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日本酒は世界に認められているのに、韓国のマッコリがダメなのはなぜ?

2014年08月13日 01時32分 JST | 更新 2014年10月11日 18時12分 JST
한겨레

8月6日、ニューヨーク・タイムズに興味深い記事が載っていました。日本酒の酒蔵が欧州の市場を開拓するために奮闘しているという内容でした。長い伝統を誇る日本酒の酒蔵は、日本酒がフランスやイタリア料理、さらにはハンバーガーのようなファストフードにも合うのだと説得するため、全世界を飛び回っています。記事で中心的に取り上げられているのは、韓国でもよく知られた天山酒造の若社長、七田謙介氏です。天山酒造といえば1835年から続く九州・佐賀県の銘酒で、七田社長は6代目です。彼は日本酒を世界に伝えるため奔走しながら、切迫した危機感を語りました。「日本酒業界は国内市場だけでは生き残れません。何かを変えなければ、この産業は20~30年以内に滅びてしまいます」

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この記事に特に注目したのには理由があります。韓国のマッコリ市場と実に対照的だからです。最近、韓国のマッコリ製造業者が金に目がくらんだ例をいくつか経験したからです。もちろん、大部分の地方の零細マッコリ製造業者は、まだ辛うじて伝統を守っている方々です。高齢の夫婦が手仕込みで造った銘酒を宅配してくれる業者もあることはあります。そういう方々が、私にマッコリ専門店を開こうと思わせてくれたのです。

しかし、規模がやや大きく、おかげで話題に上ることが多いとみられる業者は違います。マッコリブームの頃はお金にもなり、人々の注目も浴びたのに、市場や消費者、さらには協力会社にも全く関心がありません。マッコリブームが一段落した後もひどいものです。このようなメーカーは、実はよい製品を造って消費者に認められ、市場で売れること自体にさほど興味がありません。政府や大手企業から投資を受けた業者や、投資を受ける予定だった業者ほどそうです。マッコリがもうかるかもしれないと考えて、投資や契約の専門家ばかり雇い入れた会社ほどそうです。こうした会社の目的は、マッコリを売って利益を出すことではなく、他人の金を引き出して使うことではないかと思えるほどです。

私が最近経験した例をいくつか挙げます。

●私が経営するマッコリ専門店「月香」で販売しようと、ある地方で名の知れたマッコリ製造業者とOEM方式(製造を発注した相手先のブランドで販売される製品を製造すること)で供給契約を結ぼうとしました。ところが、戻ってきた契約書を見てびっくり。先方の要求にあぜんとしました。店が業者に5千万ウォン(約500万円)の保証金を払い、保証保険をかけることとなっていました。配送など費用一切は店の負担、製品に問題が生じたときは店が連帯責任を負う、毎月、配送経費を含め900万ウォン(約90万円)以上を売らなければならず、製品は月2回の配送後、2日以内に現金決済、何よりも店側は品質を検査する必要があるのに、製造工程を視察できないという条項まで入っていました。そんな危険なマッコリを誰がお客様に心から薦められるでしょうか。韓国を代表する伝統の酒だと外国人に薦められるでしょうか?

●それだけではありません。かなり以前から、いくつかの業者から製品を仕入れてお客様に販売して来ました。各地方を代表する、丹精込めて造られたマッコリは、消費者に広める必要があると思うからです。ところが、3、4カ月ほど納品すると、必ず品質が激しく低下します。原材料も減らし、熟成期間も短縮します。小規模な業者とのOEM契約では、こちらがレシピを渡して必ず条件を守るよう何度も指示します。でも数日も経たないうちに経費節減と工程の簡素化という名目で、味を台無しにしてしまいます。お客様から品質に苦情が出ても、メーカー側は「自分たちの方が詳しいのだ」と言い張ります。こんなことで外国人はおろか、韓国の消費者に「マッコリをよろしく」と言えるでしょうか。

●我々が人を雇って直接マッコリを醸造しても同じです。マッコリの製造は、明け方に起きて発酵の進み具合や衛生環境を点検しなければならない重労働です。マッコリを製造・販売するだけで利益を出すのは難しいでしょう。それでも品質を一定に保ち、消費者から支持され続けなければなりません。そんなことより投資家の資金を集めようと考えてばかりいるうちに、工場は廃れてしまいます。マッコリに関心があると言う方は多くても、人生を丸ごと投資したいという方を今まで見たことがありません。言葉だけです。

●今日のある新聞に出ていた、かなり有名なマッコリ製造業者のインタビューも、企業家精神とはかけ離れています。この方は、マッコリ産業が中小企業保護のため大企業の進出が制限され、事業に支障が出たと不満を述べていました。おそらくどこかの大企業と契約する予定だったのに、取り消されたのではないかと思います。しかし現在、マッコリにかつてのような人気がない理由は、資金や人材が流入しないからではありません。むしろ資金や人材が過剰に流出したからです。そのため金と人気に目覚めたマッコリ業者の企業家精神が崩壊したのです。しかし消費者や市場には目を閉ざしてしまいます。ベンチャー企業が経営判断を誤るのは資源が全くない時ではなく、資金が溢れる時です。マッコリ産業も同様です。

天山酒造の記事を読んでうらやましかったのは、単に日本酒がグローバルに展開しているからだけではありません。日本酒の酒蔵は100年以上の歴史があり、その中で自らのブランドを築いたからこそできるのでしょう。海外市場への挑戦は私が代行することもできます。しかしそれ以前に、国内の消費者に地道に愛される一貫した品質のマッコリを持続的に生産できなければなりません。地域ごとに特色のある、多様なマッコリです。各地方のマッコリを売る前に必ず試飲する私には、まだ韓国のマッコリ製造業者が精魂込めてマッコリを造れるとは思えません。その点が残念です。

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佐賀の日本酒 写真集(「佐賀酒ものがたり」より)