築120年の家を現代仕様に改装すると?

私が建築インテリアデザイナーとして一から十まで自分で手がけている初のプロジェクト、すでに内装工事に入りました。

私が建築インテリアデザイナーとして一から十まで自分で手がけている初のプロジェクト、すでに内装工事に入りました。 写真を中心に簡単にFacebookでアップデートしていますが、ブログではイギリスの家の住まい方も含め詳しく解説しています。

今までのブログ記事はこちら。

今回は現代の生活様式に合わなくなった古い家をどのように変えたのか、という点を中心に写真で解説。

こちらがビフォーの状態の平面図と写真です(クリックすると大きくなります。 写真は引っ越し前に撮ったものなので、以前の持ち主の所有物が写っています)。 昔の住宅は暖房の熱効率が悪いこともあり、いくつもの小さな部屋に分かれていました。

1. 玄関を入ったらいきなり部屋があり次の部屋及び階段へと続くドアが。

2. 次の部屋に入ると細長いキッチンへと続くドアが。

3. 細長いキッチンの横は後ろの庭へと続く道だが使いようのない狭いスペース。

4. キッチンを逆側から見たところ。 人ひとりやっと通れる狭さ。 キッチンの奥にはさらにバスルームが(写ってないが)。 これは昔は家の後ろ側に共有の下水道が走っており当時の技術では下水道の真上にバスルームを配置する必要があったため。

5. 2つの部屋を壁で隔てる狭く急勾配な階段。 この角度は急すぎて現在は違法。

6. 2階には小さな2つのベッドルームがある。

もともと小さい部屋をさらに区切っているため非常に使いにくい間取りになっていたのを現在の建築規制で許されている範囲で床面積を広げ、ファミリー層に使いやすいレイアウトに変更しました。 この設計は私はデザイナーなので自分でやりましたが、建築家を雇う人もいます(詳しくは『日英リノベーション業界比較』)。

こちらがアフターの平面図です(クリックすると大きくなります)。

この家は細長く廊下を設ける幅がなかったため、入口のドアを開けるといきなりリビングに冷たい風が入る、という状況を避けるため玄関(Front porch)をつくり靴箱やコート掛けをつくるスペースをつくりました。

そして1階はリビングからキッチン・ダイニングへと続く間仕切りのないオープンプラン。 ファミリー層に限らず現代はオープンプラン絶世期です。 昔の家ではフォーマルなダイニングルーム、リビングルーム、主人のベッドルーム(Master bedroom)、子ども部屋・・・etc.と目的別に分かれ、キッチンは召使いが料理するため家の一番暗い位置に追いやられていました。 ところが現代では親が料理する横で子どもが学校の宿題をしたり、ホームパーティーではホストが料理するすぐ横のカウンターでアペリティフを飲んだり、家で仕事をしたり、と家族やゲスト全員が楽しめる多目的スペースが必要となっています(→Telegraph: "Rise of open plan living")。 小さい子は親の近くで遊びたがるので、キッチンとリビングの間にたっぷりの収納棚と床で遊べるだけのスペースも確保しました。

階段の下にはベビーカーを置く収納スペースやトイレを設置。 洗濯機・乾燥機を置くスペースもユーティリティー収納をつくり確保。 以前こちらのエントリーでパナソニック白物家電担当者の「ヨーロッパでは冷蔵庫は家電ではなくインテリアの一部」という言葉を紹介しましたが、基本的にヨーロッパでは家電はよっぽど見せたいもの以外はすべて隠します。 そこでユーティリティールーム・収納のような専用スペースが必要となります。 以前、ロンドンの美術館で「日本の家はすごーーくモノが多い」という趣旨の(?)展示がありましたが(→『モノが溢れる日本の家(?)』)、ヨーロッパのインテリアは見せるものと見せないものを徹底的に選別しているのが特徴です。

こちらが建築中の写真(クリックすると大きくなります)。 スペースがどのように変化したか分かります。

アフターの平面図のA方向から見たところ。

(左)1階の壁を壊し真ん中にあった急勾配の階段が剥き出しになったところ。

(中)階段を壁際に寄せ、壁をすべて取り払い、キッチンの横の狭い通路まで増築してひとつのオープンプランに。

(右)新しいキッチン・ダイニングのスペース。 見にくいですが、天窓も入れることでさらに自然光が入るように。 昔は寒いイギリスで熱効率を高めるために、窓は小さく、部屋を区切りそれぞれの部屋に暖炉を設けていた。 現代のライフスタイルに合ったオープンプランが可能になったのは断熱材やセントラルヒーティング、二重窓ガラスなど技術の発達などのおかげ。

B方向から見たところ。

(左)ビフォーの状態を庭から見たところ。 庭で遊ぶ子どもたちに全く目が届かない構造になっているし、庭でバーベキューやパーティーをするにも使いにくい。

(中)いったん元のキッチン・バスルーム部分を取り壊し、改めて現在の建築基準に沿って増築し直しているところ。

(右)庭側から1階を見たところ。 ここに大きなフレンチドアを入れ中のダイニングと庭のアウトドアダイニングスペースがつながるように。 家の中と外の境界をなるべくなくし、中にいながら自然を感じとれるような間取りの取り方も"Bringing outside in"という現代のトレンド。

C方向から見たところ。

(左)壁を取り払いスケルトンに。

(中)マスターベッドルームはEn-suite shower(シャワー室併設)。 ホテルでよく見かける一部屋ごとにバスルーム(or シャワー)を併設するスタイルが住宅でも人気。 子ども部屋やゲストルームについていることも。

(右)2階には廊下を設け、廊下から夫婦のベッドルーム・子ども部屋・ファミリーバスルームとアクセスできるように。

イギリスでは家は家族の居住スペースであると同時に親しい人を招くスペースでもあるので1階はパーティーがしやすいパブリックスペース、他の階はプライベートスペースと分かれているのが普通です。 そのためゲスト用に1階にトイレだけ設置することも多いです。

屋根裏に高さがあればもう一部屋屋根裏につくれたのですが、残念ながら我が家は高さがありませんでした。

いかがでしょうか? 次回からはようやく本職であるインテリアに触れたいと思います。

(2014年4月8日「世界級ライフスタイルのつくり方」より加筆・修正して転載)