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シンガポール国立大学「学費や家賃がタダ?!」の都市伝説と、日本の奨学金制度

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シンガポール国立大学の都市伝説


イギリスのタイムズ・ハイアー・エデュケーション (THE) が、アジア大学ランキングを発表しました。

3年連続1位を維持してきた東京大学が7位に転落し、代わってシンガポール国立大学 (National University of Singapore、地元ではNUS(えぬゆぅえす)と呼ばれる) が1位になったことで、脚光を浴びています。

日本人にとっての海外の大学は多くがそうであるように、シンガポール国立大学も日本人関係者がほとんどいません。

そのため、関係者がエッジを効かせて一部分を切り取って出した記事や、二次/三次情報を切り貼りしたまとめサイトなどを経由して、摩訶不思議なイメージが日本に出回っています。そのシンガポール国立大学の都市伝説を追ってみます。

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※写真はシンガポール国立大学。筆者撮影

シンガポール国立大学は学費や家賃がタダ?!


「シンガポール国立大学は学費が無料」とは、一部のみが真実で大半が嘘です。対象が限定される事象なのに、無制限のような印象を与える「主語が大きい」表現です。

シンガポールは欧州の極一部の国にあるような大学学費無料の国ではないので、「大学は無料ではない」ですし、「シンガポール国立大学学生だからといって、学生全員が無料にはならない」が当たり前の結論です。

シンガポール国立大学の学費


シンガポール国立大学の1年間の授業料は、ここに記載があります。一部の学部を抜き出してみます。単位はシンガポールドルで、$1を80円として換算します。

NUS学部と専攻 国民 永住者 学費減免留学生 減免なし留学生
人文社会、情報処理、工学、理学 $8,050 (64万円) $11,250 (90万円) $17,100 (137万円) $29,350 (235万円)
法律 $12,500 (100万円) $17,500 (140万円) $26,650 (213万円) $37,750 (302万円)
医学部医学科 $26,400 (211万円) $36,950 (296万円) $55,450 (444万円) $141,100 (1,128万円)

減免なし留学生(外国人)の値段を、学費の"定価"と見てよいでしょう。

注目すべきは、

  • 噂は嘘っぱちで、学費はタダではない。
  • 国民と永住者と外国人とで学費が異なる
  • 外国人にも申請可能な政府の学費減免がある
  • 専攻で学費が異なる

ことです。

専攻で学費が異なるのは、日本で国立大学では学費は一律ですが、私立大学で馴染みがあります。学費は国民か永住者か外国人かで異なり、外国人は減免がなければ国民より3倍以上も高額です。

これが減免を申請すれば、2倍前後にまで縮まりますが、それでも学費は外国人の方がはるかに高額です。社会福祉を提供する必要がない外国人の学費が、国民より高額になるというのは、割りと一般的に見られます。

シンガポール教育省が提供している学費減免制度は、Tuition Grant というものです。

Tuition Grant の受給資格は、

  • 対象校の学生
  • 永住者と外国人は、卒業後3年間のシンガポールでの就労義務があること

です。

対象校は、シンガポール国立大学だけでなく、今回アジア2位にランクインしているナンヤン工科大学や、シンガポール経営大学といった国立校が対象で、大学以外でも日本の高専に相当するポリテクニク等も含まれます。

Tuition Grantは対象校に在籍していると、申請さえすれば外国人も原則として受給できます。ハードルは対象校に入学できるかどうか、ということです。

外国人受給者は、シンガポール教育省の発表(2014年)によると、ポリテクニクが6%で一学年あたり1,700人、大学では13%で2,200人になります。予算規模では、外国人向けはS$2.1億 (168億円) で、高等教育予算の10%よりかは小さい程度とのことですが、相当な規模になっています。

大学院など更に進学したいTuition Grant受領留学生は、シンガポールでの就労を延期できます。年に平均250人が就労を延期させています。

制度としては、国民はTuition Grantを自動申請となり、学費の"定価"から減免を受けますが、就労などの義務がないので、義務がないまま権利を得られる仕組みです。

永住者と外国人には、卒業後3年間のシンガポールでの就労義務があります。就職先を政府は指示せず、留学生が自分で就職活動をして探す必要があります。逆に言うと、3年間シンガポールで働くだけで、学費の減免を受けられます

