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シリーズ「南スーダンからアフリカ開発会議 (TICAD VI) を考える」 (3)

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斉藤 洋之 (さいとう ひろゆき)  ©UNMISS/2016/JC McIlwaine

国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)広報部アウトリーチユニット統括

東京都出身。早稲田大学第一文学部文芸専修卒業後、テレビ東京勤務。その後、ボストン大学にて放送ジャーナリズム修士号取得。米国NBC系列地方局、フォックス・ニュースボストン支局、ダルフール国連・アフリカ連合合同ミッション広報部ビデオユニットで勤務。UNICEF東京事務所・広報官、米国旅行ウェブマガジン「Travelzoo」制作部長を経て、2015年から現職

第3回 国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS) 斉藤洋之さん

~異文化体験イベントを通じて体感した、伝えることの意義と巻き込むことの大切さ~

2016年8月27~28日、ケニアで第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)が開催されます。初めてアフリカで開催されるTICADに向けて、国連広報センターでは日本の自衛隊が国連PKOに参加し、また多くの日本人国連職員が活動する南スーダンを事例にして、様々なアクターの皆さんに、それぞれの立場からTICADで議題となる課題について考えていただくという特集をシリーズでお届けします。

シリーズ第3回は、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)広報部アウトリーチユニット統括の斉藤洋之さんです。斉藤さんが統括するアウトリーチユニットは、南スーダンの人々にUNMISSの活動を正確に理解してもらい、地域の人々との関わりを深め、国連ミッションへの信頼を高めることを目指しています。国連と南スーダンとの協力を円滑に進めるには、人々からの理解と支持を得ることが必須だからです。斉藤さんは、現地の人々にもなじみやすい歌、踊り、食の紹介をきっかけに、人々の関心を高めてもらうためのイベントを企画するなど、クリエイティブな発想で活動に取り組んでいます。

現在世界16か所で展開している国連平和維持活動。その中でも、予算と人員の規模でスーダンのダルフール、コンゴ民主共和国の活動に次いで第3位にあたるのが、私の勤務する「国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)」です。2016年4月現在、1万6000人あまりのスタッフが全土で活動しています。スタッフのほとんどは軍事要員でおよそ1万2000人、警察部隊が1200人、私のような文民スタッフが残りを占めています。

3月、UNMISSを構成する軍事、警察、文民の3部門が協力して、南スーダンの人々に向けて「UNMISSワールド・フレーバー」という広報イベントを実施しました。

駐屯各国部隊の文化を紹介するイベントを企画

そもそものきっかけは、2015年12月に国連が日本のPKO活動への貢献を称えるために行った、日本隊へのメダル授与式を訪れた時のことでした。式典の後、日本隊の食堂で天ぷらや蕎麦などの和食をご馳走になり、日本隊の調理スタッフが毎日3食とも和食を作っていることを知りました。遠く離れた異国の地でも、日々の食事は隊員自身が調理しており、日本での食事と変わらないよう工夫を凝らしていると聞き、感心しました。

南スーダンの首都ジュバには日本の自衛隊だけでなく、エチオピア、中国、ネパール、ルワンダの歩兵大隊、バングラデシュの施設隊なども駐屯しています。「各国部隊の厨房担当をジュバのイベント会場に集めて、地元の人々に世界の料理を味わってもらうのはどうだろう」という発想からこの企画が膨らみました。

各国の歩兵大隊は、ジュバやその他の地域で日夜パトロールをしています。UNMISSの活動の大きな柱となる「文民保護」の一環ではあるものの、武器を携帯した外国人兵士が2、3台の装甲車で市内を巡回していれば、戸惑いを感じる人々もいます。そこで、軍事部門のスタッフが地元の人々と交流し、相互理解を深めることができる機会を作りたいと常々思っていました。

私が統括する広報部の「アウトリーチユニット」は、南スーダンの人々にUNMISSの活動をより正確に理解してもらい、地域の人々との関わりを深め、国連ミッションへの信頼を高めることを主眼に活動しています。

例えば現地の人々と話しをすると、「なぜUNMISSは食料を提供しないのか」「学校を建ててくれないか」「予防接種をしてくれないか」といった質問を受けます。こうした質問に、「UNMISSは平和維持を目的とした機関であり、人道支援団体ではない」と平易な言葉で説明して誤解を解いたり、UNMISSがどのような活動を実際に行っているか具体的に説明したりして、「文民保護」活動の内容を分かりやすく伝えます。

人々を招待してジュバで説明会を開く場合もあれば、私が地方視察に同行したときに地域住民へ活動の紹介をすることもあります。時には大掛かりなイベントを企画してメッセージを発信することもあります。

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ナディア・アロップ・ドゥディ文化・青年・スポーツ大臣(左)を迎えて握手するムスタファ・スマレUNMISS事務総長副特別代表 ©UNMISS/2016/JC McIlwaine

多様な価値観を尊重し、UNMISSの役割への理解深める

今回の「UNMISSワールド・フレーバー」は、世界の食の紹介に加え、各国の踊りや歌といった文化やエンターテイメントの要素も盛り込み、人々に「平和に向けた文化の多様性を尊重することの重要性」を訴える場にすることを目指しました。また、人々にUNMISSの主要部署の活動を説明し、相互理解、イメージアップを図ることも目的に計画しました。

南スーダンは40以上の部族が暮らしていると言われる多民族国家で、部族間の大小の衝突が発生しています。特に、2013年12月以降続いている二大勢力のディンカ族とヌエル族の対立は国全体を巻き込むもので、多くの国民が命を落とし、200万人を超える人々が故郷を逃れ避難民となったと言われています。

