国立市における債権放棄の議案を嗤う

上原公子元国立市長に対する債権を放棄する議決案は、昨年12月の国立市議会第4回定例会最終日(12月19日)に理不尽にも可決されてしまった。まさに、国立市議会の歴史に残る汚点である。

前回このブログで紹介した、上原公子元国立市長に対する債権を放棄する議案(決議案)は、昨年12月の国立市議会第4回定例会最終日(12月19日)に理不尽にも可決されてしまった。

まさに、国立市議会の歴史に残る汚点である。

ちなみに、放棄する債権とは、上原元市長に対する3123万9726円及びこれに対する2008年3月28日から支払い済みまで年5分の割合による遅延損害金の求償権である。

しかしながら、前回も述べたとおり、この決議に法的な効力はない。

なぜなら、佐藤一夫市長が放棄の意思表示を行っていないからである。

その証拠に、12月20日付け読売新聞朝刊には、「請求権は放棄せず、司法の判断を待つ」という佐藤市長のコメントが掲載されている。

さて、今回は、この決議に潜む矛盾について明らかにしていきたい。

この決議に賛成した11名の市議は、現在の市議会における野党側に属している。

厳密に言うなら、昨年までは与党会議にも野党会議にも顔を出していたコウモリのような市議1名を含む合計11名ということになる。

これらの市議らは、常日頃、住民自治や、市政への住民参加を声高に主張している。

いわゆる革新系の市議らである。

しかしその一方で、今回は、住民自治・住民参加の手段として制度化されている住民訴訟を空洞化するような行動をしている。

まさに自己矛盾としか言いようがない。

法を守らずに無法市政を続けた結果、司法の場で違法行為を認定された上原元市長と、その元市長を庇うために、司法の判断を全く顧みない市議ら。

法の支配や三権分立といった民主主義の原則はどこへ行ってしまったのだろう。

これが、文教都市と呼ばれる国立市の議会の実態である。

ところで、上記の市議らが債権放棄の決議をするということは、その債権の存在を認めるということが前提になることは言うまでもない。

もちろんその債権は、私たち国立市民有志が提起し、全面勝訴した住民訴訟において、東京地裁判決(平成22年12月22日:判例タイムズ1360号105頁)が認容したものである(この判決は既に確定している)。

すなわち上記市議らは、上原元市長には同元市長による違法行為に起因する国立市に対する損害賠償責任が存在し、ゆえに国立市には、同元市長に対する国家賠償法上の求償権が存在することを認めたうえで、この権利を放棄する決議を行ったということである。

しかし、今回の第二段階訴訟において、上原元市長は、第一段階訴訟(住民訴訟)で認定された自らの違法行為は景観保護のために行ったものであるから、違法ではないと主張している。

この主張は、上記市議らによる債権放棄決議と真っ向から対立する。

上原元市長を庇うためになされた債権放棄決議が、上原元市長の訴訟での主張と対立する、という皮肉な結果を招くこととなった。

当然ながら、上原元市長は、あくまで自らの信念を貫き、自らの行為の適法性を主張し、損害賠償責任など存在しない旨、主張し続けるべきであろう。

そして、堂々と司法の判断を仰ぐべきである。

それが、法治国家における政治家としての矜恃ではなかろうか。

それに、そもそも今回の国立市議らの債権放棄の動きや、議案の内容について、上原元市長は事前に知っていたはずである。

したがって上原元市長は、「債権放棄はやめてほしい。自分は景観保護のためにやったのだから、自分の行為は違法ではない。このことを司法の場で徹底的に争うので、違法行為に起因する自分の債務など認めるわけにはいかない。だから、債権放棄などという余計なことをするのはやめてほしい」と上記市議らに対して主張すべきであった。

もちろん、今からでも遅くはない。

にもかかわらず、現在に至るまで上原元市長は、今回の上記市議らによる債権放棄決議に反対の意思表明をしていない。

何故なのか?

実に不可解である。

このままでは、債権放棄決議にすがりついてでも構わないから、ただひたすら、第二段階訴訟で請求されている損害賠償金の支払いを免れたいがためであると解釈されても仕方あるまい。

そうだとしたら、無責任極まりないし、自己矛盾も甚だしい。

まったく筋の通らない話である。

最後に、参考までに紹介すると、上原元市長が8年間の市長時代に国立市から受け取った報酬が、2012年6月14日の国立市市議会第2回定例会において明らかにされている。

会議録によれば、同日、中川喜美代市議は、次のような質問をしている。

「一体、元市長は、市長時代の8年間、国立市から給与、期末手当、退職手当、合計で幾らもらったのですか。」

これに対する竹内正美総務部長(当時)の回答は次のとおり。

「条例上の月額給料が95万円でございますので、これに基づき算出しますと、10万円未満は切り捨ててございます。給料が8,960万円、これは8年間です。期末手当が4,000万円。退職手当が2,660万円で総額1億5,620万円となります。これは税等の控除前の収入の金額ということでございます。」

8年間で1億5,620万円。

これだけの報酬を受け取っておきながら、自らが国立市に与えた損害については頬被りするなど、決して許されることではない。

(2014年1月28日「くにたちの声」より転載)

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