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〝おじいちゃんの方眼ノート〟量産化 作るのは「ジャポニカ」の会社

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水平に開く自社製ノートを手にする中村輝雄さん

今年1月に話題になった「おじいちゃんの方眼ノート」を覚えていますか? 都内の小さな印刷所の手作り商品で、特許をとったものの数千冊の在庫を抱えていました。それが、印刷所で働く男性の孫のツイートをきっかけに在庫が一掃したという話です。73歳の社長は「この技術を受け継いでくれる会社が現れてくれたら」と話していましたが、ついに現れました。手を挙げたのは「ジャポニカ学習帳」で知られるショウワノートです。

【写真】本当にふくらまない! 水平に開いた方眼ノート。「昆虫が消えた」と話題になった歴代ジャポニカも

これまでの経緯


話題の方眼ノートを作っているのは、東京都北区にある中村印刷所です。

社長の中村輝雄さんは、近くで製本業を営んでいた中村博愛さん(80)が店をたたんだのをきっかけに、見開いたときにきれいに水平に開くノートの開発に二人で取り組みました。

2年間かけて完成させたのは、コピーやスキャンした時に真ん中に黒塗り部分が入らず、見開きのギリギリまで書き込むことができるノート。この製造方法に関して特許もとりました。

性能は評価されましたが、なかなか売れません。大量発注の話があって作ったものの、実際の注文には結びつかず、数千冊の在庫を抱えていました。

「使ってもらえば、良さがわかってもらえるのに」。自分が作った在庫を見て罪悪感を感じていた博愛さんは、「これ、学校の友達にあげてくれ」と孫娘にノートをまとめて渡しました。

受け取った孫娘は「学校じゃ、あんまりノート使う人いないしなー。そうだツイッターでやりとりしてる絵描きさんとか喜ぶかも」と思い、軽い気持ちでツイッターにノートのことを投稿しました。

すると、使い方を指南してくれたり、今すぐ買える量販店を教えてくれたり、多くの人たちがコメントを寄せてくれて拡散。その後、ネットメディアや新聞、テレビに取り上げられて在庫は一掃。一気に人気商品になり、銀行からは融資の申し出まで来ました。

手を上げたのはショウワノート


突然の人気を喜びつつも、中村さんは当時、withnewsの取材にこう話していました。

「私たち2人の目が黒いうちは作り続けます、でも限界があります。この技術を受け継いでくれる会社が現れて、一人でも多くの人にノートを使ってもらえたら、というのが私の願いです」

この記事が出た翌日、ショウワノートの開発部で「ジャポニカ学習帳」を担当している小原崇さんから、withnews編集部に電話がありました。

「中村さんのお話に大変興味があります。ぜひお会いしたいので、ご紹介いただけないでしょうか」

小原さんは中村印刷所に何度も通い、ときにはショウワノートの工場長も連れて、提携に向けて話し合いを重ねました。そして6月30日に、中村印刷の技術を採り入れたノートをコラボ商品として作ることが決まり、開発が始まりました。

過去には失敗も


実はショウワノートは過去に、製本の際に糸や針金を使わない「無線綴じ」と呼ばれる製法で、ノートを発売したことがありました。しかし、強度が不十分で不良品を出すという苦い経験をしています。

コラボ商品にゴーサインを出した、ショウワノートの片岸茂社長はこう話します。

「ジャポニカ学習帳をはじめ、常に他社より一歩進んだノートを作り続けてきましたが、ここ数年は進化ができていませんでした。過去の失敗が一瞬頭をよぎりましたが、中村印刷所さんとコラボすることで、思い切ったチャレンジをしようと決めました」

コラボしたノートは、きれいに見開ける特徴をいかした児童向けの学習帳で、2017年春ごろに発売予定です。現在は強度などの検証や、使ってみた感想のヒアリングなどを重ねています。

発売発表を間近に控えた小原さんは、こう話します。

「中村社長の『いい技術なんだから誰かに受け継いでもらって、一人でも多くの人にノートを使ってもらいたい』という言葉に感銘を受けました。中村印刷所の技術と思い、ショウワノートの持つ製造と販売のインフラを活かして、勉強のやる気が出てくるノートとして、広めていきたいと思います」

物語の書籍化も


方眼ノートをめぐる物語の書籍化も決まりました。タイトルは「おじいちゃんのノート 下町の職人魂がオンリーワンを生んだ」。

企画したセブン&アイ出版の落合加依子さんは「おじいちゃん二人の職人魂に惹かれました」と話します。

1月末、中村社長に出版の相談で電話したところ、「出版がどうのというのはよくわからないし、今はそれどころじゃないくらいノート作りが忙しいから勘弁してください」と断られました。

諦められなかった落合さんは、中村印刷所のホームページを毎日欠かさずチェック。「生産能力も上がり出荷可能となりましたので、ご注文をお請けさせて頂きます」という文章がアップされたのを見て再度電話。直筆の手紙に、これまで手がけたノンフィクション本を添えて送り、書籍化のOKをもらいました。

落合さんはこう話します。「製本をしている様子を見た時などは、まるで映画を観ているように感じて感動しました。取材や打ち合わせで何度も足を運びましたが、編集する側としても、この本に関わる毎日は、本当に楽しかったです」

コラボ商品や書籍化が決まったことについて、中村社長は、こう話します。

「皆さまのお力によってノートが世間に広がり、中村印刷所の再生が可能になりました。工場の設備を一新して、自前で作るノートの生産数を増やすことも決まっています。数を増やすことで値段を下げ、みなさまに還元したいと考えているので、これからも『ナカプリバイン』こと『おじいちゃんの方眼ノート』をよろしくお願いします」

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