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ワールドカップといったら国歌斉唱だ!

2014年05月26日 19時41分 JST | 更新 2014年07月26日 18時12分 JST

2013 confederations cup brazil national anthem

◆止まらないブラジル国歌

ワールドカップといったら国歌斉唱だ。6月半ばに始まるブラジル大会。その開催期間中に、試合前の国歌斉唱が、全32か国 128回も視聴できるのだ。これほどまでに贅沢な催し物は他に類を見ない。我々は、各国を代表する選手やサポーターたちの"魂のこもった"歌声を映像込みで味わえる。開催国に至っては、スタジアムを埋め尽くす何万もの民の大合唱だ。鳥肌ものである。

今ワールドカップに先駆けて行われたコンフェデレーションズカップで、ブラジルの国歌斉唱に異変が起きた。正確にはもっと以前からなのだが、その異変が「決定的」になったと言える。国歌斉唱が止まらないのだ。スタジアム全体が、伴奏が終わっても『国歌の続きを歌い続ける』のである。まずは映像を見てもらいたい。

Brazilian National Anthem, Copa das Confederacoes Semifinals (2013.6.26)

◆長い国歌は短くされる!?

ワールドカップなどの国際試合では、長い国歌はおおよそ1分程度におさまる短縮バージョンが使用される。正式には二番まで歌うことになっているブラジル国歌だが、前奏だけで30秒、一番を歌い終わると1分を超えてしまう。それで、たいていは無理に最終パートに入るか、へんなところでフェイドアウトになる。以前は尻切れのまま、なんとなくセレモニーが終わっていた。ところが、最近は客席が率先して「最後まで歌い切る」ようになったのだ。

全部歌い切っても1分半くらいなので、伴奏も最後まで付けてやればいいのに、とも思う。まあ、すべての国でそれをやってしまったら大変なことになるので、ここは開催国特権というところで、特例にしてあげてはどうだろうか。

長い国歌といえば、日本と対戦予定になっている『ギリシャ国歌(自由への賛歌)』だが、全部歌い切るには、間奏を入れて55分間かかる。普段は158番まであるうちの2番までを歌っているのだが、さすがにフルコーラスはリアリティがない。...と言いつつ、興味のある人は是非フルで聴いてみて欲しい。通常より長めに歌う五輪の開会式にも出てこない、"知らないメロディ"に出会えるはずだ。ちなみに君が代は、フルコーラスで一分弱である。

Ο ΕΘΝΙΚΟΣ ΥΜΝΟΣ ΤΗΣ ΕΛΛΑΔΟΣ - ΟΛΟΚΛΗΡΟΣ (ギリシャ国歌)

◆恐れを知らない巨人

他国の国歌を聴いていて、気になるのが、「いったい何を歌っているのか?」である。さしあたって、開催国のブラジル国歌『イピランガの岸辺は聞いた』を覗いてみよう。舞台は19世紀。独立の聖地イピランガの丘で、ポルトガルからの独立を高らかに宣言する、素晴らしい歌詞だ。ブラジルの強い日差しの色、焼け付く広大な大地、吹き渡る風の匂いまでが感じられるようである。

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  • イピランガの静かな岸辺は聞いた
  • とどろき渡る人民の雄叫びを
  • そして自由の太陽

  • その眩い光が たった今

  • 我らが祖国を照らし出すのを

  • たくましき腕で勝ち取った平等の証 

  • 汝の胸に おお自由よ 

  • 我らが心は死をも恐れない
  • おお敬愛なる祖国 愛しく尊き国よ
  • 栄えあれ! 栄えあれ!
  • ブラジルよ それは壮厳な夢
  • 大地に降り注ぐ 愛と希望の鮮やかな光
  • けがれなく微笑む 汝の美しき空に抱かれた 
  • 南十字星の輝きそのもの
  • 雄大な 生まれたままの大地
  • それは美しく それは強く
  • 恐れを知らない巨人
  • 汝の偉大さは 汝の子孫を照らし出す
  • 大地を尊え!
  • 数多き国の中に 汝の国ブラジル!
  • おお敬愛なる祖国よ!
  • 大地の子達の優しき母
  • 敬愛なる祖国 ブラジル!
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    ◆偽善の先にある「何か」

    多くの国の国歌に共通するのは、独立当時の熱気を帯びていることだ。中には、今となってはもはや過激すぎたり、あるいは時代遅れとしか感じられない国歌もある。

    言うまでもないことだが、地球上にはさまざまな人々がいて、さまざまな民族があり、国家が存在している。そして各々の国にはそれぞれの成り立ちがあり、歴史を積み上げて現在に至っている。その歴史の過程では、ありとあらゆる善と悪がない交ぜになり、複雑に絡み合い、すべてのものを飲み込みつつ、一本の太い束となって現在へと流れ込んでいる。そして、その歴史の一端は、国歌にも反映されている。

    国歌が国歌たる所以はそこにある。気をまわし過ぎて廃止や変更を重ね、あたりさわりのないものだらけになってしまったら、はるかにつまらない、偽善に満ちた世界になってしまうのではないだろうか。ワールドカップに我々が熱狂するのは、この偽善の先にある「何か」を感じ取るからではないだろうか。

    ...と、そこまで難しく考える前に、6月12日(日本時間13日早朝)から始まるワールドカップでは、試合前に行われる両国国歌斉唱からぜひご覧になっていただきたい。キックオフの10分前にはテレビ前に集合です。

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    ◆『フットボールde国歌大合唱!』(東邦出版)いとうやまね著

    スタジアム中にこだまする国歌斉唱。ネイマールが思わず涙するブラジル国歌、伊達男たちが情熱的に歌い上げるイタリア国歌、歌詞がないのに客席はハミングのスペイン国歌......。国歌にまつわる歴史やエピソードを満載。ワールドカップの必読書。

    2014-05-26-itoune.png

    http://amazon.jp/dp/4809411281

    ◆「サッカー×国歌」

    『フットボールde国歌大合唱!』内で紹介してる各国国歌を、本を読みながら映像&音楽付きで楽しめる連動サイト。

    http://nagaguturisu.com/national_anthem/

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    国歌斉唱にみるブラジルの"本気度"(フットボールチャンネル)

    http://www.footballchannel.jp/2013/06/29/post6008/