横浜市で小学校教員向けESD講座を開催

WWFはここ横浜から、「地球市民」の感覚が子どもたちに芽生えて、持続可能な社会を作る試みがグローバルに加速していくことを願っています。

2017年6月10日、WWFジャパンは横浜市内で小学校の先生方向けにESD講座(持続可能な開発のための教育)を開催しました。これは、WWFジャパンと横浜市によって、2015年3月に締結された環境分野の連携協定に基づき、持続可能な都市作りの一環として開催されたものです。当日は、地球温暖化問題や地球1個で済む環境負荷の小さな暮らしについて考え、学校現場で実践できるアクティビティをご紹介。また、WWF香港と連携した、国際的な学校間交流の希望も実現していくことになりました。

持続可能な社会を目指すESDの講座

ESDとは「持続可能な開発のための教育」(Education for Sustainable Development)のことです。環境、貧困、人権、平和、開発といった様々な課題が現代社会にはあります。こうした課題を自らの問題として捉え、問題解決につながる価値観や行動を生み出そうとするのがESDです。

横浜市ESD推進コンソーシアムの一員でもあるWWFジャパンは、2017年6月10日、「環境」と「国際理解」に焦点を当てたESD講座「明日の授業に活かせるESD講座」を開催。

これは、横浜市教育委員会と同市地球温暖化対策統括本部の協力を得て、横浜市内の小学校の先生方に向けて行なったもので、当日は11名の先生方にご参加いただきました。

講座には、まずレクチャーが3本。「地球温暖化」や環境負荷の小さな生活を目指す「地球1個分の暮らし」に加えて、人間による環境負荷を示した「エコロジカル・フットプリント」についてのレクチャーも用意しました。

これらのレクチャーで現代の環境問題について概観していただきました。天気予報でも、よく耳にするようになった地球温暖化ですが、その仕組みや今後の影響までは、なかなか勉強する機会がないためか、よい知識の習得の機会になったとおっしゃる先生もいらっしゃいました。

さらにレクチャーは、資料としても配付し、学校に持ち帰って、授業でご活用いただけるようになっています。

アクティビティによって学びを深める

参加者のみなさんは2班に分かれました。この講座は、座学だけでなく、グループワークによって、アクティビティをこなしながら、模擬体験的に学びを深めていただけるようになっています。

温暖化のアクティビティでは、国別の1人あたりCO2排出量を、ペットボトルに入れた水の量で表現。

インドの1人あたりの排出量をペットボトル3分の1程度の水の量に設定。ここで、WWFジャパンの講師が問いを投げかけました。

「日本のCO2排出量はペットボトルで何本になるでしょう?」 一人の先生が、およそ2本が満タンになる量ではないかと解答。正解です。1本満タンで、2本目も満タン近くになります。参加者のみなさんから拍手が起きました。

「続いて、アメリカについて考えます。何本くらいになるでしょうか?」これは予想が難しかったようです。ズバリの正解は出ませんでした。アメリカの場合、3本満タンで、4本目は3分の1を超えるまで満たします。インドはもちろん、日本とくらべてもずっと多く、驚きの声が上がりました。

タブレットを使って環境負荷を測る

「エコロジカル・フットプリント」のレクチャーは、参加者それぞれの生活で生じるフットプリントの数値を計算し、これに基づいて行なわれました。

日本人の平均的なエコロジカル・フットプリントをみてみると、消費の圧力が大きすぎ、2.9個分の地球の資源が必要な計算になります。

では、参加者の数値はどうか? ワークシートに書いて、グループ内で見せ合ったところ、やはり地球2個を超えるレベルの生活になっている方が多く、何がその原因となっているのかを考えていただきました。

分かったのは、車の利用が多かったり、光熱費が大きかったり、加工食品に偏った生活を送ると、フットプリントが大きくなる、ということ。

さらに、パソコンやタブレットを使えば、こうしたエコロジカル・フットプリントを専門団体のウェブサイトで、簡単に計算できることも紹介しました。

小学生の場合、お家の方と自宅のパソコンやタブレットで家族の生活パターンを入力するだけで、地球にかけている負担の大きさ、必要な地球の個数を調べることができます。

学校のみならず、家庭でもこうした問題に目を向けてもらい、小さな改善が集まってゆけば、ESDの目指す社会の変革にも、やがてはつながっていくはずです。

好評のうちに終了した講座

事後のアンケートを集計すると、11人中10人の方が講座に「十分満足」または「満足」と答えてくださり、また、「来年度も同様の講座を希望する」と解答くださいました。

また、自由記述では次のような感想が見られました。

「アクティビティが多く入っていて、動きながら、考えながら学ぶことができました。きっと子どもたちは家に帰ってからも学んだことを"伝えたくなる"だろうな、という内容ばかりでした」(感想例1)

「たくさんの資料を用意していただき、ありがとうございました。温暖化の現状やエコロジカル・フットプリントのことを知ることができて勉強になりました。CO2排出量をペットボトルに水を入れて表す方法がとても分かりやすかったです。授業に取り入れたり、出前授業をお願いしたりできればと思いました」(感想例2)

横浜市の「環境教育出前講座(生物多様性でYES!)」を通じても、出前授業の依頼が来ています。次世代を担う子どもたちとの学びを出発点に、横浜市で地球1個分のライフスタイルが広まるよう、WWFジャパンは横浜市との連携活動をさらに深めていく予定です。

香港の学校と9月以降に交流

さらに、2016年12月~2017年3月にかけて、横浜の小学校1校と香港の小学校1校のあいだで試験的に実施した国際的な学校間交流も、今年度は規模を拡大して行なうことになりました。

横浜と香港の間で、互いに環境のことを学んだり、自分たちの文化について調べた結果を、文章や絵にまとめて、交換し合う予定です。

これは2017年度、希望する学校間で、9月以降に実施され、今回の講座でも5校ほどが参加の意思を示してくださいました。

その拠点となるWWF香港でも、現在地球1個分で済む環境負荷の小さな社会を目指し、学校に教育プログラムを提供しています。

小学生が国境を越えて、自分の国と似ているところを見つけ、逆に、相違点を知って驚きを感じる、そんな学校間交流を、総合学習のテーマのひとつである「国際理解」につながるように、WWFも学校の先生方と打ち合わせや、準備を進めています。

WWFはここ横浜から、「地球市民」の感覚が子どもたちに芽生えて、持続可能な社会を作る試みがグローバルに加速していくことを願っています。

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