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トランプ大統領の「孤立主義」を危ぶむ前に日本人が知らなければならないこと

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「アメリカファースト」を掲げるトランプ大統領の誕生で米国が「孤立主義」に走るのではないかと懸念されている。朝日新聞の山脇岳志アメリカ総局長は1月22日朝刊で「孤立主義」の対義語を「国際主義」とし、国際連盟の創設に屈力したウィルソン元大統領を、トランプ氏と異なる「国際主義者」と称えた。

しかし、現在の国際連合の原型を作ったから「孤立主義者」でないなんていう議論はあまりにもナイーブだ。ジュネーブで国連職員として2年働いた私は、国連は「国際協調」という名のもとに繰り広げられる「孤立主義者」たちの戦いの場でしかないということを思い知った。

「米国人の雇用」をトランプ大統領は就任演説で訴えたが、私はここ数年、「日本人を雇ってくれ」と請願する日本政府職員の姿を何度も目にしてきた。「あなたの機関には局長級の日本人職員がいない。現在、局次長級の○○さんと○○さんを局長級に昇進させてください」。

2015年10月、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の職員として外務省を訪れた私は、外務省幹部が私の上司に具体的な名前まで挙げて日本人優遇措置を訴えかけるのを聞き、驚いた。国連拠出金額では世界トップクラスにもかかわらず、日本人幹部職員の数が少ないことや、近年中国人職員が増加していることに日本政府が危機感を持っている裏返しだ。

「日本人職員増強」は日本政府の国連政策の柱の一つだ。毎年、政府は60-80人の若者を選抜し、2年間国連機関へ派遣し、彼らの人件費を肩代わりする代わりに、派遣後、正規職員として雇ってもらうよう、各機関にお願いしている。

私もこの制度でジュネーブに2年派遣されたが、派遣前の研修では「派遣後に正規職員になれない方は、派遣にかかった費用を返還させるべきだという国会議員の声もあります」と外務省の職員から言われた。

自国の職員を増強しようとするのは何も日本に限ったことじゃない。

多くの国際機関のトップは、なぜか必ず米国人が就くし、UNHCRもナンバー2のポストは、ずっと米国人だ。お金がある国が自国の国益を優先させようとした結果、UNHCRの幹部職員の7割近くが欧米人なのに対し、難民キャンプなど現地で仕事するスタッフの9割が発展途上国出身者という構図になってしまっている。

国連の「合同監査団」の報告書によると、世界各国の人権状況を調査する国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)で働く職員の46㌫が「組織内の人事・採用制度が透明でない」と答えた。こんな状況で果たして、健全なチームワークができ、人権調査ができるものなのか疑問である。

国連の専門職員の給料は米国の外交官並みで、発展途上国出身者にとっては、自国の平均賃金の10-50倍にあたり、最高峰の就職口だ。弱者救済をスローガンにしながら、国連では、「ジャパンファースト政策」によって、弱者から夢の就職口を奪ってしまっているという現実がある。

だから、もし、トランプ大統領が「米国人の雇用」を最優先に考えるから「孤立主義」と言うのなら、日本は「国際協調」という輝かしいスローガンをかぶせた「孤立主義」を、もう長年とっている。

国連に拠出金を多く出しているから「国際主義者」だなんていうことは絶対ありえない。自国の国益を最優先に考えるのは、トランプ氏に限ったことではないのだから。