BLOG

プーチンはな、旧ソ連でやってた「お笑い検閲」を今やってんだよ

2014年06月16日 16時01分 JST | 更新 2014年06月16日 16時24分 JST
AFP via Getty Images
Russian Prime Minister Vladimir Putin is pictured with a horse during his vacation outside the town of Kyzyl in Southern Siberia on August 3, 2009. AFP PHOTO / RIA-NOVOSTI / ALEXEY DRUZHININ (Photo credit should read ALEXEY DRUZHININ/AFP/Getty Images)

最近、俺はロサンゼルスの劇場で一人芝居"Happily Ever Laughter"(笑って幸せ)に出演している。バカ受けするんじゃないかと思って(プロのコメディアンならわかってくれるだろ?)、新しいネタを披露したんだ。「ウクライナでは、新しいアイスクリームが発売された。その名も、『絶倫プーチン』。これはな、あなたを虜にして自由を奪ってしまうんだ。なんてったって、食べる必要がないんだよ。無理やり口に押し込められるんだから」

客が大受けしたのを見て、俺はふと、こんなネタはもう25年も書いていなかったなと気づいた。その日を振り返ってみて、客が笑っている理由がわかったんだ。いい笑いって、笑いの部分が10%だけで、残りの90%は真実なんだってね。じゃあ、その真実とやらは何かって言うと、プーチンがロシアで表現の自由を制限していることが、俺が25年前、旧ソ連で芸人として経験したことと状況がよーく似ているんだな。

旧ソ連でコメディアンをしていた頃、俺は「お笑い部」の検閲を受けていたんだ。正式には、「ソビエト文化省検閲局お笑い部」って言うんだけどな。おそらく当局は、この組織の名前をフルネームで言うのは疲れるから、検閲される奴がお笑いなんかやる気力がなくなっちまうようにしてたんだろう。1年に1回、俺たちは「お笑い部」にネタを提出して許可を受けていた。だから、舞台上でどんなやり方をしても、認められたネタと違うことは絶対にやっちゃダメだったんだ。野次やブーイングが飛んできたって、アドリブは一切禁止。もし観客の誰かが大声で何か叫んだら、俺はこう言っていたと思う。「1年後にまた来てくれ。政府が認めた答えを言うから」

承認されるためにどういったものを提出すればいいのか、すっごく厳格なガイドラインもあったよ。政府や政治家、性や宗教はネタにできない。そのほかはOKだ。姑や動物、魚はネタにできた。自分の姑が体重計に乗るネタなんて、そうそうできるものじゃないよ。政府が捕まえなかったとしても、姑に捕まっちゃうからな。

生きるためにしょうがないから、俺は認められるネタもやった。たとえば、メスのゾウと結婚した小さなアリの話だ。結婚した次に日にゾウが死んじゃったから、アリはこう言ったんだ。「楽しかったのは一晩だけ。これから残りの生涯ずっと、墓をつくるために土を掘らないといけないからね」。これは検閲を通って、動物園でこのネタをやることを公式に認められたんだ。

ダメだったネタも紹介しようか。ソ連政府はその頃、アルコールを取り締まっていたけど、事態は悪化する一方だった。そこで、共産党の職員が工場へ行って労働者の一人に聞いた。

「ウォッカを1杯飲んだら、働けるか?」 労働者は「たぶん働けます」

「ウォッカを2杯飲んだら、働けるか?」「たぶん働けます」

「ウォッカを3杯飲んだら、働けるか?」 労働者は「だから今、私はここにいるんですよね?」 

このネタは通らなかったな。

これは面白いと思ったのは、車を買うネタだった。当時ソ連では、車を買うのに何年もかかったんだ。ある男が車のディーラーに行って「車を買いたい」と言った。セールスマネジャーは「OK。この名簿に名前を書け。20年後に車を取りに来てくれ」と答えた。男は「午前に来ますか、午後に来ますか」と尋ねた。マネジャーは「どう違うんだ? 20年後だぞ」と聞くと、男は「水道管工事がその日の午前中に来るんです」。これも通らなかった。

