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お金や知名度が強さの指標だった日本のプロ野球の常識が覆る時

2017年07月16日 01時04分 JST | 更新 2017年07月16日 01時04分 JST

今年のプロ野球は革命元年。良い選手を他球団に放出し続け、2015年まで20年間3位以下だったカープが首位を独走し、他球団から主力選手をとり続け、10年連続3位以上のジャイアンツが球団ワーストの13連敗を喫し4位。普通に考えたら1軍と2軍くらいの実力差があってもおかしくないこの二球団だが、今シーズン、14試合やってカープが11勝3敗とジャイアンツをカモにしている。ちょっと前までは、カープが東京ドームで1年以上勝てないなんて珍しくなかったのに、30年間カープを応援したきた私にとっては感慨深いものがある。カープ同様、主力選手を他球団に取られてきたDENAが3位につけ、今、プロ野球に革命が起きている。

しかし、この革命の原因について、まだ納得のいく説明をどの専門家からも受けていない。よく、カープのスカウト力とか言われるが、そのスカウト力がなぜ最近になって開花したのかの説明がないのだ。私は、「ネット」の力が大きく作用したのではないかとみている。

新潟出身の私がカープファンになった30年前、カープの試合を見る方法は二つしかなかった。球場まで足を運ぶか、巨人との対戦をテレビで見るかだ。巨人の試合しかテレビで放映されないから、周りは巨人ファンばかり。私みたいに、7人兄弟の末っ子で、兄姉と同じチームを応援したくないからカープファンになったような者でない限り、巨人ファンになるのが普通だった。

今では、BSやスポーツチャンネル、ユーチューブなどでどこにいても試合やハイライトが見れるようになった。昨年まで17年間海外で生活していた私も、毎日、カープの試合のハイライトをユーチューブで見ることができた。これにより、全国民がどのチームの試合を見るか、自由に決めることができるようになり、勝つことが当たり前の巨人が勝つ姿より、負けることが当たり前のカープがなぜか毎年Aクラス争いをする姿に心打たれる人が増え始め、2013年、「カープ女子」現象が生まれ、昨年、25年振りの優勝につながった。

カープの魅力は、何と言っても勝った後のヒーローインタビュー。エースが勝つ度に白いTシャツに絵を描いてファンにプレゼントしたり、何を聞かれても「サイコーデース」と何度も連呼する選手がいたかと思えば、次の試合で、外国人選手がそれを真似したり、ドミニカ共和国の選手の通訳がたどたどしい日本語で通訳したかと思えば、次の試合で、日本人選手が話したチンプンカンプンの言葉を、通訳が日本語に訳したりと、ほとんど漫才状態。それこそが、他のチームから主力選手を取ってくるのではなく、外国人選手、ベテラン、若手らがファンと一体となって戦うカープの強さの象徴であり、それがネットの力で何倍にも増幅しているのではないか。

一方の巨人。「カープ女子現象」の前年の2012年に、限度額を大幅に上回るお金を積んで、アマチュアスター選手を獲得していた裏金疑惑が報じられた。一番裏金をもらっていたとされる阿部選手が今では巨人の顔となり、審判に体当たりしたり、試合中に後輩を叩いたりと、傲慢な様子がネットで拡散。そして、3番目に多額のお金をもらったとされる高橋由伸が、現在の巨人の監督で、就任した時、チームの鍵を握っている選手として、生え抜き5選手の名前を挙げた。他球団から来た選手でより活躍している選手がいたにも関わらず、なぜ、彼らと生え抜きとの間に溝を作るようなことをあえて言うのか理解に苦しんだ。現に、昨シーズン巨人に加入してきた他球団の元主力選手で、今年、活躍できている選手はほとんどいない。

7月9日、神宮球場にカープ対ヤクルトの試合を見に行ったが、「ここは広島か?」と思うほど、球場の半分以上が真っ赤に染まっていた。試合は延長12回引き分けで4時間半の長い試合だったが、カープファンの大部分は最後までスタジアムに残っていた。そして、試合後、カープが勝ったわけでもないのに、ベンチ裏へ駆け寄り、立ち去る選手たちに歓声を浴びせていた。一方、ヤクルト側のベンチ裏に集まるファンは半分以下。さらに、代打で出場し、併殺打を打ったカープのドミニカ出身の選手が、まるで大活躍をしたかのようなガッツポーズで歓声に応えると、ファンから笑い声が上がった。一方、ヤクルトの選手は負けたわけでもないのに、皆、下を見て歩きながた立ち去った。

巨人が輩出したスター、松井秀喜はメジャーから巨人に戻ることもできたにも関わらず、米国で引退を決意。一方、カープが輩出したスター、黒田博樹はメジャー球団からの高額年俸の提示を断り、カープで選手生活を終えることを選んだ。巨人戦しかテレビで見れない時代はとっくに終わり、カープやDeNAの躍進はお金と知名度だけが「強さ」の指標になりかけていたこれまでのプロ野球の常識を覆そうとしている。さあ、後半戦、どうなることやら。