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HLA召喚によりiPS細胞研究を加速させるためには(1)

2013年12月30日 21時12分 JST | 更新 2014年03月01日 19時12分 JST

毎月来ていたHLA召喚の手紙が来なくなった。"あの人"は元気になったのだろうか。それとも・・・

一般に血液型と言われているのは赤血球で、それぞれA・O・B・AB型があるのは日本人なら誰でも知っている(外国だと自分の血液型を知らない人のほうが多かったりする)が、実は白血球にも型があり、HLA型と呼ばれる。

臓器移植や、何度も血小板輸血を受けた患者の場合、一般の(血小板)輸血では効果がなく、HLA型の適合した(血小板)の輸血が必要になってくる。

問題はこのHLA型が適合する確率が、兄弟姉妹間だと4人に1人、非血縁者間だと数百人から数万人に1人になってくるため、適合者を安定的に確保するのが難しい場合が少なくないことだ。(患者によっては手術等を行うたびに必要なため、毎月必要になる場合もある)

献血が趣味で頻繁に行うような人でもこのHLA献血を経験するのはレアケースで、特に若い世代ではかなり少ないはずだ。

  • 手紙や電話で血液センターなどから依頼の連絡が直接くる

  • 同じ血液型というだけでなく、「自分の血液」でないと貢献できない

  • 対象が"個人"であり、顔が見えなくても不思議と想像がはたらく

  • 血液センターなどから毎回お礼の手紙が届く


通常の献血とは違うこれらの特徴から、手紙あるいは電話での依頼連絡を「HLA召喚」なる言葉で表現する人もいるくらいだ。基本的に自分のHLA型を知ることはできないのだが、顔も知らない"あの人"を思う中で、この社会においてひとりひとりがお互いを支える気持ちを持つ確かなきっかけになることは間違いない。


実はこのHLA、献血だけでなく今をときめくノーベル賞受賞者、山中伸弥教授率いるiPS細胞研究においても重要な役割を果たす。

2013年12月4日に発表された「iPS細胞ストック(備蓄)事業」における第1号のiPS細胞の作製は大きなニュースになった

再生医療においては、患者本人の細胞からiPS細胞を作製すれば拒絶反応はないが、多額の費用と半年以上の作製期間が必要であり、数万種類あるHLA型の中から、移植時に拒絶反応を起こしにくい特別なHLAを持つ人の細胞から作製したiPS細胞をストックすることによってより迅速な治療が可能になるという構想で、今回の発表では日本人の20%に適用できるとの見込みであり、臨床応用への準備が加速すると期待されている。

この細胞の提供者は京大病院で採血経験のある人への呼びかけや赤十字との連携によってなされたとのことだが、2022年度末までに日本人の80%に適用できるストックを目指す中では、75種類ものHLA型の細胞が必要とされている

思えば、最初に勤めたコンサルティングファームで新卒の採用担当を務めていたころ、決まって問いかける質問が「日本の献血者を2倍にするにはどうすれば良い?」というケーススタディだった。

 

現実を見ると、少子高齢化に伴い日本では献血者がどんどん減っていて、特に10代~20代では人口減を大きく上回る減少率になっている。「芸能人を使った広告」「若者が興味を持つライブイベント」「清潔でサービス豊富な献血ルーム」当時、大学生からあがってきているアイデアはどれも実行されているが、数字だけを見れば十分な成果に結びついているとは必ずしも言えないのではないだろうか。

細胞提供によって"あの人"だけでなく幅広い人の役に立てるなら、京都まで自腹でも行くし、その負荷をはるかに上回るものを得られると確信しているけれど、その価値を伝えるためにはどうすればよいのだろうか。HLA召喚自体、(献血者の母数自体が少ないので)若者で経験した人が少なく、SNSなどで体験がシェアされることも非常に少ないので、一般にもなかなか知られていない。

「HLA登録を2倍にするにはどうすれば良い?」というケーススタディに、今度は自分が答える立場で次回、考えてみたい。

ノーベル賞授賞式の山中伸弥教授