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子どもを路頭に迷わせない方法。

2017年06月10日 16時47分 JST | 更新 2017年06月10日 16時47分 JST

教育費に関する議論が活発化している。

奨学金の返済が出来ない人に訴訟が多発している、返済に困った女性が風俗店で働いているといった報道が度々話題になったことを発端に、返済不要な奨学金や教育国債、こども保険など、子育て費用に関わるニュースが度々報じられるようになった。

普段ファイナンシャルプランナーとして相談を提供する際にも子育て費用は重要なポイントになる。

これらの話題は国の経済発展がウンヌンといったマクロな視点で語られることも多いが、より身近な視点で考えると親の悩みである「自分の子どもを将来路頭に迷わせ無いためにはどうしたら良いか?」という話に行きつく。

そこで簡単な方法を考えてみたい。

■私立中に行かせたい夫婦は9割。

自分は普段FPとして住宅購入の相談を提供している。近年は不動産価格の上昇で負担が大きくなっていると言われているが、5000万円のローンを組んでも実際の返済額は10万円代半ばから後半くらいで、夫婦共働きならば十分返済は可能な額だ。

※返済額の概算は執筆時の全期間固定金利、35年ローンで管理費や固定資産税等も含んだ額。

ただ、ライフプラン全般で考えると住宅費用と並んで子育て費用の負担がのしかかる。義務教育だけならば負担は大きくはないが、そのレベルで教育水準を考えている人はまずいない。

子ども2人で大学進学を前提に、習い事や塾、私立中学など、できる限りのことを子どもにしてあげたいと考えている親は多い。私立中学の進学率は都心部で3割から4割と非常に高いが、自分が相談で対応する夫婦で私立中進学を希望する割合はおおよそ9割だ。

家を買うタイミングは結婚して子どもが生まれてから数年後という人が多いため、中学進学は10年以上先の夫婦がほとんどだ。実際に私立中に通わせるかどうかはその時に判断する事になるわけだが、この割合は極めて高い。

私立中学の費用は平均で見ると公立中進学時の子育て費用と比べて平均で100万円ほど上乗せされる。3年で300万円、子ども2人ならば600万円程度となる。そこから私立高校、私立大となればさらに負担は重い。

特に私立大学は親が全額負担をすると老後資金を直撃する。老後に親が金銭的に不安定な状況になれば子どもが困ってしまう。親の生活を子どもが支えるような状況と比べれば、奨学金を超低金利ガッツリ借りてゆっくり返す方がよっぽどマシだろう。

ただ、できれば子どもの学費は全て出したい、出来る限り教育にお金をかけたいと考えている夫婦は多い。理由は様々だと思うが、子どもが将来路頭に迷わないように出来るだけの事をしてあげたい、という話に行きつく。

低賃金で働く非正規雇用者の増加やブラック企業の蔓延など、将来子どもが路頭に迷いかねない状況は多数ある。公的な支援などによって解決すべき問題も多々あるが、個人で出来ることは無いのかと考えると、実は簡単な対応策がある。しかも親に負担はほとんどない

■実家住まい+強制貯金。

この対応策は一定の条件は必要だが、やるべき事は簡単だ。

  1. 子どもが就職した後も実家に住まわせる。
  2. 実家に住まわせる条件として、生活費は1円も入れなくていいから毎月10万円の貯金を強制する。
  3. 2の約束を守れない場合は家から追い出すと約束する。

毎月10万円、年間120万の貯金が出来ている夫婦はおそらく少数派だろう。それが独身で実家住まいであればフリーターでも可能だ。今の賃金を前提に試算をすると、仮に非正規雇用になったとして、東京であれば最低賃金は932円、昼間の仕事でも探せば時給1000円を稼ぐことは十分可能だ。

時給1000円、1日8時間労働で月に22日勤務ならば月給は17.6万円となる。ここから所得税、住民税、年金・健康保険などの社会保険料を差し引き、10万円の貯金を差し引いても社会人の平均的なお小遣いである2〜3万円程度は残る。

