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NHK報道の変調 ~アジア軍事報道で引き合いに出される中国: シンガポールエアショーを通して~

2014年02月26日 17時35分 JST | 更新 2014年04月28日 18時12分 JST

シンガポールエアショーの一般公開を見てきました。民間用に加え軍事用の技術製品向けアジア最大のトレードショーです。最後の二日間は関係者以外にも一般公開されます。チャンギ空港という世界有数の航空拠点と、国防への理解をもってもらう目的でしょう。

民間機では、富裕層御用達プライベートジェトのガルフストリーム等などの機体展示に加えて、日本で議論になっているオスプレイの機体展示と飛行デモもあり、一般客もオスプレイの中に入ることできました。オスプレイは今回3機がエアショーのために沖縄の普天間基地から飛来。オスプレイがいかに日米同盟や災害救助に貢献しているかを記した、日本向けと思われる英文パンフレットが入ってました。

次の日にエアショーのNHK記事を読んで驚くことに。

会場で目立ったのは、東南アジア各国の軍や防衛産業の関係者です。中国との間で、南シナ海の島々の領有権を巡る対立が深まっていることが背景にあります。(中略)こうした国々に積極的な売り込みを図っていたのが、アジア重視の国防戦略を掲げるアメリカから参加した企業です。(中略)一方の中国も航空機メーカーや軍事関連企業がこぞって出展していました。(中略)海洋進出の鍵を握る航空兵器技術の向上をアピールするねらいがあったとみられます。

過熱するアジアの航空兵器市場。南シナ海での緊張の高まりを受け、アメリカと中国のせめぎ合いが強まっています。



NHK: アジア最大の航空ショー 各国の思惑は ※現在はリンク切れ

シンガポールエアショーで中国の存在感はあったのか

シンガポールエアショーなのに、記事の半分以上を中国への記述になぜか費やしています。確かにアジアの軍事関係では中国の動向が最注目ですが、アジアターゲットのトレードショーで東南アジア各国の動向があるのは当然で、「目立った」と言うには今更な注目の仕方に見えます。では記事にあるように本当に中国企業が「こぞって出展」していたのか見てみましょう。出展企業数を確認します。

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Singapore AirShow 2014: Exhibitors & Products Listing から筆者作成

中国は全体で8位の出展企業数、香港の5社をいれてもわずかに19社に過ぎません。1位はアメリカ158社と圧倒的。そして日本は7位の29社で、中国より出展企業数が多いのです。もちろん、民間機ビジネスも半数あるので、日系企業の参加は武器輸出三原則にふれていない部分でしょう。

中国企業は飛行デモもなく、ブース参加が中心です。これを「中国もこぞって出展」「技術の向上をアピール」と言われても、現実の参加内容とにギャップがあります。中国を取り上げるのなら、開発中の小型旅客機MRJで大きなブースを出していた日本の三菱航空機を取り上げていいんじゃないかという印象です。

アジアの兵器市場は加熱しているのか

もう一つの疑問です。「過熱するアジアの航空兵器市場。南シナ海での緊張の高まりを受け」とNHKは書いています。これを考えてみます。航空兵器貿易額を取り出すのは難しいため、各国の軍事費総額で考えてみます。

NHKが言及した南シナ海での緊張の高まりとは、南沙諸島での紛争。南沙諸島に領有権を主張している国は、中国・フィリピン・ベトナム・台湾・マレーシア・ブルネイとありますが、今回は中国の主要隣接国とシンガポールを取り上げます。

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Stockholm International Peace Research Institute (SIPRI): SIPRI military expenditure database から筆者作成

IMF: World Economic Outlook Database から筆者作成

4つのグループに分けられます。

中国、インド、ベトナム高度経済成長期の経済力伸長と同率で、軍事費を増大
韓国、台湾経済力伸長と同率で、軍事費を増大
フィリピン、シンガポール、マレーシア経済力は伸びても、軍事費は抑制
日本経済力は伸びず、軍事費を維持

これを各国で見ます。

  • 中国: 金額でも伸び率でもトップで、軍拡にひた走っている。
  • インド: パキスタンとの紛争が絶えず中国とも領土問題がある。
  • ベトナム: 南沙諸島を抱え、軍事費総額は小さいが伸び率が高い。
  • 韓国・台湾: 高度経済成長期が終了しているため目立たないが、軍事費を自国経済成長率並に維持。それぞれ北朝鮮・中国との間に平和条約による最終解決がついておらず、今でも戦争再燃の危険がある。
  • 日本: 国家予算軍事費にGDP1%枠が日本人には注目されていますが、日本も軍事費が大きい国の一つ。世界1位アメリカ、2位中国から下って、5位につける軍事大国が日本。

対中国の南沙諸島関係国ではベトナムを除き、経済力が伸びても軍事費に伸びを回すのは節制しており、それは激しく対立しているフィリピンでも同様です。予算額が小さいベトナム一国で「過熱するアジアの航空兵器市場。南シナ海での緊張の高まりを受け」というNHK記事の取り上げ方は疑問が残ります。

新しい経営委員との関連性はあるのか?

NHKの不思議な軍事報道は、直近でタイでもありました。下記記事でも、日本のODAとの関連は不透明にもかかわらず、いちいち中国軍を引き合いに出しています。

今回の演習には民生支援の訓練に限って中国軍が初めて参加し、学校の校舎を建設していて、今回の日本のODAの活用は、援助や支援の分野にも積極的に乗り出している中国の動きを意識したものともいえます。

NHK: 自衛隊の医療支援とODA 初の連携

イレギュラーは、一件では偶然ですが、二件続くと身構えます。今話題になっている新しい経営委員のの人事が頭をかすめます。しかし、検証困難なこともあってか、一般に海外報道の品質は国内報道より低い印象が海外居住者にはあり、単純な品質問題である可能性もあります。