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アニメ『妖怪ウォッチ』は、平和な未来へのヒントに満ちている

2014年08月22日 00時21分 JST | 更新 2014年10月21日 18時12分 JST
Jamie Grill via Getty Images

好奇心にかられて観てしまいました、アニメ版『妖怪ウォッチ』......。まずはDVDのレンタルが可能な範囲(1~13話)まで。

感動してしまった。物語本体やキャラクターの作りももちろん素晴らしいのだが、なんと言っても、ああいった平和的な世界観のアニメが、現代の日本の子どもたちに大ウケしている、その事実に、私は強く心を動かされてしまったのだ。

(もちろん、先行ゲームありきの人気だとは思うが、でも、この爆発的なブームは2014年1月のアニメ放送開始以降のものなので、今回はアニメに限っての話をさせていただこうと思う。)

そう、『妖怪ウォッチ』は、とにかく平和的なアニメなのだ。こういった異界のキャラクターが次々出てくるタイプの物語(しかもゲームが先行しているもの)には珍しく、「俺が最強!」「腕力一番!」といった要素が、皆無......とまでは言わないが、ものすごく薄いのだ。そこにまず驚かされた。

そもそも前提からして平和的なのだ。自分たちと違う世界に住んでいて、そして、ちょっとばかり人間に迷惑をかけることがあるからと言って、妖怪を完全なる「悪」という風には決めつけない。『妖怪ウォッチ』という世界観の根底にはそんなルールが敷かれているようだ。あたらしい時代のアニメだな、と思った。

基本ストーリーを以下に記そう。

小学生のケータは、ひょんなことから、光を当てると妖怪の姿を見ることができる「妖怪ウォッチ」なる腕時計を手に入れた。日常で起こる不可解な出来事は、たいていの場合が妖怪の仕業。ケータは、頼りにならない妖怪執事・ウィスパーとともに、ちょっと迷惑なプチ事件を引き起こす妖怪たちと対峙する。彼らと話し合ったり、いままで「友達契約」を結んだ妖怪たちに助けてもらったりしながら、ケータはひとつずつ事件を解決していく。最終的にはその妖怪とあらたに「友達」になり、その証として「妖怪メダル」をゲットする――

舞台はすべて「さくらニュータウン」なる、ごくごくふつうの街。主人公もごくごくふつうの生活を送る、ふつうの小学生男子。特別にへなちょこなタイプというではないが、使命感バリバリなタイプでもない。彼は、たまたま行き会った、少しばかり迷惑な出来事を引き起こす妖怪を、できるだけ暴力的でない方法で「どうにかしていく」だけ。(これについては後述。)そして最後には妖怪と「友達」になってしまう。妖怪たちは、「やっつける」とか「服従させる」べき対象ではなく、「友達になる」べき相手として、ここでは捉えられているのだ。

「友達契約」を結んだ妖怪たちは、メダルを妖怪ウォッチにセットすることにより、即座にその場に呼び出すことができる。......という設定になってはいるが、あくまでそれは人間側の都合。妖怪たちには妖怪たちの生活があるわけで、その時に都合が悪ければ(海外でバカンス中とか......。)その場には現れてくれない。来てくれたとしても、力になってくれるかどうかは、妖怪の機嫌次第だったりする。決して思い通りには動いてくれない存在なのだ。主人公もそれを理解した上で、適度な距離感を保って、妖怪たちと付き合っている。人間と妖怪との関係は基本的に対等に描かれていて、人間にいいように、変な傾斜をつけることをしていない。

セリフの上では「出て来い!」とか「やっつけてやる!」とか、従来の戦闘型アニメと同じようなことを言っているが、「対決」の中身は、やはり、至極平和的。まず、基本的には交渉第一。「僕たちに迷惑かけるの、やめてくれないかな?」と、言葉での説得を試みる。それが聞き入れられない場合は、「友達」の妖怪を呼び出して助けてもらう。それも、妖怪同士を腕力でぶつからせるわけではなく、それぞれのキャラクターの特性を生かした対決のさせ方をするのだ。たとえば人々に秘密を暴露させてしまう「バクロ婆」なる妖怪には、そもそも秘密を持たない「ノガッパ」という純朴で素直な河童の妖怪をあてがって、ごくごく自然に消耗させる......といった方法がとられる。妖怪の身体が傷だらけになるような戦い方は、まず選ばれることがないのだ。

そして、「友達」になる前は、単に迷惑なだけだったそれぞれの妖怪たちの特性も、いざ主人公に呼び出されて他の妖怪と対峙するときには、むしろ「便利なもの」「ありがたいもの」としてちゃんと敬われるようになる。同じ特性でも、光の当て方によって、短所にも長所にもなる。それをうまく使うことが、自分のためにも相手(妖怪)のためにもなるのだ。

なんだか、教えられることが多いアニメである......。

違う世界に住んでいるもの同士、排除せず、過剰な介入もせず、ただただ互いを認め合って共存していく......。私たちは、そんな道を選ぶことだってできるのだ―― 

『妖怪ウォッチ』を見ていると、ふいにそんなことを考えてしまっている自分に気づく。これからの世界を生きていく上でのヒントが、このアニメにはたくさん散りばめられているような気がするのだ。

このような、さりげなくも、ものすごいアニメが、子どもたちに大人気だとは......。

いまの子どもたちは、私たち大人よりも、もしかしたら、ずっとずっと平和的な心を持った、素晴らしい存在なのかもしれない。

『妖怪ウォッチ』の世界観を好むような子どもたちが作り出す未来は、きっと、いまよりも、ずっとずっと明るく、やさしく、あたたかなものになっていることだろう。なんだか楽しみなような気がするのだ。