よって、対象大学の外国人学生も永住者学生も大半がTuition Grantを受けていると、シンガポール教育省は言っています(2011年)。途中で学業や卒業後の就労を中断すれば、受領したTuition Grantの金額から就業期間を減額した金額に10%の年間利息をつけたペナルティを払う必要があります。

まとめ: 国立大学の学生は政府の学費減免を受けられるが、国民・永住者・外国人で額が違う。
まとめ: 外国人が学費減免を受けると、卒業後3年間のシンガポールでの就労義務がある。

医学部進学のための誓約


シンガポール国立大学医学部医学科では、学費の"定価"との差額が、国民では年900万円にもなります。5年就学のため総額で4500万円にもなることから分かるように、相当な費用をかけて医師の養成が行われています。

そのため、卒業後に、国民は5年間、永住者と外国人は6年間、シンガポール政府が指示する公務に就くことが入学の前提条件です。大半が医療業務です。この義務を途中で破棄すれば、ペナルティとして支払う必要があります。

「高等教育を受けた者が専業主ふになる是非」の議論があります。シンガポールでは有名校でも通常の学部であれば国民であれば国からの指針は特にありませんが、医学部のような政府助成が膨大なものであれば、ペナルティが明確に設定されています。

まとめ: 補助金が莫大なシンガポール国立大学医学部では、卒業後に5~6年間公務に就く義務がある。

日本では、国民も外国人も学費は同額です。国籍条件が付かないような、政府から大学への交付金の構造になっている理由は不明ですが、シンガポールの学費減免の外国人は卒業後の3年間の就労義務があります。

これは移民国家のシンガポールが、優秀な留学生を将来の国民候補と見ているからです。大学に4年間通い、その後3年間就労すれば、シンガポールに7年間滞在することになります。

人生の1/3をシンガポールですごし、すっかり染められるわけです。しかも対象は、国立大学などに入学できる優秀な留学生ばかりですが、彼らの母国は近隣の発展途上国であることが多いです。

アジアで最優秀の高等教育を受けられ、高給が稼げるシンガポールでの就労へも直結することは、近隣諸国の学生には極めて魅力的です。

シンガポールでも、最近は出生率低下から高齢化社会の進展が加速しています。これを防ぐために、移民の呼びこみを政府は決定しています。

移民なら誰でも良いわけでなく、単純労働者ビザでは何年住んでも永住権の申請の権利がない国であり、社会福祉の対象になる可能性が小さく、国に貢献できると想定される人が、選別の上で歓迎されます。

本人の意志次第とはいえ、シンガポールの留学生は、母国に帰るより、経済的に豊かなシンガポールで永住権をとって、ゆくゆくは国民になるレールが敷かれているわけです。実際、シンガポールでの外国人奨学生は、8割以上がシンガポールに住み続けているとの国会答弁があります。

日本は移民国家ではないので、優秀な留学生→帰化、との一直線にはならないとは思いますが、国際関係での重要な人的リソース活用策として、シンガポールの留学生制度や米国のフルブライト奨学金から、学べることは多いと思われます。

まとめ: 移民国家シンガポールが外国人に学費減免を提供するのは、永住・帰化が狙い。

シンガポールでの国立大学留学生への奨学金


シンガポール国立大学の学費は無料ではない、ということが分かりました。また、シンガポール政府教育省の留学生用の減免を受けても、家賃タダどころか、外国人だと国民の2倍の学費です。

それではネットの噂は、返還義務が無い奨学金を受けて学費負担が無くなるという意味でしょうか。

シンガポール国立大学での奨学金は、ここで参照できます。

※シンガポールで返還義務があるものは、優遇条件でも、奨学金でなくローンとして扱われます。

大学や各学部や政府や企業の大学外機関が出すものも含めて、多種多様な奨学金があります。その中でも「シンガポール国立大学は無料」という噂の出処の一つと想定される大規模なシンガポール政府奨学金をあげます。ASEAN学部生奨学金です。


シンガポール国籍を除くASEAN出身フルタイム学生はこの奨学金に応募可能です。シンガポール国立大学以外にも、ナンヤン工科大学や、シンガポール経営大学といった国立大学などでも、この奨学金の対象です。

