ホウロクシギなど渡り鳥の絶滅危機のレベルが上昇

IUCN(国際自然保護連合)は発表した最新版のレッドリスト「絶滅のおそれのある野生生物のリスト」の中で、24種の鳥類について絶滅危機のレベルが上がったことを明らかにしました。

2015年10月29日、IUCN(国際自然保護連合)は発表した最新版のレッドリスト「絶滅のおそれのある野生生物のリスト」の中で、24種の鳥類について絶滅危機のレベルが上がったことを明らかにしました。この中には、日本の沿岸や東アジアを代表する大陸棚の海、黄海を「渡り」の中継地として利用している複数のシギ、チドリ類も含まれています。

日本に飛来する渡り鳥も

以前から危機が指摘されていたホウロクシギとオバシギについては、これまで「VU(危急種:絶滅危惧Ⅱ)」とされてきましたが、危機レベルが一つ上がったことで、「EN(絶滅危惧種:絶滅危惧ⅠB)」となりました。

また、オオソリハシシギ、トウネン、コオバシギ、サルハマシギ、ミヤコドリ、タゲリの6種も、「LC(低危急種:軽度懸念)」から、危機レベルが一つ上がり、「NT(準絶滅危機種)」に分類されました。

こうしたシギやチドリなどの渡り鳥は、5,000万羽にのぼるといわれ、毎年、東南アジア、オーストラリアなどの越冬地から、日本、中国、朝鮮半島、モンゴルなど経由して、ロシア、アラスカなどの繁殖地の間を行き来しています。

実際、22の国と地域をまたいだ地球規模の渡り鳥のルートは、「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ」と呼ばれ、世界に9つあることが知られる渡りルートの中で、もっとも種の多様性が高い一方、鳥の個体数が著しく減少しているエリアでもあります。

求められる東アジアの干潟の保全

下の図は、東アジア・オーストラリア地域フライウェイを利用している20種の絶滅の危機に瀕する渡り鳥が飛来する場所(繁殖地、中継地、越冬地)のうち、「国際基準を満たしている個体群(※推定個体数の1%/中継地の場合は0.25%)」が確認もしくは推測された場所を調査し、色別に表記したものです。

15個体群以上が確認された場所は、いずれも中国、韓国の黄海沿岸であることが分かります。日本も広範囲にわたって4-10個体群が確認されており、重要な渡り鳥にとって場所となっています。

こうした渡り鳥の保全を進める上でも、東アジア各地の湿地を国際的な知見から保全していくことは、急務といえるでしょう。

今回、一部の渡り鳥の危機のレベルが上がったことは、危惧すべきことですが、裏返して考えれば、これは個体数調査が継続的に実施され、現状を適切に把握できるようになったことの証でもあります。

現場での調査や保護に向けた精力的な取り組みと、国境をまたいだ情報の共有、連携の成果でもあるといえるでしょう。

黄海をはじめ、東アジアの湿地保全に現在取り組んでいるWWFも、今回の発表を受け、より活動に力を入れていきます。

東アジア・オーストラリア地域フライウェイ重要地域マップ

重要生息地の国際基準を満たした重要種の個体群が飛来した地域を色別に表示

※空欄の格子は、20種以外の渡り鳥の重要生息地を示しています。

出典

WWF香港の報告書:PRIORITIZING MIGRATORY

SHOREBIRDS FOR CONSERVATION ACTION

ON THE EAST ASIAN-AUSTRALASIAN FLYWAY

(PDF:英語)

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