男性が育児休暇を取得するためのコツ

私は自分だけが特別だったとは思っておりません。ある程度の理解がある会社で、ちゃんと仕事をしている人であれば誰でも育児休暇は取得できると思っております。

■ 本当はみんな取得したい?63.6%男性が悩んでいる育児休暇の取得

2013年8月にライフネット生命よって行われた育児休業に関する意識調査(※1)によれば、男性の63.6%が育児休暇を取得したいと思っているらしい。しかし、実際に取得しているのは1.86%と非常に低いレベルになっているのはなぜなのでしょう?

前回の記事「育休中には自宅では仕事はできないと言われているけど、本当のところはどうなの?」 では育児休暇中に自宅で仕事をする工夫について書かせていただきました。その記事に対する読者のみなさんからのコメントでは「自分もちゃんと育児休暇を取れば良かった」「もっとこんな男性が増えて欲しい」という意見とともに、「この人だから育児休暇を取得することが出来たのだ」というような、私の状況が特別であり自分には難しいという意見もありました。

しかしながら、私は自分だけが特別だったとは思っておりません。ある程度の理解がある会社で、ちゃんと仕事をしている人であれば誰でも育児休暇は取得できると思っております。

ですので、私が会社に対して如何に説明し交渉したのかということを「男性が育児休暇を取得するためのコツ」としてまとめてみました。

※1)出典「育児休業に関する意識調査,2013年8月(ライフネット生命保険株式会社)」

■ 育児休暇の取得を妨げる3つのジレンマ

前項でも書きましたが、男性の約64%が育児休暇を取得したいと考えています。でも実際には、取得したいと考えている人のうち3%程度しか取得していません。育児休暇を取得したいと思っている人がなぜ取得しないかの理由については、 日本労働組合総連合会が2013年12月に行ったアンケートパタニティ・ハラスメント(パタハラ)に関する調査が参考になります。

【育休を取得したかったができなかった・取得したいができないと思う理由】

※出典「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)に関する調査,2013年12月(日本労働組合総連合会)」

※有効回答数1000人。複数回答形式。対象は、育休を取得したかったができなかった人・取得したいができないと思う人を対象としている。

このアンケート調査をまとめてみると、育児休暇を妨げている要因は大きく3つの不安があることが分かります。

1)育児休暇中の職場状況についての不安

「代替の要因がいない」、「上司に理解がない」、「同僚に理解がない」など

2)育児休暇復帰後の自分の処遇についての不安

「仕事から離れると元の職場に戻れるかどうか分からない」、「昇進・昇給への悪影響がある」、「仕事から離れている間に同僚と能力に差がつく」など

3)育児休暇中の経済的な負担増加についての不安

「経済的に負担となる(育休中は無給になるため)」

正直なところ、育休を取得する前は、私も多くの男性と同じように、育児休暇取得に対して不安を感じておりました。ですので、その不安を取り除くべく、会社に対して次のような交渉を行いました。

■ 私が実際に行った育児休暇取得にまつわるジレンマの解消方法

1)育児休暇中の職場状況についての不安

育休中の職場やチームメンバーへの職務負担について、上記調査のような「代替の要因がいない」、「上司に理解がない」、「同僚に理解がない」ということを気にしている人は実感としても本当に多いと思います。代替要員がいないことについては57.6%の男性が育児休暇を取得出来ない理由に挙げているほどです。

しかし、よく考えてみるとこの不安は育児休暇特有のものではありません。自分が突然職場を一定期間離れることは他にもいくつもあります。例えば定期異動、関連会社への出向、長期海外出張、急な入院などなど。このような理由で1~6カ月ほど今の職場を離れることって結構よくあることではないかと思います。その場合みなさんどうしているのでしょうか。推測ですが6カ月ほど前から上司と相談して、自分が離れた後も業務に支障がないよう調整しているずです。会社にとって困るのは、突然、準備が出来ない期間で職場を離れられることです。急な転職のような。

よく考えてみれば、出産や育児ほど1年後が予測できることはありません。ですので、私も妊娠が判明した8カ月ほど前から上司やメンバーに育休をとるつもりであることを伝えていました。直属の上司だけでなく統括責任者にも。私の知っている限り、育休ととりたいと考えている人でここまでしている人は聞いたことはありません。

そもそも、自分が上司だったとしたら、「再来月から育休取ります」って言われたら困りますよね。代替要員を採用するのにも、社内異動で調整に最低3カ月、育成に3カ月かかると考えると半年前には伝えておかないと対策が打てなくなります。もし、今から数カ月後に育休を取得しようと考えている人がいたら、すぐに上司に相談して下さい。「育休を取得したいと思っているが、どのように準備を進めていけばいいだろうか?」と。そして、同じことを統括責任者にも。それでも対策が一向にとられなかった場合は、その責任はあなたではなく上司にあります。事前に知っていたのに対策を講じられなかったならば、その上司はマネジメント能力が不足しているとしてマイナスの評価をされるはずです。マネジメント責任として捉えてもらうためにも、直属の上司だけでなく統括責任者にも話しておくことが重要です。

