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シリーズ「南スーダンからアフリカ開発会議 (TICAD VI) を考える」 (10)

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2016年8月27~28日、ケニアで第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)が開催されます。

初めてアフリカで開催されるTICADに向けて、国連広報センターでは日本の自衛隊が国連PKOに参加し、また多くの日本人国連職員が活動する南スーダンを事例にして、様々なアクターの皆さんに、それぞれの立場からTICADで議題となる課題について考えていただくという特集をシリーズでお届けします。

シリーズ第10回は、国連人間居住計画(国連ハビタット)を取り上げます。南スーダンで国連ハビタットが実施しているプロジェクトには、日本政府が資金を拠出しているものがあります。

例えば、紛争で故郷を離れた国内避難民が再定住するための用地を整備したり、道路を修復する国連ハビタットの事業を日本が資金援助し、実際の敷地造成などの作業も日本の派遣施設隊が行うなど、両者が連携し、国づくりを支援しています。

第10回 国連人間居住計画(国連ハビタット)

~住民参加型の事業を通じた平和構築~

長期にわたる紛争の後、包括和平合意を経て2011年に独立した南スーダンは、今、復興・開発への長い道のりを歩み出しています。この道のりを阻む大きな課題の一つが洪水対策です。度重なる洪水により家屋や穀物が被害を受け、国内避難民たちの定住を困難なものにしているのです。また、安全な水や衛生設備へのアクセス等、居住環境の整備も重要な問題です。

国連ハビタットは、南スーダンにおいて日本政府支援を通じた住民参加型の事業を展開しています。国連ハビタットの住民参加型の事業は、ホストコミュニティと国内避難民・帰還民の協力関係を強化し、事業関係者の開発への取組に対するオーナーシップを高めることにより持続性を確保しています。

事業では専門家たちを現地に派遣し、洪水に強いコミュニティの構築、きれいな水の供給、衛生状態の改善、生計機会の提供を通じ、国内避難民・帰還民・そして難民を受け入れるホストコミュニティが共に計画と実施に参画しながら再統合を目指すという、迅速かつ確かな支援活動を行っています。

「国連ハビタットの住民参加型事業を通して、私たちは次世代のために力を合わせるというコミュニティの絆を学びました」と、ジュル川郡コミュニティ開発委員会会長のボン・マギエット氏は言います。

国土住宅都市開発省や州政府、地元自治体の協力を得て、ワウやジュバで実施した事業では、洪水管理対策を施し、地域の人々の住宅や農作地を含めた環境を守り、受益者たちの再統合・再定住をも支援しました。特に堤防やダムを建設し、長さ2㎞広さ5,000エーカーの土地を洪水から守り、増えすぎた水を居住地や農地から遠ざけることに成功しました。これは社会的に取り残された何千世帯もの人々に希望をもたらしました。

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持ち運び可能な太陽光エネルギーを利用した給水システム。日本が支援し、国連ハビタットが実施した洪水予防、水と衛生、生計向上プロジェクトの一部。ワウ地区アレルチョク地域で (UN-Habitat)

また、国内避難民や帰還民を受け入れるホストコミュニティを対象に、安全な水や衛生設備へのアクセス向上、健康や生活環境改善を図り、受益者たちの平和的な再統合に寄与しました。 ハンドポンプや井戸そして給水管を整備しても一握りの人々にしか利益をもたらさず、多くの人々は不衛生で安全ではない水での生活を強いられており、開放井戸や池、川からの水に頼っていました。

これに対し、国連ハビタットは給水システムの向上に取り組みました。ボーリング孔を削孔して水の供給容量を増量し、コミュニティへの給水のスケールアップを図ったのです。この取り組みによって、国内避難民、帰還民、そしてホストコミュニティ、約50万人の生活が改善する予定です。

「このプロジェクトは神がお与えくださったものだ。私たちコミュニティの女性や子どもは遠くまで水を汲みに行かなくてもよくなった」と、ワウのアレルチョクに住むディエング・ロング氏は言います。

「この水と衛生事業は浄水を供給するだけでなく、人々の健康状態を向上させ、子どもたちがコレラやチフスのような病気にかかるリスクを軽減しています。そして、大きな意味で、過去に部族紛争で戦った人々の平和定着に貢献しているのです」と南スーダンを担当する国連ハビタット シニアオフィサーのトーマス・チェランバは言います。

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住民たちも給水塔の進捗状況を確認 (UN-Habitat)

更に、コミュニティ住民たちは本事業への参画を通じて技術を習得することが出来ます。本事業の実施にあたっては、コミュニティと国連ハビタット間でコミュニティ実施協定を結んでおり、その一環として特に若者への技術習得機会を提供し、今後の生活設計に役立てています。

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日本の支援を得て開かれた、洪水予防、水と衛生、生計向上のための住民参加型プロジェクト計画の協議会の様子。ワウ地区アレルチョク地域で (UN-Habitat)

また、国内避難民、難民、帰還民及びホストコミュニティに対する支援以外に、自治体政府に対し、インフラ整備計画に関する能力向上プログラムも実施します。

「この事業を実施するまで、女性や子どもが水を遠くから汲んでくる際にレイプ事件に遭遇したり、部族間の争い巻き込まれて亡くなることで憎しみに発展するケースなど、住民たちは多くの問題で苦しんでいました」と国連ハビタットのプロジェクトマネージャー、オビオラ・アネネは言います。

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水汲みに来る住民たちとプロジェクトマネージャーのオビオラ・アネネさん(右端)(UN-Habitat)

紛争で立ち退きを余儀なくされた人々が故郷に戻り、生活をやり直すための第一歩を国連ハビタットは日本政府と共に支援しています。人々の意識改善に取り組み、国内避難民、難民、帰還民とホストコミュニティのネットワークを構築しています。

同時に、専門家を派遣し、コミュニティと協働して長きにわたり南スーダンの課題である洪水からの影響を最小限に抑える対策をたてています。これにより、気候変動への対応能力を強化するとともに、持続可能な住居、スラム改善、都市開発、政策や調査、衛生や安全な水の供給、生計等慢性的な問題への解決策を提案しているのです。

2016年1月29日、在南スーダン日本国大使館の紀谷大使が、南スーダン政府関係者、地方政府、事業の実施パートナーと共に現場を視察しました。現場に出向いていただくことで多くの人々にこの事業を知ってもらう機会となっています。また、南スーダン政府やコミュニティのプロジェクトに対するオーナーシップを高めることを含めよい結果に繋がっています。

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在南スーダン日本大使館の紀谷昌彦大使による現地視察 (UN-Habitat)

今後、更なる平和定着に貢献し持続可能な開発へと南スーダンを導くためにも、国連ハビタットは同プロジェクトの継続と更なるアップスケールを検討していく必要があると考えています。

住民参加型の事業を通じてコミュニティへの意識を高めて人々の絆を強める―平和定着への道は簡単ではありませんが、人々の心にある平和への願いと力を私たちは信じています。

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日本への感謝を表す住民 (UN-Habitat)

2016年7月に入り戦闘が激化、治安が不安定な状態となりましたが、ジュバに駐在するプロジェクトマネージャーのオビオラ・アネネは*国連安全保安局(UNDSS)と連携し、状況を注意深く見ながら業務を遂行しています。状況が許す限り、南スーダンの人々と協働したいという国連ハビタットの強い意志は変わりません。

*国連安全保安局(UNDSS)とは
国連の安全管理体制を統合し、強化する目的で2005年に設置された組織であり、運営上の支援、監視を提供し、国連のスタッフや家族の安全確保を行っている。また、世界を通じその計画や活動を安全に、効率よく実施できるように活動している。

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