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韓国経済は成長し続けているのに、自殺する人が急増しているのはなぜか

2014年04月15日 18時19分 JST | 更新 2014年06月14日 18時12分 JST

最近、韓国の1人当たりのGDPが発表された。数値が大幅に高くなって、多くの方が驚いたようだ。GDPが増えたのに、なぜ懐は相変わらず軽く、暮らしは楽にならないのか気になる人が多いだろう。その理由はどこにあるのか?

1990年代初頭以降、韓国人の10万人当たりの自殺者数は急激に上昇した。1992年に10万人当たり8.2人だったのが、2013年には33.5人となった。その間に急激な文化や国民意識の変化があったとは思えない。実際、警察の調査結果を見ても、最も多いのは経済的な理由だという。

すると韓国の高い自殺率は、1990年代半ば以降の経済的な生活の変化によって生じたという推論が可能だ。

しかし、数字を見てみると実に胸が痛くなる。何せ韓国はずっと経済が成長している国なのだ。

実際、韓国は第2次世界大戦後、最も模範的に成長した国だ。戦争で廃墟になった国が、世界12位の経済大国になった。1人当たりの国民所得は60年間で100倍以上に跳ね上がった。民主化が実現し、選挙によって政権が交代することもある。小麦粉の配給を受けて生きてきた経済から、自動車やスマートフォンを造るグローバル企業も登場した。

問題の1990年代以降だけを見ても同様だ。1990年代初め、韓国の1人当たりの国民所得は1万ドル台だった。今は2万ドルを優に超えている。平和な選挙によって政権も複数回変わった。戦後から続いてきた北朝鮮との体制競争は、南の一方的な優位で決着がついた。

外国のシンクタンクの研究者から「自殺を名誉と考える文化的な理由なのか」と質問されるわけだ。つまり、一体何が不満なのかと。

収入の要因を、もう少し詳しく見てみよう。明らかに国民所得は増加した。国全体でもそうだが、1人当たりの所得も、家計所得も、企業所得も増えた。

しかし目立つのは、家計所得と企業所得の不均衡だ。

1990年代初めまでは、企業所得と家計所得は似たような動きをしていた。すなわち、国民所得全体が増えれば、企業所得と家計所得はほぼ同程度に増加した。

しかし、1990年代半ばから、両者の格差はだんだん広がった。特に、家計所得の増加スピードが徐々に落ちて経済成長率を下回り、その差は少しずつ開いていった。韓国の家計所得の増加率と経済成長率の差は、OECD加盟国の中で最も大きい。もちろん、家計間の所得格差も問題だが、それ以前に家計全体が相対的な剥奪感を感じるようになったのだ。

この過程で、挫折感と剥奪感は大きくなった。家計所得が最も低い層の挫折感と剥奪感はさらに大きいだろう。これが、自殺率が急上昇していた20年間に起きたことだ。

韓国産業研究院の報告書「韓国経済の家計・企業間の所得増加の不均衡」から、2つのグラフを引用してみよう。

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上のグラフを見ると、家計所得はGDP成長率に比べて大きく遅れをとっているが、この現象が始まったのは1990年代中盤からだ。

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このグラフで、経済成長率と家計所得の伸び率を比較すると、韓国はその格差が世界で最も大きい。つまり、経済成長の恩恵が家計所得に還元される度合いが、世界で最も少ない。

家計所得は、なぜ取り残されたのか? いくつかの要因があるが、産業研究院の分析によると、労働所得の低迷が最大の原因だ。国全体では収入が増えたが、その収入が働く人に賃金として適切に支払われていないのだ。

国民所得のうち、働く人に分配された割合を示す労働所得分配率は2000年以降、著しく低下している。また実質賃金は、同じ頃に事実上の停滞状態に入った。特に実質賃金は1990年代半ば以降、労働生産性よりも低い状態が続いている。つまり、労働生産性が高くなって生じた分け前が、働いた人に分配されていないのだ。

興味深いことに、このような現象はアメリカで1980年代以降に起きたことと似ている。アメリカでも1980年代以降、家計所得が低迷し、労働所得分配率が低くなり、実質賃金が停滞または低下するという状況が起きる。このため、オバマ大統領が最低賃金の引き上げを主な課題として推進しており、ポール・クルーグマン、ジョゼフ・スティグリッツら著名な経済学者が不平等の解消という課題に没頭しているのだ。

しかし、なぜこの時期に、このような現象が生じたのか?

アメリカはよく金融先進国と呼ばれる。企業と市場が主導する社会とも言われる。新自由主義の出発地とみなされることもある。ところが実際には、すべての名前は1980年代以降についたものだ。その前のアメリカはかなり違った社会だった。

ディーン・ベイカー・CEPR(経済政策研究センター、アメリカ・ワシントンの政策シンクタンク)所長は、自著「最新のアメリカ史」でこう説明する。今、アメリカ経済の特徴と思われていることは、ほとんど1981年にロナルド・レーガン大統領以降の保守政権で人為的に作られたものだ。その政策の特徴をベイカー所長は「負の上方の再分配」と呼ぶ。市場から自然に湧き出て広がったものではなく、政府の意図的な政策努力の結果として生まれた現象だという。最も特徴的なのは、企業に友好的な規制が導入され、労働者に敵対的な政策が実施されて、社会全体で労働者の交渉力が低くなったことにあるというのが彼の考えだ。

1980年代以降にアメリカで起きたすべての現象が、レーガン大統領のいわゆる「レーガノミクス」の結果であるとするならば、韓国でこのような現象が始まった1990年代にどのような政策努力があったのかを調べる必要がある。韓国でも事実上、意図的な「負の上方の再分配」があったのか? または生産された「負」が分配されないための人為的な努力があったのだろうか。今後、より詳細に研究すべき部分だ。

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