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日本の国連加盟60周年記念シリーズ「国連を自分事に」(9)

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2016年、日本は国連加盟60周年を迎えます。

国連と日本のあゆみにおいて、それぞれの立場から国連の理念につながる活動や努力を積み重ねている方々が大勢います。重要な節目となる今年、国連広報センターでは、バラエティーに富んだ分野から国連を自分事と考えて行動している方々をご紹介します。

ー11月20日は、世界の子どもの日ですー

「国連を自分事に」シリーズ第9回は、2017年3月に日本人としては初めて「子どもの権利委員会」委員に就任する、弁護士の大谷美紀子さんです。高校生の頃から国際社会のために仕事がしたいと考え、国連を意識するようになった大谷さんは、ニューヨーク留学中の国連でのインターン、国連の第三委員会への日本政府代表代理、そして日本弁護士連合会などでのNGO活動という三つの異なる立場から、国連の取り組む人権の課題に関わってきました。18歳未満の子どもの人権を保障する「子どもの権利条約」の196締約国・地域の条約履行状況を審査する委員会の委員に就任するにあたっての意気込みなどについてお話をうかがいました。

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大谷美紀子 (オオタニ ミキコ)

【上智大学法学部(国際関係法学科)学士、コロンビア大学国際公共政策大学院(人権人道問題)修士、東京大学法学政治学研究科専修コース(国際法)修士。米国留学中に国連人権高等弁務官事務所でインターンをし、帰国後は国際家事事件専門の弁護士としての業務に加えて、国際人権問題、特に女性・子ども・外国人の人権、人権教育の分野で活動。現在はLAWASIA(The Law Association for Asia and the Pacific)家族法及び家族の権利セクション日本代表や、アジア国際法学会日本協会、国際人権法学会、家族<社会と法>学会の理事等を務める。2016年6月、国連子どもの権利委員会委員の選挙で当選、2017年3月委員に就任の予定。】

根本:6月の委員選挙では最多得票でご当選されました。おめでとうございます!条約機関の選挙も、ハラハラドキドキするものですか?

大谷:最後までハラハラドキドキの連続でした。そもそも、何の選挙にせよ、選挙に出るということ自体が人生初めてのことでしたし、候補者も多く、厳しい選挙でした。

根本:新聞のインタビュー記事を拝見して知ったのですが、子どもの頃、国連職員になりたいと考えていたんですって?

大谷:小さい頃から持っていた、人のために仕事がしたい、社会の役に立ちたいという問題意識が広がった結果、ストレートに国連、と思いました。おそらく小さい時からたくさん本を読む中で、戦争とは、人間とは、ということについて一生懸命考えていたことも影響しているのでしょう。大学で国際政治を勉強するうちに、司法試験を受けて弁護士になるという道に居たり、弁護士をするうちに人権問題に関心を持ち、徐々に自分なりのアプローチと関心分野を絞っていって今に至っている、という感じでしょうか。

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国連での「平和の文化に関するハイレベル・フォーラム」(大谷さん提供)

根本:大谷さんも私もニューヨークのコロンビア大学の国際関係論の大学院に留学しましたね。時期は私の方が少し早かったんですが。大谷さん、子連れの留学だったんですか?

大谷:子どもも夫も一緒にいきました。夫も付いていく以上は自分も勉強したいということで、必死で勉強してニューヨーク大学のロースクールに入りました。

根本:社会人経験を積んだ上での留学でしたから、勉強できる時間のありがたさと問題意識の強さに関しては、すごく貪欲だったのではないでしょうか?

