTOR RETAMAL/AFP/Getty Images)
A man holds a Haitian flag as he takes part in a protest demanding that Haitian President Michel Martelly step down in Port-au-Prince on January 13, 2014. The protesters walked from one sector of the center of the capital to the parliament, where Martelly was to deliver a speech on the country's political and economic situation. AFP PHOTO/Hector RETAMAL (Photo credit should read HECTOR RETAMAL/AFP/Getty Images)
HECTOR RETAMAL via Getty Images

ハイチはこの夏、重要な歴史的節目を迎えます。8月9日から、約600万人のハイチ国民が1,280名の地方議会議員、140名の市長、139名の国会議員、そして最後に大統領を選びます。選挙は何段階かにわけて実施され、本年末まで続く可能性もあります。

ここまでにいたる道のりは容易ではありませんでした。ハイチ国民はこの選挙を3年間待ち続けていました。国会は1月から閉会しています。

ハイチは、政治プロセスへの信頼を取り戻し、今回の選挙を予定通り実施するために大きな進歩を遂げました。1月に任命された選挙管理委員会は、信頼できる包摂的で透明性の高いプロセスの確保を目指し、技術面、実施面、財政面のいくつもの課題に果敢に取り組んできました。選挙法と日程が3月に公表され、大部分の政党が候補者を立て、国家警察が選挙のための安全な環境が確保されるよう努めています。国連の平和維持活動であるハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)と、国連開発計画(UNDP)、その他の国連パートナーはここ数年にわたって、国の選挙能力の強化に多大な努力を注いできました。

すでに多くの仕事が成し遂げられてきましたが、これだけの規模と複雑さをもつ選挙運営を完了させるには、さらに多くのことを行う必要があります。これまでのところ、国内各当局と国際ドナーの共同の努力により確保された財源は、最初に行われる8月9日の投票を賄える分しかありません。ここで立ち止まるわけにはいきません。すべてのハイチの国際パートナーの方々に、一層取り組みを強め、ハイチが平和と安定に向けた道のりのゴールラインを越えられるよう支援していただくようお願いします。パートナーの方々からはこれまでも重要な貢献が寄せられてきましたが、まだ補うべき大きな不足分があります。こうした支援がなければ、一連の選挙の完了も、ハイチが努力の末に達成した進歩も危うくなるおそれがあります。

今回の選挙は、ハイチの近年の歴史の中で、最も長く制度的安定が維持されてきたことの証となります。民主的選挙により選ばれた大統領が後継者に政権を譲り渡すのは、2006年以来2度目になります。このプロセスは近隣地域にも前向きな影響を及ぼし、社会経済的発展と地域の安定の促進につながるでしょう。

ハイチの国際パートナーの方々がこの国の民主的プロセスへの寛大な支援を続けてくださることも重要ですが、ハイチ政府がこのプロセスを適切に管理し、国の各機関が選挙の全責任を担うために必要なすべてを備えるようにすることも同じように大変重要です。

7月16日、国連とハイチの首相、政府関係者、および国際パートナーの会合がニューヨークで行われる予定です。ハイチの民主主義定着に向けた私たちの共通のコミットメントと、発展を願うハイチ国民との連帯を再確認するまたとない機会となります。

ハイチの人々は、国内に民主主義を根づかせるため何十年も努力してきました。1986年には民衆蜂起によってデュバリエ政権が打倒されました。2015年の現在、地方選挙だけで3万8,000人を超える候補者が擁立されています。この国には活発な民主主義が生きており、ハイチ国民は統治は万人の責任だということを理解しています。

民主主義と良き統治、法の支配の尊重が規範となっている世界中の各国では、平和的かつ民主的な手段を通じて政治権力が争われます。市民が直面する問題の解決にも、平和的で民主的な方法が採用されています。対話と寛容が時代の基調となっています。民主主義国として世界有数の長い歴史をもつハイチは、この移行へ向けて機が熟しており、私たちの全面的な支援を受けるに値するのです。

エルベ・ラドスース 国連事務次長(平和維持活動担当)

ジェシカ・ファイエタ 国連事務次長補 兼 国連開発計画(UNDP)ラテンアメリカ・カリブ局長

注目記事