まとめ: 政府奨学金の対象はシンガポール国立大学のみでない。国立大学生が対象だ。

近隣発展途上国から優秀な学生を青田刈りするシンガポール

シンガポールはASEAN (東南アジア諸国連合) の主要加盟国です。ASEAN加盟国は、

  • ブルネイ
  • カンボジア
  • インドネシア
  • ラオス
  • マレーシア
  • ミャンマー
  • フィリピン
  • シンガポール
  • タイ
  • ベトナム

であり、多くが発展途上国です。

ASEAN学部生奨学金の受領は、卒業後3年間のシンガポールでの就業が必須なTuition Grantの申請が必須です。ASEAN学部生奨学金がASEAN出身者を対象にしているということは、近隣諸国からの優秀学生をシンガポールに吸い上げている構図があります。

勿論、送り出し国にも、優秀な学生を金銭負担無しに先進国で鍛えられる、将来的に母国への送金や貢献を期待できるメリットもあり、また最終的に進路を決めるのは学生自身とはいえ、送り出し国には両刃の剣になっている側面もあります。

まとめ: シンガポール政府の奨学金は近隣諸国出身の優秀学生の青田刈りだ。

2001年から2005年と少し古いデータですが、奨学金受領の結論としては、奨学金受領者は学部生は全体の14%、院生では30%だと、シンガポール教育省は発表しています。

さすがにデータが古く、特に院生は今ではこれより高いと思いますが、確認できる公式の値はこれになります。

当然、奨学金によっては、生活費や母国への航空券付きの手厚いものから、学費の一部負担のみのものまで色々です。日本よりは返還義務なし奨学生が多いとしても、「シンガポール国立大学は無料」という言葉とは大きな乖離があります

奨学金受領の学部生の1/3が国民、つまり2/3は外国人と永住者。奨学金受領の院生は1/4が国民、つまり3/4は外国人と永住者です。

2011年になっても、外国人留学生の35%がなんらかの奨学金を受領していると発表されています。65%はTuition Grantで減免を受けたとしても、国民よりはるかに高い学費を、自腹で払っている留学生たちだということです。

※奨学金受領率は国立大学全体での平均ですが、受領者がシンガポール国立大学生に偏っており有利であることは考えにくいです。
2000年にシンガポール経営大学が国立大学の3校目として開校した直後の数字であるだけでなく、国立大学の2校目は今回アジア2位であったナンヤン工科大学であり、国内評価としての優劣は専攻によるからです。

まとめ:奨学金受領者は、国立大学学部生が14%、院生が30%。学生全員が無料ではない。
まとめ:国立大学留学生の35%は奨学金を受けており、65%は学費を自腹で払っている。留学生全員が無料ではない。

日本・シンガポール奨学金比較


日本にも外国人留学生への政府奨学金がありましたよね?

シンガポールでの留学生向け奨学金の話をすると、「日本でも外国人留学生への奨学金での大盤振る舞いがあったよね」という話になります。文部科学省の奨学金です。

これとASEAN学部生奨学金を比べてみましょう。

日本とシンガポールの政府奨学金比較

文部科学省奨学金 学部留学生(日本)ASEAN学部生奨学金(シンガポール)
人数150名 (文科省奨学生総数11,266人)未公表(全ての政府奨学生で毎年900人選出)
学費免除支給
語学教育日本語1年間なし
奨学金月額11万7千円(年140.4万円)年S$5,800 (年46万円)
その他往復航空券、宿舎なし
奨学金継続条件なし3.5/5(評価B)以上の成績
義務なし3年間のシンガポールでの就労

日本がシンガポールより手厚いのが分かります。

日本の文科省奨学金では、学費・宿舎・往復航空券が提供されるのが共通で、奨学金によって支給期間・奨学金金額・日本語教育期間が異なります。研究留学生(院生)や高専などを含め、総数で11,266人の留学生が奨学金を受けてます。

日本の文科省奨学金では一度奨学生になると期間を通しての支給が決まりますが、シンガポールの奨学金では支給継続に成績が条件になります。母国では最優秀だった学生でも、母国語での学習から、英語での学習に切り替わり、異国での暮らしになることから、B以上のグレードは楽々とはいきません。