大谷:私が最も勉強したかったのが人権教育と国連の人権活動で、多角的な視点から人権を勉強したいと強く思っていました。コロンビアのTeacher's College(教育学大学院)には人権教育の講義があってその授業を受けましたね。弁護士でありながら、人権問題は法的なアプローチだけでなく、外交、経済、そして教育など多面的にアプローチすることが必要だと感じていたのです。

そして国際人権法は国連を中心に発展してきたものですから、国連でインターンをすることは入学前から心に決め、国連人権高等弁務官事務所のニューヨーク・オフィスでインターンとして活動するチャンスに恵まれました。

インターンという立場ではありましたが、中から国連を見ることができたのは、非常に大きかったですね。各国代表がどのように交渉するのか、専門家がどのような働きをしているのか、それを事務局サイドがどのようにサポートするのかをつぶさに見ることができました。

国連が無力だと批判する人もいますが、世界の色々な問題を解決するグローバルなフォーラムとして国連は重要だという私の思いは今日までずっと変わりません。特に人権の分野に関しては国連が中心、国連で人権の規範や実施のための制度を作ってきたし、あらゆる関係機関・関係者が集まって人権問題を議論し発展させていく場は国連だ、という意識はインターンを通じてより高まりましたね。留学しなければ、今の自分はないと感じています。

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国際的な子どもの養育費回収に関する会議(大谷さん提供)

根本:留学を終えて帰国して、家族法を専門分野にしようとお考えになったきっかけは?

大谷:・留学前に弁護士を7年やっていましたが、当時日本の弁護士は専門化が進んでいませんでした。どんな案件でも、一晩で勉強して対処できるのが良い弁護士というイメージだったんです。でも、経験とともに、向き不向き、好き嫌いがだんだんわかってきますよね。私は圧倒的に家族法が好きだったんです。留学中に各国の弁護士資格を持っている人やアメリカの弁護士との交流がありましたが、彼らは専門分野を持っているんですね。

専門性を持つことは素晴らしいことだと、彼らを見ていて思いました。専門性を絞ることで特化して常にスキルを磨いて情報をアップデートできますし、一番関心が強くてやりがいがある分野で仕事をする方がクライアントにとってもポジティブなことではないかと考えたんです。 私の留学は弁護士業務のための留学ではありませんでしたが、現地で見聞きしたことや得た感覚は帰国してからも実行しよう、と。

「家族法が好き」という気持ちと並んで、2年間の留学生活を通して「ある国で暮らす外国人の立場」を経験したことで、日本で暮らす外国人の家族問題の案件に専門家として貢献したい、とも思いました。日本で暮らす外国人が家族問題を相談できる弁護士が少ないことは元々知っていたので、そのニーズに自分が応えたい、と。

外国人であることの心細さ、問題を抱えたときに専門家に相談することの難しさを感じたからこそ、持つに至った思いです。今では、扱っている案件のおそらく約8割が外国人や外国に住む日本人などの国際的なケースです。関連するNGO・市民社会での活動にも、積極的に関わってきました。

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国連総会第三委員会(大谷さん提供)

根本:大谷さんは、2005年から2006年にかけて日本政府代表代理として国連総会のもとで人権を話し合う第三委員会の議論に参加されました。これも貴重な経験ですね。

大谷:60年前に日本が国連に加盟した際、市川房枝さんなど女性運動のリーダーが、外務大臣に対し国連総会の政府代表団に民間人女性を含めてほしいと要請し、これが受け入れられたという経緯があります。そこで例年、国際的な女性団体で経済社会理事会の協議資格を有するNGOの日本支部10団体及び個人会員から構成される国連NGO国内女性委員会からの推薦に基づき、政府から任命された民間人女性が日本政府の代表団の一員として国連総会第三委員会に出席しているのです。

私は、同10団体の一つである日本女性法律家協会、及び国連NGO国内婦人委員会の推薦を受け、政府代表代理の任命を受けました。政府内の意思決定がどのようになされるのか、また、政府が国連・NGO・専門家をどのように見ているのかを中から見る機会を持てたことは、非常に勉強になりました。

