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日本のアニメーション100周年 アニメ活用の地方創生が盛り上がる

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◆アニメ『君の名は。』が大ヒット


新海誠監督による長編アニメーション『君の名は。』が大ヒットを記録している。

「映画の興行収入の歴代ランキング」(興行通信社)によると、2017年2月19日現在で『君の名は。』の興行収入は240億円を突破し、歴代4位という成績となっている。

ちなみに、日本の劇場公開アニメーションで興行収入が100億円を突破したのは、宮崎駿監督作品以外で初めてのことである。

宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』(2001年)は308.0億円で興行収入1位、『ハウルの動く城』(2004年)は196.0億円で同6 位、そして『もののけ姫』(1997年)は193.0億円で同7位となっている。

また、昨年12月18日付の日本経済新聞には、「『君の名は。』旋風 中国でも」と題する記事が掲載されており、中国における興行収入が日本映画としては過去最高であった「STAND BY ME ドラえもん」の記録を更新し、歴代1位となったと報道されている。

余談となるが、2016年公開の映画として『君の名は。』に次ぐ興行収入を稼いだのは庵野秀明総監督・脚本による『シン・ゴジラ』である。『ゴジラ』の第1作が公開されたのは1954年のことであった。

そして、アニメ『君の名は。』と極めて似たタイトルだが、まったく別の作品である『君の名は』が公開されたのも、1953年から1954年にかけてのことであった。

まるで今から60年以上前の映画2本がリメイクされて同時にヒットしているかのようである。

◆アニメ100周年プロジェクトの展開


日本のアニメーションは、本年2017年も盛況が続きそうだ。と言うのも、2017年は日本アニメーション100周年という大きな節目の年を迎えることになるのである。

今から100年前の1917年、ほぼ同時期に下川凹天(しもかわへこてん)、北山清太郎、幸内純一(こううちじゅんいち)の3人によって日本初のアニメーションが東京・浅草で公開された。

以来、今日までの100年間に日本で制作されてきたアニメ作品は、2016年9月末時点でシリーズ作品含むタイトル数およそ11,723作品、サブタイトル数では158,442話にまで上る(一般社団法人日本動画協会の作成したアニメーションデータベース『日本のアニメーション大全』による)。

こうして日本のアニメは、現代日本文化を代表するコンテンツとして成熟し、世界でも高く評価されている。

そして、日本におけるアニメーションの業界団体・日本動画協会は、「100周年プロジェクト」を展開している。

次の100年へ向けた日本のアニメーション文化の基盤を構築することを目的として、具体的には、日本のアニメーションのデータベースやアーカイブの構築、未来のアニメーション・クリエーターの育成プロジェクトが展開される予定である。

また、国内外での巡回企画展等も企画されている。そして、この「100周年プロジェクト」のキックオフと位置づけられるシンポジウム「アニメのつくる未来」が、2016年12月6日に秋葉原で開催され、日本のアニメーションの可能性と課題についてさまざまな議論が展開された。

◆「MANGAナショナル・センター」構想も


これまでの動きを振り返ると、2014年には、超党派の議員により「マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟」が結成されており、2015年には「MANGAナショナル・センター構想」が打ち出された。

「MANGA」とは、マンガ(Manga)、アニメ(ANimation)、そしてゲーム(GAme)の頭文字を組み合わせたものである。

同センターは、MANGAの世界的拠点として、関連資料の収集・保存及び提供、連携拠点機能を有するミュージアムを新設、国立国会図書館の支部機能をPFI等の民活で整備する構想となっていて、明治大学が計画中の「東京国際マンガミュージアム」(仮)計画等とも連携し、2020年春の開館を予定している。

そして、この構想の特徴として、京都精華大学や全国各地に立地する関連施設等との連携により、オールジャパンによるMANGAナショナル・センターのハブ(軸)を目指している点を指摘できる。

2017年には、本プロジェクトに関しても具体的な動きが見えてくるであろう。

◆京都市では「東アジア文化都市」を開催


アニメやマンガをめぐる動きが見られるのは東京だけではない。たとえば京都市では、マンガ・アニメ等のコンテンツ産業の市場創出を図っている。

京都市では、すでに2006年に、マンガ学部を擁する京都精華大学との共同事業として、日本初のマンガ文化の総合拠点「京都国際マンガミュージアム」を開設している。

また同年から、マンガクリエイターを目指す者同士が生活を共にしながら、切磋琢磨しあう人材発掘・育成拠点「京都版トキワ荘事業」も展開中である。

2012年からは毎年、西日本最大級のマンガ・アニメの総合見本市「京都国際マンガ・アニメフェア」を開催している。 

さらに2017年には京都市で「東アジア文化都市」が開催される。

「東アジア文化都市」とは、日中韓文化大臣会合での合意に基づき、日本・中国・韓国の3カ国において、文化芸術による発展を目指す都市を選定するものである。

そして、その都市において、現代の芸術文化や伝統文化、また多彩な生活文化に関連する様々な文化芸術イベント等を実施されることになる。

こうした文化交流を通じて、東アジア域内の相互理解・連帯感の形成を促進するとともに、東アジアの多様な文化の国際発信力の強化を図ることを目指している。この「東アジア文化都市」の中でもアニメやマンガは大きく取り上げられる予定である。

◆新潟市の「アニメを活用したまちづくり構想」


新潟市は著名なマンガ家やアニメ・クリエーターを数多く輩出してきており、アマチュアによる創作活動も盛んに行われている。

1998年度には、全国に先駆けてマンガ作品を全国公募する「にいがたマンガ大賞」を設け、20年近くにわたって、入賞者の作品展示や作品集の発刊などマンガ文化の振興が図られてきた。