※地方は賃金が低く非正規雇用者の手取り額ももう少し低くなる。あるいは奨学金の返済があるとその分だけ手元に残る資金は減るが、その場合は強制貯金の額を少し減らせば良い。

これを実行した場合、5年で600万円の貯金が貯まる。高卒ならば22~23歳、大卒ならば27~28歳でこれだけの資金が手元にあれば金銭的に困る事態はほぼ回避できる。正規雇用で収入が高い人ならば貯金額はもっと増やしても良い(5年に区切る必要はなく、もっと長くても良い。5年はあくまで目安の一つに過ぎない)。

子どもは文句を言うと思うが、一人暮らしをすれば1カ月の生活費が10万円で済むことは無い。10万円も貯金をすると自由に使えるお金(お小遣い)は極端に減ってしまうが、結婚して子どもが生まれればどっちにしろ使えるお金は似たような額となる。

一昔前には就職したら一人暮らしをして一人前、いつまでも実家にいるのは甘えている、といった感覚を持つ人も多かったと思うが、多額の貯金でリスクを避けられる事を考えれば、実家住まいで20代のうちに600万円の貯金を確保する意味は極めて大きい(インフレリスク等は一旦考慮しない)。

■600万円の貯金はリスクを避けてライフプランを実現する。

奨学金の返済が苦しい、非正規雇用で収入が少ない、ブラック企業に間違って就職してしまったが(次の仕事が簡単に見つからないため)辞めるに辞められない、あるいは大病にかかって働けなくなる等々、いずれも600万円も貯金があれば容易に乗り切れる。貯金が600万円もあればブラック企業は即日辞める事も可能だ。

特に問題が起きなければ手元に残った資金は結婚式に使うなり、住宅購入資金にあてるなり、あるいは人によっては留学資金にあてるなり、自由にすれば良い。

いかにも節約が大好きなFPが考えそうなアイディアだと我ながら思わないでもないが、近年話題となる成人後のリスクは上記の通り多くが金銭的なリスクでもある。

若いうちは貯金なんて考えずにお金をつかった方が良いといった意見も散見するが、実家住まいで給料は全てお小遣い、という人が将来に対して有益にお金をつかっている事は決して多くは無いだろう。

そして一人暮らしをしていると、家賃がいくら、食費がいくら、だからお小遣いとして使えるのは**円だけ......という、嫌でも身につく「やりくり」の感覚が、実家住まいで給料が全てお小遣いという人は身につかない。金銭教育としても強制貯金は意味がある。

特別な事情があってどうしてもお金を使いたい場合はその都度資金計画を提出させればいい。

■お金を貯められる時期は案外少ない。

多数の家計を見ていると人によって貯金額は驚くほど違う。30代の夫婦でゼロに近い家庭もあれば、1000万円以上貯めている場合もある。

貯まっているお金の原資を聞いても、夫婦のいずれか一方が一人暮らしの時に貯めていたケースもあれば、結婚式と新婚旅行で使い切ってしまい、これではヤバイとその時点から貯金をするようになったケースなど様々だ。

一番多いケースは結婚して子どもが生まれてから意識が変わって貯金をするようになった、(貯金のスピードが加速した)という人ではないかと思う。あるいは住宅購入がきっかけになる人も多い。ただ、この時点から貯金を始めると理想のライフプランを実現出来ない場合もある。

家を買うタイミングは結婚して子どもが生まれてから就学するまでが多く、わずか数年で理想の家を買うための資金を貯めるのは難しい。すると理想を下げるか、多額のローンを抱えるか、選択肢はいずれかしか残らない。

お金を貯めやすい時期は3つある。

  1. 結婚するまでの独身の時期。
  2. 結婚後から子どもが生まれるまで。
  3. 子どもの独立後。

......ということで、2と3の間は極端に期間が空いてしまううえに、将来の時点でどれだけ稼げるかは全く分からない。子育て中はいくら稼いでも住宅ローンや教育費でかなりの額が消えてしまう。