こうして国連、NGO、政府の立場から人権問題に関わってきた経験を通じて、多角的な視点とバランス感覚が養われたと感じています。

子どもの権利委員会の委員の仕事では、中立・独立の立場で各国政府やNGOと関わることが求められますので、いままでの経験が役に立つと思いますし、役に立つように活かしていこうと思っています。NGOの立場からすれば、条約機関の委員が、自分たちの訴えたいことを汲んで政府に厳しい勧告をしてくれると嬉しいでしょうが、一方で政府の立場からすると、委員は真にその国の状況を理解して勧告をしているのだろうかと懐疑的に見えることもあるでしょう。その中で、専門家として、各国での子どもの権利条約の実施が進むような勧告を出していきたいと考えています。

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国連民主主義基金によるイラク弁護士のための国際人権法トレーニング(大谷さん提供)

根本:さて、子どもの権利について、世界そして日本で、何が喫緊の課題だとお感じになりますか?

大谷:世界では子どもが武力紛争のなかで兵士として使われるという児童兵士の問題があります。また、移民問題が国際社会の緊急の政治課題になっている中で、移民として国境を越える子どもの問題は、大変深刻です。また、5歳未満の乳幼児の死亡は、防げるはずの死亡です。日本について言うと、子どもの権利、という概念が本質的には受け入れられていないことがあちこちに垣間見えます。

子どもの権利条約の下で世界レベルで語られる諸課題を日本の子どもの人権問題として受け止めていないことが根底にあると思います。児童ポルノについて日本は寛容だと世界から認識されていますし、いじめといじめ苦による自殺は、子どもの生命、発達の権利の侵害ですね。日本のシングルマザーで、父親から養育費をもらっている率が20%にしか過ぎません。こうした諸課題は日本では社会問題としては問題視されても、子どもの人権という観点が弱いと感じています。

そういう意味では、今年から実施が始まった「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進は、途上国の問題と受け取られがちな課題について日本の国内の課題につなげながらキャンペーンしていく良い機会だと思っています。「子どもに対する暴力をなくす」というターゲットは、日本では家庭での虐待・体罰、学校でのいじめをなくすといった具体的な課題にも置き換えることができますよね。子どもの権利委員会の委員に就任することで、子どもの権利の問題について発言して社会の関心を喚起する機会をいただいた訳ですから、その立場を活かして積極的に問題提起していきたいと思います。

根本:是非SDGsキャンペーンではご一緒しましょう。力を貸してください!ちなみに、次の対日審査はいつですか?

大谷:今年の5月が政府側からの報告書の提出期限でした。委員会で議論されるのは2018年頃になるのではないでしょうか。その頃私は委員ですが、日本出身ということで日本の審査の議論には関われないことになっています。

根本:大谷さんは若い世代の方々にどんなメッセージを伝えたいとお考えですか?

大谷:みんな若いうちには夢を持っていても、大人になるにつれて諦めてしまうのが残念ですね。何がやりたいかはっきりしないことが多いのかもしれません。それでも良いと思います。ただ、それを形にしていくために、色々な勉強をしたり、様々な人と会って話を聞いて追求していってほしいですね。逆に、あいまいなままだと、途中で諦めやすくなるのではないかと感じます。

私自身、高校生の頃は、社会の役に立ちたい、そのためには国連職員になりたい、という漠然とした思いでしたが、大学で国際政治を勉強するうちに、司法試験を受けて弁護士になるという道に至り、弁護士をするうちに人権問題に関心を持ち、徐々にアプローチや特に関心分野を絞っていきました。どれが自分に合っているかを見つけるのに時間がかかりました(笑)! 

日本では大学に入る頃にやりたいことが見つかっていないと、時間をかけて見つけることが許されないような印象を受けますが、留学時代の友人は30代でやりたいことを見つけて大学院に来ている人も沢山いました。紆余曲折してもいいので、「どうせダメだろう」などと見切りをつけずに、思いを持ち続けて欲しいですね!

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インタビュー後の記念撮影(左:大谷さん 右: 根本所長)©UNIC Tokyo