2016年12月22日には第19回の審査結果が発表され、2017年2月25日には表彰式が開催された。また民間でも、毎回約7,000人が参加する同人誌販売会「ガタケット」が毎年4~5回、約30年にわたり運営されている。

こうしたことを背景として、新潟市ではマンガ・アニメ関連産業の持続的発展を支援し、市の活性化を図ることを目的とする「マンガ・アニメを活用したまちづくり構想」を策定しており、さらに2017年からは新規の計画がスタートする予定である。

同計画に基づいて、新潟市の観光交流の推進及び地域の活性化を図るため、新潟ゆかりのマンガ家・アニメーターの紹介スペースのほか、展示、閲覧、交流体験、収集、教育普及、創造・育成等を実施する「新潟市マンガ・アニメ情報館」と、まちなかの空き店舗等を使って、マンガの世界を体感できるスペース「新潟市マンガの家」が開設されており、中心市街地の活性化にも寄与している。

◆アニメの「聖地巡礼」が地方創生につながる


その他の動向として、2010 年には観光庁が一般社団法人日本動画協会と共同で、日本全国のマンガ・アニメゆかりの地・施設を紹介した冊子「JAPAN ANIME TOURISM GUIDE」を日・中・韓・英・仏の5 カ国語で刊行している。

これは、アニメ・マンガの作品において、物語の舞台やモデルとなった場所を訪問する「聖地巡礼」が社会現象となっており、国内で多くの自治体が、アニメ・マンガを活用した地方創生を展開していることを背景としたものだ。

冒頭で紹介した『君の名は。』の劇中のモデルとなったとされる場所(岐阜県飛騨地域等)にも多くのファンが訪れている。

また、人気マンガ「咲-Saki- 阿知賀編」の舞台にもなった奈良県吉野町では、2017年1月22日に「全国アニメ聖地サミット」が開催された。

2016年9月には、アニメを観光振興に活用するため、オールジャパン体制の官民連携組織「一般社団法人アニメツーリズム協会」が設立された。

同協会では、全国から公募で「アニメ聖地投票」を実施しており、投票結果をもとに88か所の「アニメ聖地」を2017年に選定する予定である。

そして、「聖地」をルート化して、文字通り「巡礼」できるようにし、2020年には国内外から400万人の観光客の誘致を目指している。

また、従来の「聖地巡礼」事例においては、著作権の関係で原作アニメを観光振興に利用できないといった課題もあげられている中で、同協会が著作権者に権利使用の申請を支援する支援を行うことも計画されている。

こうした展開が実現すれば、「聖地巡礼」のさらなる盛り上がるも期待できるだろう。

◆巨大な産業クラスターとしてのアニメ


一般社団法人日本動画協会の『アニメ産業レポート2016』によると、2015年のアニメ産業市場(ユーザーが支払った金額を推定した広義のアニメ市場)は前年比112%アップの1兆8,255億円に達している。

また、アニメは、狭義のアニメーション業界だけでなく、上述した観光分野をはじめ、「クール・ジャパン」と呼ばれるさまざまな業界と密接に関連している。

たとえば、「機動戦士ガンダム」シリーズを制作している株式会社サンライズ代表取締役社長の宮河恭夫氏によると、「ガンブラ」(「ガンダムのプラモデル」の略称)は1980年に発売した「1/144ガンダム」以来、約35年間でおよそ4億4500万個を販売しているが、直近の売上高全体に占める海外の比率はアジアを中心に約4割に達しているとのことである。

また、アニメはライブ・エンタテイメントの分野にも領域を広げている。

2次元のアニメ・マンガ・ゲームを原作とする3次元の舞台コンテンツである「2.5次元ミュージカル」の作品が急速に増加しており、観客数も増大しているのである。

さらに、ゲームソフト『ポケットモンスター』シリーズを原作とする同名のアニメは1997年4月から放送を開始しており、2017年4月で放送開始20周年を迎えるが、テレビ東京系列で放送中のアニメシリーズでは最長寿アニメ番組となっている。

このアニメ化は、従前まで男子中心のゲームユーザーに女子のファンを呼び込んだと評価されている。

そして、「ポケモンGO」が世界各地で人気化したことにより、「市場に『ポケモノミクス』 関連企業の時価総額、4日で1兆3000億円増」(2016年7月12日、日本経済新聞)との報道もなされている。

以上のように、現代のアニメはさまざまな分野のビジネスと密接に関連して、巨大な産業クラスターを形成しているのである。

今後のアニメ・ビジネスにおいては、それぞれのコンテンツやキャラクターの強みを生かすことのできるビジネス・パートナー選びが、国内外において大きな鍵となるであろう。

◆オリンピック文化プログラム


そして、2020年に開催されるTOKYO2020オリンピック・パラリンピックに向けて、2016年から2020年までの丸4年間にわたって、「文化プログラム」が推進される予定である。

実は、国際オリンピック委員会(IOC)の五輪憲章においては、五輪を文化の祭典とも位置づけており、開催都市に対して「文化プログラム」の実行を求めているのである。

これを受けて、文化庁はすでに2015年に、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて取り組む文化プログラムの基本構想を取りまとめている。

同構想においては、文化プログラムの数値目標として、「イベント数: 20 万件」「参加アーティスト数: 5万人」「参加人数: 5,000万人」が掲げられている。

もちろん、この文化プログラムの中には、多くのアニメ関連の事業が含まれることが想定される。

すなわち、2017年から2020年にかけては、アニメ100周年を契機として、全国でアニメーションの魅力を活用したまちづくりや地域創生が進展し、それが海外へも情報発信されていくことになると期待されるのである。

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