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広林依子 Headshot

ステージ4のがん患者としての人生、新しい趣味を楽しんでいます

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デザイナーの広林依子と申します。私は現在29歳の、ごく普通の女性で、独身です。友達とカフェでワイワイ話したり、おしゃれを楽しんだり、ときには海外旅行に出かけたりしている普通の生活を送っています。

他の人と違うのは、3年前の26歳のときに乳がんを宣告され、そのときすでに骨に転移しており、それからステージ4のがん患者人生を送っていることです。

このブログでは、デザイナーの私が考えた、【ステージ4のがん患者のライフデザイン】の1例を紹介していきます。

今回は、人生を豊かにする趣味について書いてみます。

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・治療を始めた直後、新しい趣味に出会う


がんと診断される直前、私はデザイナーとしての幅を広げようと、デザイン会社を退職して転職活動に本腰を入れようといました。

しかし、抗がん剤治療を開始した直後は心も身体もボロボロで、とてもじゃないけど新しい会社に転職する元気はありませんでした。

そんなときに、たまたま依頼をいただいた煎茶の茶袋のデザインをすることなりました。

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私はお酒があまり強くなく、「飲む」ことを楽しめなくて残念に思っていたのですが、「煎茶」を知っていくうちに、煎茶にも色々な種類があって、淹れ方を工夫すれば同じ茶葉でも違う味が楽しめたりするなど、奥深い世界があることが分かりました。

茶道に比べて敷居が低くお手軽ということもあって、お酒を色々飲み比べするような感覚で煎茶にハマっていきました。

日本で流通している緑茶の90%以上は「やぶきた」という品種なのですが、他にも沢山の品種があります。

まるでマカロンを食べた後味のようなお茶もあったり、非常に濃厚なお茶もあったり、やぶきたの味しか知らない人がかわいそうだと思ってしまうくらいに様々なお茶を味わいました。

今は、朝起きたときに、熱々で飲める番茶をゆっくり飲んでいますし、疲れたときは旨味の強い70度くらいのお茶を飲んだり、病院から帰ってきたときは甘みの強い冷たいお茶を選んだり、気分に合わせてお茶を選んで楽しんでいます。

入院するときは、お気に入りの茶葉を持っていくことにしています。

急須と湯沸かしと湯さましさえあれば良いので、いつでもどこでも煎茶でリラックスできます。冷茶なら作って持ち運ぶこともできます。

ステージ4のがんを患って絶望を味わったのに、まだこんなに美味しいお茶の世界を新しく知ることができるんだ、とがんライフを楽しむ心の余裕もできました。

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最近描いた着物姿の日本女性


・新しいことを学べる嬉しさ、着物と茶道も始める


煎茶をきっかけに、まだ新しいものを学ぶ時間があると知った私は、茶道を学び始めました。縁あって着物を楽しむ友達もできました。

着物はパーツが多く、着物に合わせる帯と帯締めなどのコーディネートを考えるのが非常に楽しくて、どんどんハマっていきました。

コーディネートを選ぶのは、まるで絵を描いているような気分。普段は着ないような色や柄を着てお出かけする楽しみもあります。

着物の所作を学んだことで、昭和の映画に出てくる艶やかな女優たちの着物の着こなしや、美しく魅せる所作、足腰の強さなどにも興味を持つようになりました。

新たな女性の魅力を発見し、着物を着ている時間が本当に楽しくて仕方がありません。

着物で、お茶事の体験もしています。お茶事は、非日常を楽しむ静かな時間。

そこには、大好きな美術館に似た静けさや、作法や精神性を重んじる文化があり、私の心を引き締め生活にスパイスを与えてくれます。茶道の魅せる所作、手の動き......一つひとつがとても美しい世界です。

「道」は日本特有の文化。日本人の非価値なものに心を込めて極めるという精神性は世界的に見ても貴重です。

日本人に生まれてよかったなぁと思える文化です。

・もっと色んなことにトライしようと思えるように


新しい趣味は、まるで私に新しい人生を与えてくれたように感じました。もっと色んなことを知りたいと思えるようになり、今までやったことのないことをやってみたいと思える気力が湧きました。

長野県を旅行したときに、乗馬体験をして、馬に飛ばされ危うく落馬しかけたのもいい思い出です。秋の澄んだ空気の中、魚を釣ってBBQをしたり、日本酒を飲み比べたり、大きな湖を眺めたり。標高1800メートルほどの山で満点の星空を眺めたり......。

ワインのラベルに10年後の夢を書いてストックし、10年後に開けて飲もう、という遊びもしました。

ステージ4のがんになったことは、本当に大きな人生の転機でした。しかし、その後も、新たな趣味のおかげで、今まで分からなかった人生の楽しみを知りました。私はまだ20代で、知らないことばかり。もっと多くのことを知りたいという気持ちに溢れているのです。

がんになったら人生は終わりではなく、新たな人生は続いていて、いつでも新しく学び始めることができます。

がんという病気や治療に向き合うのも大切ですが、思い切って自分のやりたいことを始めて、新しい自分になってみるのはいかがでしょうか。

人間は成長を続けることができます。

がん患者としての人生を、新たな学びを楽しむことで、よりかけがえのないものにしてみてはいかがでしょうか。

最後に、友人が長野旅行のときの私の様子を書いてくれた詩を紹介したいと思います。命の灯をともして進みたいと思います。

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長野の星空写真(Photo by NINJIN)

雲梯 詩・sacrum

光の道を右手に
鈴の音を鹿の足音にあわせて
進め

たまった埃を吐き出して
涙を乾かすほどの
乾いたこの空気を
胸いっぱい吸うの
肺を洗って背筋を伸ばし
朝をやり直す
きっとまたここで呼吸を始める

雪の下
結ぶこぶし
桜の花を握り
開くときを待つよ

春を握りしめた小さな種
命の灯をともして
時を待て