このような状況で、異なる文化や価値観を認め合い、国民としての一体感を高めることは、この国に特に必要とされています。2015年8月和平合意が結ばれ、今年4月に暫定統一政府が樹立される中、違いを分かりあい、過去の傷を払拭して団結することが急務なのです。

このイベントを実施するため、南スーダン政府の「文化・青年・スポーツ省」に何度も足を運び、ナディア・アロップ・ドゥディ大臣に趣旨を説明するとともに、大臣のイベント出席と、南スーダンの料理、ダンスの披露をお願いしました。私たちがアウトリーチ活動を進めていく上で、同省とのパートナーシップが不可欠であるため、この機会を利用して、大臣や担当官に我々の活動を説明し、理解を深めてもらうよう努めました。

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イベント実施にあたり協力いただいた、ナディア・アロップ・ドゥディ文化・青年・スポーツ大臣 ©UNMISS/2016/Muna Tesfai

UNMISSの軍事、警察、文民部門に参加してもらっての全体会議を繰り返し、関係部署と計画を練り、前日にはリハーサルをしてようやく迎えた3月5日。会場はジュバ市内の「ニャクロン文化センター」という地元の人が訪問しやすい場所を選びました。

当日は、市民社会グループ、南スーダン政府関係者、現地NGO団体、地元の大学生や教職員にUNMISSスタッフも加えると、約600人が来場しました。式典ではUNMISSのムスタファ・スマレ事務総長副特別代表が、「どのような生まれであろうと、私たちは皆、南スーダンに恒久平和を実現するという目的のもとに一致団結しており、今日ここに集まったのは、南スーダンの皆さんが平和を追求する上で、UNMISSは協力を惜しまないことを伝えたかったからです」と招待客に述べ、「一致団結することが強さにつながり、強固な社会や国家は人間性、多様性、寛容性を尊重することによって築かれる」と強調しました。

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迫力満点のばちさばきで力強い音を響かせた日本隊の和太鼓演奏 ©UNMISS/2016/JC McIlwaine

また、ヨハネス・テスファマリアム軍事部門司令官は、軍事部門のパトロールを強化し、治安が悪化している区域でUNMISSの存在感を示していくこと、地方にもUNMISSの中継地を設営し、パトロールを通じて文民保護へのためたゆまぬ努力をしていくことをアピールしました。

中国、エチオピア、日本、ネパールの部隊は、各国の文化を披露をしました。日本隊からは、息の揃った和太鼓演奏を隊員7人が披露しました。私の近くで聴いていた現地の学生からは、「鳥肌が立つ演奏だった」「なんであんなに真剣なんだろう」「演奏者のリズムがすごく揃ってる」という声が聞かれました。「太鼓は笑顔で楽しくダンスしながらやるもの」と思っているアフリカ人には、とても不思議な演奏だったのではと思います。

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踊りを披露するUNMISSエチオビア部隊 ©UNMISS/2016/JC McIlwaine

南スーダンの文化・青年・スポーツ大臣は式辞の中で「地元の人々にとってUNMISSの活動を把握することは難しいため、このような行事を引き続き開催し、啓発活動を続けて欲しい」と述べ、「UNMISSとの関係を一層強化していきたい」と話しました。

その後別のテントで、UNMISS広報部を始めとして、民政部、人権部、ジェンダーチーム、子どもの保護チーム、女性の保護チーム、国連警察といった部署の同僚が、それぞれの業務や優先課題を大臣や現地の人々に向けて説明しました。

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南スーダンの文化・青年・スポーツ大臣や地元の人々に活動内容を説明するUNMISS女性の保護チームメンバー ©UNMISS/2016/JC McIlwaine

そして待ちに待った昼食です。バングラデシュ、中国、エチオピア、インド、日本、ネパール、ルワンダの計7カ国の部隊が、それぞれの国の代表的な料理を準備しました。日本隊は、ちらし寿司、おでん、漬物を用意。浴衣姿で登場した女性隊員が食べ物の説明や盛り付けを行いました。日本隊のテントには終始人が集まり、日本食も大好評でした。また地元南スーダン料理も3種類提供され、上ナイル、バール・エル・ガザル、エクアトリア地方の郷土料理が紹介されました。

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ちらし寿司、おでん、漬物を給仕しながら、南スーダンの文化・青年・スポーツ大臣へ日本の文化を説明する日本隊隊員 ©UNMISS/2016/JC McIlwaine

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浴衣姿で日本料理の説明をした日本隊女性隊員 ©Japan HMEC

イベントは、歌、踊り、食を通じて様々な価値観を共有し、団結することの大切さを人々に伝えると同時に、UNMISSについてより深く理解してもらうことができ、大成功でした。特に、今回のイベントを準備していく中で、UNMISSの軍事、警察、文民部門が一丸となってアウトリーチ活動を行うことの重要性を感じました。組織全体で連携して現地の人々と接した時にこそ、我々の活動の本質をより分かりやすく伝えることができ、アウトトリーチ活動の効果が最大限に発揮されることを学びました。

個人的にも、軍部や警察スタッフの皆さんと一緒に仕事ができることは、他ではあまりできない経験であり、組織の強みを活かした業務につながると思います。このような大規模な仕事ができることは、自分にとっても大きなやりがいになり達成感にもつながりました。今後、このようなイベントを地方でも実施していくよう検討していく予定です。

今年8月にはケニアで第6回アフリカ開発会議が予定されており、南スーダンの抱える諸問題に、どのような提案、解決策が提示されるかも意識しながら、平和構築に向けたメッセージを工夫を重ねて人々へ発信していきたいと思います。

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文化・青年・スポーツ大臣、UNMISS事務総長副特別代表、UNMISS軍事部門司令官、広報部長とイベントを企画したアウトリーチチーム ©UNMISS/2016/JC McIlwaine