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ステージ4のがん患者だからこそ持ちたい、大切な2つの視点

2017年04月26日 00時50分 JST

デザイナーの広林依子と申します。私は現在29歳の、ごく普通の女性で、独身です。友達とカフェでワイワイ話したり、おしゃれを楽しんだり、ときには海外旅行に出かけたりしている普通の生活を送っています。他の人と違うのは、3年前の26歳のときに乳がんを宣告され、そのときすでに骨に転移しており、それからステージ4のがん患者人生を送っていることです。

このブログでは、デザイナーの私が考えた、【ステージ4のがん患者のライフデザイン】の1例を紹介していきます。今回のテーマは、がん患者が大切にしたい2つの視点について書きます。

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・入院や寝たきり生活は、視野が狭くなる

ステージ4のがんの場合、病状が悪化したときなどなかなか外出できないこともあります。動けなくなると、ちょっとしたお出かけや買い物、趣味などの時間を持つのが難しくなって、生活における選択肢がどんどん少なくなります。寝たきりの暮らしは、気分転換もできないのでどんどん視野が狭くなります。精神的にも負担がかかって、ときにはうつ病の原因になることもあります。

私も、病気の影響で背骨を圧迫骨折した経験があります。治療していた約2カ月間は、ずっと家の中で一日中横になって過ごし、どこにも行けず非常に気持ちが落ち込みました。トイレすら、痛み止めを1時間前に飲まないと行かなければならず、人として最低限のことをするのに神経を集中させる時間が増え、どう身体を動かすか、ということばかり考えるようになり、心の余裕が無くなっていきました。

気分転換が出来ないと、どうしてもネガティブなことを考えてしまいます。私は、お出かけが大好きでフットワークが軽いタイプなので、イベントなどがあるとよく参加して人と交流していました。体が動かないことで大好きな時間が奪われ、外の情報が減っていくのはとてもつらかったです。

そんなときに、気分を上げて視野を広く保つために使ったのが、SNSの【Instagram】でした。

・Instagramで世界旅行をしよう

写真のSNSであるInstagramは若い世代を中心に流行っています。おしゃれで味のある写真が撮れることが特徴だと思いますが、私は何よりも「世界旅行できる」のが魅力だと思います。

Instagramは世界中の人が使っているので、見たい国や都市のハッシュタグを検索すれば、ほぼその街のリアルタイムの様子が見ることが出来ます。しかも、無料で。

travel

骨折していたとき、私はベッドで横になりながらInstagramを使って色んな国や気になる街を旅しました。大好きなNY、パリ、ロンドン、時にはアフガニスタンなど、なかなか行く機会がない国も......。すると、そこには行ったことのない景色や美味しそうな郷土料理、その地に暮らす人たちの文化や日常がありました。じっくり眺めていると視野が広がり、一人きりで鬱々とする気持ちを忘れることができました。

・ミクロとマクロ、2つの視点を行き来しながら考える

日々の生活をミクロの視点で考えるだけでなく、本や映画、Instagramなどを使って、普段よりも広いマクロの視点を持つようにすると、多角的に考えることができ、偏らない価値観を持つことができると私は考えています。

この「ミクロとマクロを行き来して物事を考える」という方法は、私の友人の安部敏樹さんが代表の株式会社リディラバの行動指針の一つです。(URL: http://ridilover.jp/recruit/#principle)リディラバは、様々な社会問題と出会うきっかけを研修やスタディツアーなどで提供している会社です。

私はリディラバの活動に共感しており、たまたま「ミクロとマクロを行き来して物事を考える」という行動指針を見て、ステージ4のがん生活に応用してみました。

ミクロとマクロの2つの視点で考えるために、例えば、病気の治療方針は、患者とそうでない人、医療従事者のそれぞれに相談しています。がんの情報も、専門の本を読むだけでなく、実際に医療従事者にメールで相談したりしています。

入院中で動けなかったときは、友人のオススメの本を読んだり、世界一周をした友人に旅行の話を聞いたりして、まだまだ知らない楽しい世界があるんだとテンションを上げたりしました。視野を大きく広く持つことで、身体が動かなくて生活のことばかり考えていた自分がちっぽけな存在に思えるようになりました。

・「普通」にとらわれず、自分らしく生きる

「がん患者だから、こうするのが普通」。ときにそういう言葉を聞くことがあります。私はそういったフレーズが大嫌いです。がん患者なら経験があると思いますが、「かわいそう」「大変だね」「なんでそんなにポジティブに過ごせるの?すごいね」などと言われることがよくあります。メディアでも、いわゆる感動ポルノのような切り口で紹介されることが多いように感じます。

しかし、当事者たちはそういう目で見てほしくないのです。他の人と同じく、普通の人として見てほしい。たとえ障害を持っていたって自分らしく生きたい。

がん患者であっても、仕事して恋愛して結婚して子供を産みたいと思う人もたくさんいます。病気になったからといって聖人君子になるわけではありません。ですが、「がん患者だから◯◯」という枠組みがあることで思考停止してしまうのです。

私は「千羽鶴の贈り物」をもらうよりも、自動千羽鶴織り機のことを考えていたほうが楽しい。募金が必要な人もいますが、私はお金や物ではなく、形にみえない興味や関心を大切にしていきたい。

がんであるかに関わらず、人生において思い通りにならないことは沢山あります。けれど、「がん患者だって何をしてもいい。自分の思い描いた人生を選ぶことができる」。私はそう思っています。

私は、同じ立場の人にも「がん患者だから◯◯」という固定概念にハマらないように、視野を広げる癖をつけ、なるべく大きな視野で柔軟な発想をしてもらいたいと思っています。

がん患者というマイノリティ性には、価値があるのだということを忘れないでほしいです。思い通りにならない自分には、思いがけない価値があるかもしれない。そんな可能性を忘れないでほしいです。

何か困難を抱えていても、なお前向きに生きる人たちの気持ちに寄り添える社会になってほしいと思います。困難にぶつかったとき「私どうなっちゃうの?」と不安になるのは皆同じです。だけど安心してください。どんな人にも、平等に、沢山の可能性があるはずです。