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「2回めの余命宣告、怒りを感じた」医療者と冷静にコミュニケーションをとるコツ

自分の人生は、医師に決められるものじゃない

2017年10月26日 12時13分 JST | 更新 2017年10月29日 21時33分 JST

広林依子ブログの読者の皆様へ

広林依子は2017年9月5日に享年29歳で逝去しました。これまで広林の記事を楽しみにして下さっていた読者の方々へ訃報をご連絡しなければならないことを心苦しく感じています。

広林本人の意向により、生前にハフポストへ投稿する予定だった3つの記事を順次、公開する予定です。

広林の記事にあるように、彼女が行ってきた「生産活動」を皆様が憶えていてくれることは、彼女の生を延長させる事になると共に、供養となりますので、是非これまでの記事と併せて読んでいただきたいと思います。

広林は最後の入院中も、今後自分が何をやるべきか、何を残せるのかを考えているほど、希望を捨てずにいました。自分の時間が無くなっていくことへの悲しみというより、悔しさ、怒りがあったと私は広林の隣で感じていました。今回の記事のテーマは「怒り」です。(くまちゃん

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デザイナーの広林依子と申します。私は現在29歳の、ごく普通の女性で、独身です。友達とカフェでワイワイ話したり、おしゃれを楽しんだり、ときには海外旅行に出かけたりしている普通の生活を送っています。他の人と違うのは、3年前の26歳のときに乳がんを宣告され、そのときすでに骨に転移しており、それからステージ4のがん患者人生を送っていることです。

このブログでは、デザイナーの私が考えた、【ステージ4のがん患者のライフデザイン】の1例を紹介していきます。今回は、私が病気と向き合う上で大切にした"怒りのエネルギー"について書いてみます。

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・2回めの余命宣告を受けたとき、怒りを感じた

私が抗がん剤治療を再開して数ヶ月経った頃、最初の抗がん剤が効かなくなってしまいました。別の抗がん剤治療を始めたものの、全く効かず副作用で入院をしてしまい、主治医から余命2カ月を宣告されました。ついに総合病院で、積極的治療から見放されてしまったのです。

こう書くと、余命宣告された私は深く傷つき、悲しんだと思われるかもしれません。でも実は、周りの人に言うとびっくりされることなのですが、私は医師に厳しいことを言われた時、大きな怒りを覚えます。

医師の説明を聞いて怒るのは、とても珍しいことのようです。普通は落ち込んだり悲しんだり、途方に暮れたりするものだそうです。でも私は、怒りの感情はがんに負けない生きかたには大切なことだと思っています。

・自分の人生は、医師に決められるものじゃない

自分の人生は医師に決められるものじゃないと私は思います。余命や今後の生存確率は、あくまで現在における統計学的な話です。例え「20%の確率」といわれたとしても、私のクローンを100人作って実際にサンプリングしなければ、本当に正確な確率はわからないものです。

だからこそ、「(現時点で)治療はない、だから余命は2カ月」などと決められることが理解できず、怒りを憶えました。

それでも「もう治療法がなく、これからは主に緩和ケアで診てもらうように」と在宅医療に向かって周りの環境がどんどん切り替わっていく様子を目の当たりにして、「なんで私は今元気なのに、在宅医療をしなきゃいけないの?」と嫌な気分になりました。

広林依子

・在宅医療をして出会った人たち

実際には、在宅医療を始めたおかげで、良い先生や看護師さんとの出会いがありました。ここでも医療者には、ちゃんと自分の思いを伝えることが大切だと感じました。

最初に、在宅看護の医師に、深刻な様子で【どこで死にたいか】を聞かれ、病院か自宅の二択を迫ってきたときは憤りを憶えました。しかし、私が意外と元気にブログを発信していることを伝えると、私の話にちゃんと耳を傾けてくれるようになりました。最近では私のブログを読んで細かく質問してくれたり、美術に興味を持ってくれたりして、新しいコミュニケーションが生まれています。

在宅看護の看護師さんは、最初は「お風呂の介助などが必要かな」と聞かれて、心の中で「そんなにおばあちゃんじゃない!」と怒りを感じましたが、私が元気なのを知るやいなや、アロママッサージをしてくれました。

毎回のアロママッサージはとても気持ちが良く、今では私の医療面の良き相談相手兼専属セラピストになりつつあります。

こんなふうに新しい出会いやコミュニケーションも生まれ、「意外と悪くないぞ、在宅医療!?」ともっと知りたくなっています。

私なりに在宅医療のルールを設けていて、「3回以上、私が出来ないことがあれば介助をお願いします」と伝えています。今のところその機会が無いので、上記のようなコミュニケーションを続けているところです。もちろん、今後私の状態が悪くなれば、私の在宅医療のあり方も変わっていくでしょう。

・余命宣告を受けても、新しい治療に出会える

一度「治療はない」といわれた私ですが、現在は幸運にも新しい治療に出会うことができました。もちろんいわゆるトンデモ治療などではなく、保険診療内での治療です。今はその治療と緩和ケアと在宅医療の3本セットで、安定した体調でがん治療を続けています。

何事もあきらめたら試合終了です。

私にとって、怒りのエネルギーは必要なものでした。私はいま元気なのに「なんで治療法がないの?」「なんで余命を決められなきゃいけないの?」......ひとつひとつの常識が理解できなくて、怒りが湧きます。だからこそ思考停止に陥らず、「なんとかしなきゃ」と工夫しようと頭を巡らせることができるのだと思います。

大事なのは諦めないこと。私は治療がないと見放されてからも諦めなかったこと、新しい治療を探したことで、新しい先生に出会うことができました。

医師の話を聞いて、ただ悲しみ落ち込んでしまったら、そこで思考停止してしまったことでしょう。

・ちょっとずつ「ゴール」に心を近づけていく

かといって、最初からポジティブにがん治療と向き合うことはむずかしいです。そういうときは、ポジティブの目標値を今より"ちょっと上"にしてみて、それができたらどんどん目標を上げていくといいと思います。

いつしか最初に目標にしていたポジティブの基準よりもだいぶ高いところにいる、といった事が起きます。いきなり全速力は無理ですが、マラソンのように前を向いてちょっとずつ走り続けていけば、いずれ心も軽くなることが可能です。

これは私が絵を習っていたときに教わった方法です。絵を描くときも、ちょっとずつ高い目標を設定し、徐々にゴールのレベルを上げていくと、いつのまにか絵が上手くなっている現象を応用したものです。

「こうありたい」という自分のゴール設定はとても大事で、それが生きることにもつながります。それは日常を生きることも、がんを治療するときも同じくらし大切です。

「怒り」は自分の感情だけで終わってしまいますが、「理解できない」はコミュニケーションするきっかけになります。自分だけで終わらせず、どうか諦めずに外に表現して、ときには誰かに相談して、より大きなゴールを設定する努力をしてみてください。すると思いがけない新しい自分に出会えるかもしれません。

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