潘基文(パン・ギムン)国連事務総長による寄稿 - 「若者のエンパワーメントを」 (2016年8月)

若者は単に仕事に就くだけでなく、仕事を作り出すこともできると国連は考えています。

2016年のオリンピックではすでに、数多くの記録が生まれていますが、今年の大会は最初の競技が始まる前から、母国と呼べるものを持たないアスリートたちに参加を認めることにより、早くも歴史に名を残すことになりました。

私は、史上初のオリンピック難民選手団の結成に向け、親身になってリーダーシップを発揮したトーマス・バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長に感謝の意を表します。私は難民選手団のメンバーにもお会いしました。選手たちは、家を失うことによる恐怖と苦痛に耐え抜くという、並々ならぬ力を発揮しています。

過去を変えることはできませんが、こうしたアスリートたちは、最も不可能に見えることでも実現が可能なことを立証しています。表彰台に立てるかどうかに関係なく、難民選手団の選手たちはすでに偉大なる勝者となっているのです。

私はこれら若き難民たちに、全世界の何百万人もの若者が持つ情熱と希望を感じました。

貧困の蔓延、憎悪に満ちた差別、暴力的過激主義の台頭、環境破壊その他、多くのグローバルな脅威が迫る今の時代に、私たちは若者をはじめ、最も大きな影響を受けた人々の力を、その解決に向けて活用しなければなりません。

国連は若者のために、そして若者とともに活動することを約束しています。私は国連史上初のユース担当特使にアハマド・アルヘンダウィ氏を任命しましたが、彼は当時28歳でした。私たちは、すべての若者が当然受けるべき教育、健康、雇用、そして権利を確実に手にできるよう、現場での活動を続けています。

年1回開催される国連経済社会理事会ユース・フォーラムには、政府高官と若手活動家が参集し、喫緊のグローバルな懸案事項について話し合っています。また、国連は全世界の平和と開発の推進を図るため、若者が指導し、若者に焦点を絞った組織との連携も強めています。

「国際青少年デー(2016年8月2日)」に寄せるアハマド・アルヘンダウィ・ユース担当国連事務総長特使のメッセージ(英語)

毎年8月12日の「国際青少年デー」は、実質的な行動を約束する機会とすべきです。私は今年、この機会を活用し、若者のエンパワーメントを図る新たな措置を発表しました。

私が是正に努めている深刻な不正の一つに、若者の安全保障問題からの排除があります。若者に戦場で命を落とすだけの価値があるとみなされているのなら、リーダーによる和平交渉の場にも、若者を参加させるべきことは明らかだと思われるからです。

国連安全保障理事会は昨年12月、若き平和構築者の支援に関する決議2250を採択し、このことをようやく認識しました。

この過去に類を見ない措置の進捗状況について検討するため、私は新たに諮問グループを設置し、そのメンバーを発表しました。他の諮問グループの大半がそうであるように、今回のグループも多様かつ国際的な構成となっていますが、問題の当事者である人々がメンバーに加わっているという利点を兼ね備えています。

事実、メンバーのほぼ半数は若者です。その中には、父親を戦争で亡くしたメンバーがいます。銃撃を受けながら、生き残ったメンバーもいます。そして難民も含まれています。私は、メンバー全員の知見を組み合わせてでき上がる報告書が、新たな前進へとつながることを期待しています。

若者には、社会に貢献できる能力と活力がすべて備わっているにもかかわらず、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会がありません。世界的に見て、7,000万人以上が失業者となっています。

この課題に立ち向かうため、私は新たにヴェルナー・ファイマン元オーストリア首相をユース雇用担当特使に任命しました。ファイマン特使は、ユース担当特使のほか、国際労働機関(ILO)をはじめとする国連の専門家と連携し、状況の改善を図ることになっています。

若者は単に仕事に就くだけでなく、仕事を作り出すこともできると国連は考えています。私は若者に対し、どんな起業家の成功も、失敗の山の上に築かれているという認識のもと、リスクを取るよう呼びかけています。

若者はどんな場所にいようとも、人間、地球、繁栄のための私たちのグローバルな計画「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のビジョンの実現に貢献できます。

国連は今年、「持続可能な開発目標(SDGs)のための国連ヤングリーダーズ」の第1陣を発表します。ヤングリーダーとなるのは、1万8,000人を超える候補者の中から選ばれた17人の優秀な若者たちです。私たちは9月、ヤングリーダーたちを国連本部に招き、私たちが共有する未来に向けたアイデアを聞くことになっています。

こうした措置は小幅で、ほとんど象徴的なものに見えるかもしれません。結局のところ、17人の持続可能な開発リーダーは、私たちが必要とする変革を代表するものにすぎません。若者と平和構築に関する諮問グループのメンバーも、わずかな数に限られています。新たな特使の任命も、流れを変えるほどのものには見えないかもしれません。

もちろん、こうした措置でグローバルな問題を一気に解決できるわけではないことを私は理解しています。だからこそ、若者をはじめとするすべての人々に、その役割を果たすよう呼びかけているのです。

私はどこへ行っても、機会あるごとに、若者にグローバル市民となり、声を上げ、私たちの世界を変えるよう強く訴えています。何万人もの若者たちはすでに、先頭に立って取り組みを進め、これを成功させています。目標を達成するためには、さらに数百万人による取り組みが必要です。

塵も積もれば山となります。私がこの腕に抱いていた子どもたちも、今では自分たちの子どもを抱いています。若者が毎日、少しずつ成長する様子は気づかないかもしれませんが、やがてその姿に劇的な変化が見られることは間違いありません。

私たちが世界の若者を着実に支援すれば、若者たちは今後数世代にわたり、より安全で公平、かつ持続可能な未来を創ることができるのです。

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