資源回復に向けた進展なし 太平洋クロマグロ漁業の一時停止も必要

WWFは太平洋クロマグロの商業漁業を一時停止することも必要であると訴えています。

2016年9月2日、福岡で開会されていた中西部太平洋まぐろ類保存委員会(WCPFC)の北小委員会会合が閉幕しました。資源量が漁業開始前と比べ2.6%まで減少している太平洋クロマグロ(本まぐろ)の保全をめぐり、今回は初めて、全米熱帯マグロ類委員会(IATTC)との合同作業部会会合も開かれましたが、何も進捗は見られず、危機の回避につながる糸口をつかむことはできませんでした。この状況を受け、WWFは太平洋クロマグロの商業漁業を一時停止することも必要であると訴えています。

積極的な資源保全に合意できなかった北小委員会会合

日本が世界で最大の生産国・消費国となっている、太平洋クロマグロ。

2016年7月、北太平洋海域のマグロの資源研究を行っている、北太平洋マグロ類国際科学委員会(ISC)は、この太平洋クロマグロの資源量が漁業開始前と比べ2.6%まで減少し深刻な「枯渇状態」にあるという報告を発表しました。

長年にわたり、十分な漁業管理が行なわれないまま、日本をはじめとする漁業国で過剰な漁獲が続いた結果です。

太平洋クロマグロは、産卵が可能な親魚の減少が著しいことに加え、小型魚(メジなどの名で呼ばれる)の漁獲も盛んに行なわれており、安価での消費がそれを後押ししています。

この状況を改善するため、8月29日から福岡で、中西部太平洋まぐろ類保存委員会(WCPFC)の北小委員会会合が開催されましたが、参加各国の代表は、実効性ある太平洋クロマグロの資源保全に向けた施策に、何一つ合意することができませんでした。

全商業漁業の一時停止を

今回の会議に参加していたWWFジャパン海洋水産グループ長の山内愛子は、次のように述べています。

「大きな課題だった高い漁獲圧を受けている小型魚の保全を含む長期的な資源回復計画の合意は、残念ながら成立を見ませんでした。それだけではなく、今回の北小委員会で対応すると約束した緊急措置の導入や漁獲証明制度などの追加措置についても、まったく前進を見ることができませんでした。国際交渉という現場で、自国の主張ばかりがなされ加盟国間での連携や、太平洋クロマグロを回復させるために非常に大切な時期にあるという大局感を共有することができていないことに、WWFは大きな危機感を抱いています。この状況を引きずったままでは、太平洋クロマグロの資源量は回復どころか、維持することさえ困難です。

WWFとしては、資源回復に向けた確かな管理計画が採択されるまでは、太平洋全体のクロマグロの商業漁業を一時的に全面停止も考慮するよう、関係各国に要請せざるを得ません。

それは、過剰な漁獲に終止符が打たれ、資源の回復に希望をつなぐ、唯一の方法です」

この漁業問題は、クロマグロを頂点にいただく太平洋の海洋生態系の危機でもあります。

WWFは2016年12月に予定されているWCPFCの総会において、太平洋クロマグロの保全につながる議論の展開と、確かな合意を求めています。

■参考情報

会合の開催にあたりWWFがWCPFC北小委員会に対し求めていたポイント(要点のみ)

1)各国の漁獲規制の基礎となる限界管理基準値(これ以下になると回復が不可能と目される「生物学的」な資源量)と、目標管理基準値に合意すること

2)2030年までに合意した限界管理基準値を上回るレベルまで、資源を回復させることを目標とした長期的な回復計画を採択すること

3)漁獲が制限される小型魚のサイズを30kgから85kgに引き上げること。また、大型魚の漁獲量制限を導入すること

4)漁獲状況の調査を徹底するために漁獲証明制度(CDS)を導入すること

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