2)育児休暇復帰後の自分の処遇についての不安

復帰後の処遇については正直難しいところです。なぜならば、育児・介護休業法で育児休暇復帰後に違法とされているのは、

育児休業をしたことを理由にして、昇格・賞与決定にあたっての不利な条件にすることは休業の保障に反するために違法です。具体的には、

  • 1.解雇すること
  • 2.契約社員などの場合、契約の更新をしないこと
  • 3.退職させたり、正社員をパートタイマーなどにすること
  • 4.不利益な報酬変更
  • 5.不利益な配置変更
  • などはできません。裏を返せば、育児休暇復帰後の処遇で保証されているのは「会社への所属」、「雇用形態(正社員など)」「育休前と同額の給与」だけなのです。したがって、部署や役職までは保証されません。この点だけは不確実性はゼロにはできません。

    最も良い方法は、育休取得前までに実績を作り、同僚等を違った価値を上司や会社に対して印象付けておくことですが、それはなかなか簡単にはできませんよね。

    私自身の場合は、育休取得を宣言してから6カ月前倒しで実績を上げました。なので、この人材を一から探すのは困難という印象を上司が持ってくれていたのではないかと思います。ただ、実際に育児休暇を終えてフルタイム勤務に戻った時には自分のポジションはないかもしれないという最悪のケースは覚悟していました。何が大事かということで言えば、ポジションについては後で取り戻したり出来るし、何とかなるという考えでしたので、この不確実性については最小限にした上で、自分自身の中で許容しました。

    3)育児休暇中の経済的な負担増加についての不安

    経済的負担の軽減は、最も難題ですが、何が何でも会社と交渉し今と同等の給与を獲得しなければなりません。最悪のケースとして、1)、2)が自分の望み通りにならなくても、経済的状況は現状と同等でなければなりません。なぜならばしっかりと夫婦二人で育児をするためには「時間的ゆとり」と「金銭的ゆとり」の両方が必要で、どちらが欠けても十分な育児ができないからです。

    平成22年6月には「パパ・ママ育休プラス制度」ができ、さらに平成26年4月には条件付きで給付率を67%まで増加させるなど、夫婦で育児をする環境整備は一定の進展が見られます。

    しかし給付条件の詳細を見てみると、

    ・原則休業前の50%のところ、育休当初の180日に限り67%を給付

    ・賃金と給付の合計額が休業前時賃金日額の80%を超える場合は、超える額を減額

    ・支給単位期間(1月)中、就業している日が10日以下であることが条件

    となっています。条件はよくなっているとはいえ、現状の選択肢は依然として変わらず、育児休暇を取得せず現状の給与を得るか、完全育児休暇で67%の給付金で子育てをしていくかという極端な2選択しかないように思います。普通に考えて、現状の所得より20~33%下がって今までと同等の生活ができる家庭がそれほど多いはずがありません。

    つまり、現状の日本においては、育児においての実質的な保証は「妻もしくは夫のどちらか片親のみ」しか対象となっていたいなのだと感じます。

    私は、なんとしても経済的負担を軽減するために、3段階の交渉をしました。

  • 1.在宅勤務を認めてもらうことを制度提案を行った
  • 2.新しい有休取得方法(1/4有休制度)の制度提案を行った
  • 3.現状制度で有休(午後有休)を毎日取得し続けることを依頼
  • 私にとって望ましい順番は1、2、3の順番でした。1は、現状は在宅勤務のためのインフラ環境やマネジメント環境が整っていないとの理由で何回かの交渉の末断念、2は実際に制度化が決定したものの、制度運用開始が1年後からとなり、私の育児休暇開始までには利用できませんでした。結果的に3現状制度のカスタマイズでの育児休暇となりました。

    実は1、2は本丸である3の有休消化型の育児休暇を勝ち取るための交渉材料なのです。

    育児休暇の取得にあたっての勝利は、最終的に「時間的ゆとり」と「金銭的ゆとり」の両方を手に入れて育児休暇を取得することなので、3の有休消化型で十分です。しかし、それを勝ち取るために1、2で交渉しておくことが大事です。重要なのは自分以外の比較的多くの社員に適応可能な案であることです。1も2も私だけでなく、出産後の児童を抱えている人や、メンタルヘルスを崩した人の復職支援など、私を含む多くの人が実現したいこと。そこまで領域を拡大し交渉しておくことが、3の有休消化型の育児休暇の取得を実現するコツなのです。

    【育児休暇を獲得するための交渉手順】

    ■ 育児休暇中は今まで以上に上司やメンバーに報・連・相そして感謝を徹底する

    上記のような段取りで育児休暇を取得が実現した後、それで一安心ではありません。育児休暇が取得しにくいこの日本社会においてあなたが育児休暇の取得ができなのは上司やメンバーの協力があったからのこと(実際のそのように思ってなくてもそう思うようにすることが大切です)。上司やメンバーに対して、感謝の念と「ありがとう」の言葉を忘れず、今まで以上に報・連・相を徹底するよう心掛けることが大事です。絶対に「育児休暇は労働者としての権利だ!」などと声高らかに叫んではいけません。ただひたすらに感謝します。育児休暇中の周囲の人の協力がなければ、本当の意味での育児休暇足り得ませんので。

    もし読者の中に、「育児休暇を取りたいと思っていたけど、諦めかけていた」という方がいましたら、ぜひ一度上記の方法を試してみて下さい。骨の折れる交渉もありますが、愛する我が子とのかけがえのない時間を獲得するためです。仕事で頑張れなくても、これなら頑張れますよね。目的を忘れず、そのための適切な方法を実行すれば、意外とそれは実現するものです。ぜひ頑張ってください。

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