「リフト券を持っていますか?」と英語だけで記載したら、外国人に対する偏見を生まないだろうか?

根本的な問題解決にはならないばかりか、外国人に対する偏見を生みかねない。
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私の家から車で5分ほどの所にあるスキー場のリフト乗り場にある看板がずっと頭から離れなかった。そこには「DO YOU HAVE A LIFT TICKET. Please purchae a ticket before getting on the lift」(リフトチケットはありますか?リフト乗車前にチケットをご購入ください)とある。メッセージ自体に物珍しさはないのだが、これが英語表記のみで、日本語表記がないということへの違和感がずっと付きまとうのだ。例えば、読者の皆さんが米国のスキー場に行き、日本語だけで「チケットをお持ちですか?」と書かれた看板があったらどう感じるだろうか?

前のブログでも書いたが同スキー場は経営がかなり苦しそうで、乗客のリフト券チェックはリフトの誘導員が兼務し、一回券使用の場合は、無人ボックスに券を投げ入れる仕組みになっている。誘導員が乗客全員のチケットをチェックするのは難しそうで、友人の中には1日券をポケットの中に入れたままリフトに乗車しても何も言われないことがあるといい、「チケット買わなくても大丈夫だったんじゃないか?」と冗談を言っていた。混雑している時に、誘導員が全員のリフト券をしっかりチェックしようとしたら、一度、リフトを止めなければ難しいだろうから、当然と言えば当然だ。

私は、あの看板に対するモヤモヤと決別することができず、スキー場の管理室へ尋ねに行った。女性の係員が応対してくれた。

私:すいません。あの、リフト乗り場にある看板はなぜ英語表記だけなのでしょうか?

係員:あ、たぶんですけど、「ここに一回券を入れてください」と言うのを係員が英語で言えないからだと思います。

私:看板には「チケットがありますか?」と書かれているのですが?

係員:ちょっとお待ちください。

年配の男性が出てきた。

男性:あ、あのですね、あれはチケットなしでリフトに乗ろうとする外国人が多くいましてね、それでああいう看板を立てることになったのです。

私:そういうことする日本人はいないのですか?

男性:日本人はほぼいません。

私:ほぼ?真面目にチケット買う外国人があの看板を見たら、「なんで私たちだけ厳しくチェックされなくてはいけないのか?」と思いませんかね?

男性:いや、別に差別の意図があってやっているわけではないのですがね。

私:米国のスキー場に行って、日本語だけであいいう表記があったらどう感じますか?

男性:いや、私は得に何の問題も感じませんがね。

私:看板設置してから、リフト券を持たずに乗車してくる人はなくなりましたか?

男性:はい。完全になくなりました。あの看板のおかげで、係員の目をジロジロ見ながら乗車してくる人がいなくなりましたからね。係員はそういうの見分けるのがプロですからね。

私:そうですか。わかりました。

あの看板設置後に無賃乗車がなくなるのもありえないし、無賃乗車するのが外国人だけなんてのも、私はありえないと思う。国籍に関係なく、無賃乗車する人のほとんどは、リフトが有料だとわかっててやっているわけで、「リフト券ありますか?」と文字で尋ねても、そこまで抑止力は発揮しないだろう。チケットチェックを誘導員に兼務させている時点で、経営者側は、全員のチケットをチェックする人を雇う人件費より、無賃乗車で失う利益の方が小さいと見込んでやっているわけだ(ヨーロッパの公共交通機関はこの考えで運営している所が多い)。

だから、あの看板は根本的な問題解決にはならないばかりか、外国人に対する偏見を生みかねない。英語がわかる日本人があの看板を見たら、「無賃乗車するのは外国人だけなのかな?」と思わないだろうか。日本語表記を付け加えるのなんてお金も時間もそこまでかからないのだから、こういう注意喚起はできるだけ両言語表記でやってはどうか?常日頃から南魚沼市は地域活性化のために外国人観光客を呼び込みたいと言っているが、それが本当なら、なおさら外国人に対する偏見を生みかねない行為は慎むべきではないか。

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