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白紙撤回をチャンスに変えるために

2015年08月13日 16時11分 JST | 更新 2016年08月12日 18時12分 JST

7月17日、安倍総理が新国立競技場の建設計画の白紙撤回を表明したことは評価したい。そして次にどう動くか。

私もできる限りのサポートをしていきたいので、まず、総理がこの案なら間に合うと判断し、ザハ案の撤回を決める根拠になった代替案を公開してほしい。

ただ、文科省に聞いても、JSCに聞いても、そして国土交通省や内閣官房に聞いても、そんな案は作っていないし、持っていないと答える。

不透明な意思決定プロセスによる失敗を繰り返さないためにも、時間も限られているのだから、下村文科大臣が総理に説明したとされる代替案をベースにして議論を深めていければと思う。速やかな公開を求めたい。

私からの提案は、新国立競技場の本体工事を撤回したのだから、その敷地に関する整備計画についても見直すことをお願いしたい。

特に、ザハ案の実施に伴い移転・新築することになったJSC((独)日本スポーツ振興機構)の本部ビル工事。同じく移転するとされている日本青年館も一緒に入ることになるこのビルは、なんと約189億円の税金を投入して建設される予定だ。

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8月7日、自民党からは神宮外苑に競技場を作らないという「ゼロ・オプション」まで示されている。仮にこの「ゼロ・オプション」が採用されたなら、巨大なJSC本部ビルだけが神宮の森にそそり立つことになる。それはさすがに、異常だろう。

日本青年館についても、もともとは、明治神宮の造営に勤労奉仕をした青年団が皇太子殿下から讃えられたことを記念して、「1人1円」を合い言葉に全国の青年団員による募金活動によって完成した建物である。

皆から祝福されるオリンピックにするためにも、こうした焼け太り的事業は、あわせて白紙撤回し、見直してもらいたい。

私は、今回の白紙撤回を好機ととらえて、皆に愛された旧国立競技場を「復刻」する案を支持したいと思っている。

旧国立競技場は、建設省の官庁営繕部が建設にあたったため、設計図も図面も残っている。

ただ、現代にあわせた見直しは必要だ。例えば、8レーンしかないトラック数を9レーンにするなどは不可欠な見直しだ。

そこで、旧国立競技場の「復刻」をベースにすることを前提に、新たな「見直し部分」についてのコンペを行えばどうだろうか。一から全てを考えるより、ずっと時間の短縮につながると思う。

その際、400mトラックを持つサブトラックの常設は不可欠だ。地下に造る案もあるが、敷地の見直しもあわせて行えば、隣接した場所につくることも不可能ではないはずだ。その意味でも、JSCの新本部ビルも含め、敷地にかかる事業も白紙撤回してもらえれば建設の柔軟性も高まり、もっと良い案が設計のプロフェッショナルから多数出てくるはずだ。

また、「復刻案」をベースとしたコンペを行うその際には、設計、施工だけでなく、完成後の運営を含む一体的なコンペとしてもらいたい。

政府は、完成した後の運営だけ民間に委託する「公設民営」を考えているらしいが、設計、施工段階から民間の知恵と資金を活かした方が、より効果的だ。公的負担も抑えることができる。

完成後の「施設運営権」の金銭価値を評価し、この運営権を対価として付与することを条件に建設してもらい、原則、資金は民間が独自に調達することとする。どうしても民間資金でできない部分にのみ税金などの公的資金を使う。

こうした新しい仕組みを、新国立競技場の建設に採用し、成功実績を作れれば、財政事情がますます厳しくなる中での、官民が連携して実施するインフラ整備の新しいモデルを提示することにもつながる。

官民の垣根を越えて力をあわせ、与野党の垣根を越えて力をあわせ、必ずこの難局を乗りきらなければならない。

新国立競技場のデザインたち