学部の外国人留学生に付与されるシンガポール政府奨学金は、年に900名とのことです。付与の内容は、学費・生活費等であり、一人あたりの政府支出は平均S$2.5万(200万円)と発表されています。

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※写真はケントリッジキャンパスを走るシンガポール国立大学の無料シャトルバス。敷地が広大なので、歩くと大変です。

高まる反移民感情「外国人留学生に金を使うより自国民の学費に!」


シンガポールでは、増え続ける移民に対して、2009年の経済危機(リーマンショック)以降、国民の反発が明確になりました。シンガポールでは人口の1/3が外国人で、現在も増えています。

しかし、2011年総選挙で与党は勝利しながらも得票率が低下する打撃をうけたことで、移民のビザ発給が厳格化され伸びはゆるやかになりました。このネガティブな感情は、留学生に対しても同様です。

留学生比率は、国立大学ごとの公式数値は不明です。シンガポール教育省によると2011年には当時3つしかない国立大学の平均として、外国人留学生が18%であり、同様に外国人ですが永住者は4%でした。外国人留学生比率が20%を超えないように調整しているとのことです。

※外国人はほぼ受領しているとした、外国人のTuition Grant受領者は13%で、18%とギャップあります。差分の5%は外国人の受け入れ率が減った可能性と、他に奨学金を受領しているがありますが、開示無く不明です。

東大の留学生比率は、学部で2.4%、大学院で19.4%、研究所で38.9%。総計で10.9%とのことです。

シンガポールでの自国民への政府奨学金


シンガポールで国民が外国人奨学生に反発するのは、言うまでもなく、自国民の教育環境と比べているからです。自国民も国立大学に進学したいのに、留学生に学籍を取られているとの印象もあります。

シンガポールでの国民への奨学金は、人数が少数限定された、シンガポールらしいエリート主義あふれるものです。

シンガポールで国民への政府奨学金と呼ばれるものは、各省庁が提供しているものや公務員局 (PSC) が提供しているものがあり、その中でも最高峰のものがPSC奨学金の一部である大統領奨学金 (President's Scholarship) です。

PSCの対象になると、氏名・出身校・進学先と専攻が公表され、大統領奨学生は地元ニュースでも大きく報道されます。2015年はPSC奨学生は75名大統領奨学生は4名でした。大統領奨学生はシンガポールの各界でのトップリーダーへの登竜門です。

勿論、義務 (bond) があります。シンガポールを含めた留学国によって異なる卒業後4年から6年の官僚としての就業義務です。

これは、官僚に興味があればまたとない出世コースですし、興味がなければ応募をためらわせます。公務には軍役も含まれますが、応募時にジャンルの希望があるので、軍役を希望するものしか軍役に配属になりません。

外国人奨学金は周辺国の優秀生をシンガポールに吸い上げる仕組みですが、国民向け政府奨学金は自国民の優秀者を官僚に吸い上げる仕組みということです。

また、永住者もPSC奨学生に応募可能ですが、支給が決まった段階で、国民に帰化することが受領の前提となります。外国人は応募不可です。

PSCに加えシンガポールの各省庁が独自で出す奨学金もあるとはいえ、国民への奨学生の人数は、外国人奨学生の900人には及びません。先ほど、紹介したように、「奨学金受領の学部生の1/3が国民、つまり2/3は外国人と永住者。奨学金受領の院生は1/4が国民、つまり3/4は外国人と永住者です」。

まとめ: 国民向け政府奨学金は自国民の優秀者を官僚に吸い上げる仕組み

外国人奨学金は社会福祉でない、国家の戦略投資だ


シンガポール政府は国会答弁で留学生向け政府奨学金の狙いとして以下をあげています。

  1. 地域の相互理解
  2. 地域の親善
  3. ダイバシティ (異文化スキル)
  4. 出生率低下での労働力確保

地域の相互理解や親善というのは、確かにそうでしょう。その一方で、日本では正面から論じられない、移民政策であることがシンガポールでは述べられています。

シンガポール政府の留学生奨学金の狙い


ここまでの環境の差になると、国民が奨学金の違いに怒るのは一見合理的に見えるかもしれません。

ところが、自国民への政府奨学金と、留学生への政府奨学金は、同じ奨学金でも趣旨が違います。自国民への政府奨学金は、将来シンガポール政府を担っていくエリート養成であり、学費減免は社会福祉です。