旧ソ連では2億5千万人が生まれたときから洗脳され、コントロールされていた。洗濯機に例えると、弱回転のような生やさしいもんじゃない、永遠に強回転でゴシゴシ洗って、ガッツリ糊付けするような感じだった。子供の頃、俺は父ちゃんから「自分と同じような大人になるんだろうな」と言われた。父ちゃんって、容疑者なんだぞ。父ちゃんは明らかに、KGB(Kiss Goodbye your Butt=ケツの穴にサヨナラのキスを=の略だ)の監視下に置かれていたんだ。普通のソ連人が教わっていることよりも、もっといろんなことを知りたがっていたからだろうな。

体制にとって、父ちゃんは危険分子だった。どうしてかっていうと、みんなが寝静まった後、父ちゃんは「ボイス・オブ・アメリカ」の短波放送を聴いて、朝になるとジョークを言うから、お尋ね者扱いされていたんだ。父ちゃんはこう言っていた。「ソビエトでは、発言の自由があると当局は言う。でもアメリカは、発言したあとに自由がある。これはなかなか面白いな」

当時、ソ連政府は国民に与えられたすべての情報を管理しようとしていた。なぜなら情報は力だからだ。俺はこんなギャグを言っていた。「テレビができた頃、チャンネルは2つあった。1チャンネルはプロパガンダ。2チャンネルはKGBが出てきて『1チャンネルに変えろ』と命令する放送だった」

笑っちゃうけど、これ、本当のことだぜ。独裁者が昔っから使うお決まりのやり方ってのはな、分断と征服なんだよ。みんなに影響を与えてしまうようなものは排除。そして、独裁者が唯一の情報源になる。それが基本のキ、ってやつだ。プーチンはまるでチェスのプレーヤーのようだな。奴は戦略的に動かなければならないことや、そのために必要なことをよーくわかっている。絶対権力を握るためにやっているし、メディアはその一つだ。これがレーニン、スターリン、そして後継者たちがロシアの古い体制を機能させていたやり方だ。

今のロシアでは、俺が育った頃と同じようなことが起きている。ブロガーに政府への登録を求める新しい法律ができた。登録だけじゃない、ブロガーは匿名じゃいられなくなるんだ

プーチンは、テレビや映画、書籍や演劇などで、冒涜するような言葉や卑猥な言葉を罰する法案にも署名した。こういう言葉を含む出版物はぜんぶ、密封されて流通させる義務を負わなきゃならない。密封される出版物の著者も、危険にさらされることになる。

こういった規制があるから、ロシアじゃアメリカほどTwitterは利用されていない。なんでかっていうと、アメリカではフォロワーが多ければ人気がある印になるんだろうが、ロシアではフォロワーが多いっていうのは、監視されているという意味なんだ。

プーチンは、じわじわといろんなことを変えようとしている。アメリカの製薬会社がテレビCMでやっているのと一緒だ。製薬会社は、薬を飲めば人生はよくなると信じ込ませる。そして深刻な状況から目をそらすように、気分が良くなるような音楽と、幸せそうな人たちの映像でごまかしているんだ。

「劇薬プーチン」のCMを作ってみたら、こんな感じになるかな。一日一錠のプーチンであなたは従順に。そして命拾い。悪の帝国から守ってくれます。でもちょっとだけ副作用があって、たとえば友達や家族を失うとか、寒い場所への引っ越しとか、激しいストレスとか、落ち込むとか、そして家も失ったりします。もし自由を失って1年以上たったら、口を閉じたままにしてください。かかりつけのお医者さんは別の国に引っ越すことを勧めるかもしれません。お医者さんにも「口を閉じたままに」と言ってください。眠れなくなったり、逆に一生起きることがなくなる可能性もあります。

P.S. この文章は「お笑い部」の検閲を経ていない。

English

プーチン大統領の活躍