■貯金が極端に多い夫婦は***がいない。

身も蓋もない事実として40代くらいでウン千万円の貯金を確保している夫婦は、よっぽど収入が高い人を除くと子どもが居ないからというケースが非常に多い。

一番貯めやすい就職直後から結婚するまでの時期に浪費をさせず強制的に貯金をさせることは、リスクを避けることはもちろん、将来希望するライフプランの実現可能性を上げることにもつながる。

10万円も貯金しないと家から追い出されるなんてヒドイ!と子どもからは恨まれそうだが、おそらく10年もしないうちに感謝されることは間違いない。

■強制貯金は目的ではなく手段。

この強制貯金が実現出来ないケースは、実家から勤務先まで距離があり、子どもが一人暮らしをする場合だ。残念ながらこれについて解決策は無い。強制貯金を優先させて無理矢理実家近くの会社に就職させる、となると本末転倒だ。

強制貯金の目的はあくまで子どもが路頭に迷わないように、そして理想のライフプランを送ることが出来るようにすることであり、貯金は手段でしかない。

■20代で1000万円の貯金が可能だったはずが......。

強制貯金の仕組みは個人的な体験から着想を得ている面もある。自分はかなり早い段階で一人暮らしを始めた。これは自分の意思によるものだが、1カ月の生活費はお小遣い的な支出を除くと当時は15万円から20万円程度だったろうか。

年間でざっくり見積もると200万円だ。もし一人暮らしを始める時期が5年遅ければ、1000万円の貯金が出来ていたはずだ。これに気づいた時はすでに30歳を超えていた。一人暮らしのメリットも多々あったが、金銭的なデメリットは非常に大きかった。

もちろんこれは子どものリスクを避けるために実家へ子どもを縛り付けろ、という話ではない。親がもつリソース(資源)を最大限に利用して子どものリスクを軽減させるテクニックである。しかも親の負担は極めて少ない。

習い事に通わせたり、私立中学に進学させたり、あるいは偏差値の高い大学への進学をサポートしたり、子ども将来のためにやれることは沢山あると思うが、それ以外にも子どもを路頭に迷わせない方法はあるはずだ。その中で最も直接的に役立つことがお金を強制的に貯めさせることだろう。

「お金で幸せは買えないが、不幸になることは防げる」ともいう。これは至言と言っていい。

■貧乏生活を甘く見るな。

何年か前だろうか、友人から独立の相談を受けたことがある。その友人は安定した会社に勤めており、収入も高かったが、独立して仕事をしたいと前々から考えていて実行に移したいという。

独立プランの中身を聞いてみたものの、とても成功するようには思えなかった。余計なお世話ではあるけど、そしてあくまで自己責任だけどと断ったうえで、そのプランだと収入は半減じゃ済まない、収入ゼロの確率も高いから辞めといた方が良いと伝えた。

その頃自分はFPとしてすでに独立していた時期で、やりたいことを仕事にしているお前がそんなことを言うのはおかしいじゃないか、と反論をされた。

自分は独立直後、お客さんが来なくて貯金が日々減っていく状況に陥ったこともある。そんな状況は経験しないで済むならそれに越したことは無い。目標をかなえるためならそれでも構わないとまで言うので、貧乏生活を甘く見ない方が良いと伝えた。

覚悟だけで成功できるほど起業・独立は甘くない。確率的に見れば起業・独立はほとんど失敗することは統計データが示している。独立をやめろというより、リスクを取っているからこそ伝えられるアドバイスをしたつもりだったが、よっぽど腹に据えかねたのか、その後友人とは疎遠になった。

■お金があると優しくなれる。

爆笑問題の太田光さんはとあるインタビューで「収入が増えてからの方が人にやさしくなれた」といった回答をしていた。随分前に見たインタビューのため、どういった経緯でそんな話になったのか詳細は忘れてしまったが、これは本質をついた話でもある。

若い時の苦労は買ってでもせよということわざもあるが、貧乏生活に限ってはしない方が良いに決まっている。親が子どもに出来ることは限られているが、教育以外の方法として強制貯金があることは伝えておきたい。

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中嶋よしふみ シェアーズカフェ・オンライン編集長 ファイナンシャルプランナー