ところが、留学生への政府奨学金や学費減免は、少子高齢化対策であり外国人タレントハントという戦略投資の位置づけが強まります。

周辺発展途上国からシンガポールに留学するには、大半が奨学金無しでは経済的に無理なことは自明です。奨学金は一般的に2つのポリシーがあります。メリットとニーズです。

メリットは優秀な学生に対して給付するもの、ニーズは就学基準を満たしているが経済的支援無しでの就学が困難な学生に給付されるものです。米国ではニーズの奨学金は外国人が原則適応除外ですが、シンガポールのASEAN学部生奨学は、外国人対象でありながらニーズの意味合いが強いです。

奨学金議論で「同じ財源なら外国人より自国民に給付を」という直感的な主張が、適切かどうかは疑問がでてきます。留学生奨学金を外国人への社会福祉と誤認しているためです。

シンガポール政府が歓迎する議論と思われるのは、「移民政策としてどんな人物を歓迎するのか」「どんな留学生に対して幾らまでなら国は学費などを投資すべきか」「成人するまでに留学生として生活をすることでシンガポールに溶け込むチャンスがあるのに、それを逃して社会人からの移民のみに頼ってよいのか」ということでしょう。

同様に日本の奨学金議論に必要なのは、「奨学金制度を続けるのであれば奨学生に何を期待するのか」、「続けないのであれば奨学生への投資無しでそれが代替できるのか、そもそも不要なのか」のはずです(シンガポールでは目的はタレントハントであり留学生の帰化なのは明確で、目的すらあいまいな日本の留学生奨学金は検証されるべきです)。

まとめ: シンガポールの留学生奨学金は社会福祉ではない。移民政策の対外戦略投資だ。

日本の外国人留学生への政府奨学金は戦後補償が原点


シンガポールが明確に優秀な移民候補のタレントハントを目標としており、実績も上げていることを考えると、日本は政府奨学金を60年間もしていますが、お金をばらまいて終了に見えてきます。

日本の政府奨学金は戦後補償が出発点ですが、具体的な成果を何にしているのか、何をもって外国人奨学生への成果として測っているのかはあいまいです。

文部科学省の「国費外国人留学生制度実施要項」を見ても、制度の目的が書いていません。

予算案を見ても「優秀な外国人留学生を確保」とは記載ありますが、優秀な外国人留学生を確保してどうしたいのか不明です。

独立行政法人日本学生支援機構 (JASSO) が帰国外国人留学生へのフォローアップをやっていますが、例えば日系企業が海外進出する際に元奨学生から話を聞くであるとか、日系企業の現地幹部として活躍している、海外企業が日本進出に際し在日法人幹部となり日本人を雇用している、各国政府の知日派として日本とつないでいる、という話はまれだと思われます。

せめて、各国奨学生出身の政財界著名人の公開や、連絡先開示依頼のとりつぎなどは、即座にできるはずです。米国フルブライト奨学生は、一生フルブライターとして貢献し、それを誇りにしています。

インターネットを中心に、日本の政府奨学金が叩かれていることを目にすることが多くなりました。目標と成果を公開しての活動をしていかないと、反発から規模や給付内容の修正は避けられなくなるでしょう。

本記事は、下記の章を含む記事からの抜粋です。

今日もシンガポールまみれ: アジア1位のシンガポール国立大学、都市伝説も駆け昇る ~授業料無料?!等の虚実と奨学金制度~
・THE アジア大学ランキング1位 シンガポール国立大学
・シンガポール国立大学の都市伝説
・シンガポール国立大学は学費や家賃がタダ?!
・シンガポールでの国立大学留学生への奨学金
・日本・シンガポール奨学金比較
・高まる反移民感情「外国人留学生に金を使うより自国民の学費に!」
・外国人奨学金は社会福祉でない、国家の戦略投資だ
・シンガポール国立大学とシンガポール教育 よもやま話