ブリヂストン社が持続可能な天然ゴムの調達方針を策定

森林破壊を伴わない天然ゴムの生産・調達が早期に実現されることを期待しています。
Darren Whiteside / Reuters

インドシナ半島で森林破壊の大きな要因の一つとなっている、天然ゴム農園の急速な拡大。その生産量の70%以上を利用しているのが、自動車タイヤの製造です。そうした中、2018年2月6日、世界最大のタイヤメーカーであるブリヂストン社が持続可能な天然ゴムの調達方針を発表しました。業界最大手企業による方針の発表は、森林保全に配慮した天然ゴムの生産・流通を大きく加速させるものであり、今後こうした動きが業界全体に広がることが期待されます。

東南アジアに集中する天然ゴム生産と森林破壊

さまざまな日用品や工業用品、その製品や部品の一部として、世界中で使われている天然ゴム。 この天然ゴムは、パラゴムノキという樹木の表皮を傷付けて採取される白い液体(ラテックス)を加工することによって製造されます。 パラゴムノキは南米のアマゾン川流域を原産地とする自然の樹木でしたが、現在は熱帯の各地で広く栽培されています。 とりわけ、世界の生産量の70%以上がタイ、インドネシアをはじめとする、東南アジアに集中しています。 近年はインドシナ半島のメコン川流域のミャンマー、カンボジア、ラオスといった国々でも生産が拡大しており、特にゴムの国際価格が上昇した2011年以降は、新たな農園開発が進んできました。 しかし、こうした開発が急速に進むメコン川流域は、もともと広大な熱帯林が残る場所。 トラやアジアゾウといった絶滅危機種の貴重な生息地であり、新種の発見が相次ぐ場所でもあります。 天然ゴム農園の拡大により、こうした多様性豊かな熱帯林が失われようとしています。

タイヤ製造に集中する天然ゴム消費と先進企業の取り組み

世界で生産される天然ゴムの消費は70%以上がタイヤの製造に使用されています。 つまり、タイヤ業界や自動車業界は、ゴムの生産とその調達が社会や自然環境へ与える影響について大きな責任を負っている、ということです。 これを受け、タイヤメーカーによる持続可能な天然ゴムの調達の取り組みが徐々に広がり始めています。 2015年にはフランスに本社を置くミシュラン社が、持続可能な天然ゴムの調達方針を発表。2017年にはイタリアに本社を置くピレリ社がこれに続きました。 採集したゴムの樹液(ラテックス)の加工 さらに、自動車業界でも、2016年にトヨタ自動車がWWFとはグローバル・コーポレート・パートナーシップを締結し、東南アジアで森林保全活動を展開するとともに、天然ゴムの持続可能な生産と利用を推進する活動を実施しています。 そして、2017年には米国に本社を置くゼネラルモーターズ(GM)社が自動車業界として初めて、天然ゴムの調達と流通過程(サプライチェーン)を通じて発生する森林破壊をゼロにすることを目指すと発表しました。

日本企業として初めて持続可能な天然ゴムの調達を発表

こうした中、世界最大のタイヤメーカーであるブリヂストン社は、2018年2月6日、日本企業として初めて、持続可能な天然ゴムの調達方針を発表しました。 持続可能な天然ゴムの生産・調達には、個別企業だけでなく業界全体での取り組みが欠かせないことから、業界最大手のブリヂストン社がこうした方針を発表したことは、森林保全に配慮した天然ゴムの生産・流通を大きく加速させるものといえます。 日本は、世界有数の自動車産業を持つ国であり、その影響は経済や社会にも及びます。 WWFは今後、日本の他のタイヤメーカーや自動車メーカーが、持続可能な天然ゴムの調達方針を作成・発表することで、森林破壊を伴わない天然ゴムの生産・調達が早期に実現されることを期待しています。

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